第八話 因縁の剣
地下闘技場の空気は、
重く、
冷たかった。
松明の炎が、
ゆらゆらと揺れる。
テッドは、
目の前の剣士から、
視線を逸らさなかった。
カイルド。
黒装束の剣士は、
静かに剣を抜いた。
細身の刃。
だが、
殺気が違う。
「子供が、
英雄気取りか」
テッドは、
答えない。
足を、
半歩前へ。
構える。
一瞬。
カイルドが、
消えた。
気配が、
背後。
テッドは、
とっさに身を低くする。
風を切る音。
首の横を、
刃がかすめた。
振り向く。
剣と剣が、
ぶつかる。
――キィン!
腕が、
痺れる。
重い。
今までの相手とは、
格が違う。
カイルドの剣が、
連続で襲う。
上。
横。
突き。
テッドは、
必死に受け流す。
一撃、
腹をかすめる。
血が、
にじむ。
「遅い」
カイルドが、
踏み込む。
テッドは、
後退。
壁に、
背中が当たる。
逃げ場がない。
――終わる?
ザイルの顔が、
浮かんだ。
「当てろ」
振るな。
当てろ。
テッドは、
歯を食いしばる。
カイルドが、
突っ込んできた。
その瞬間。
テッドは、
一歩踏み込む。
剣を、
突き出す。
刃と刃が、
ぶつかる。
だが、
テッドの剣は、
わずかに滑った。
カイルドの脇腹。
血。
カイルドの目が、
見開かれる。
「……ほう」
すぐに、
反撃。
肩を、
斬られる。
テッドは、
よろめく。
膝が、
床につく。
剣を、
落としそうになる。
だが、
手放さない。
立ち上がる。
視界が、
にじむ。
それでも、
前を見る。
カイルドが、
再び構える。
「終わりだ」
テッドは、
最後の力で、
踏み込んだ。
同時。
二本の剣が、
交差する。
――ズブリ。
鈍い音。
二人とも、
止まる。
カイルドの胸から、
剣が生えていた。
テッドの腹にも、
刃が刺さっている。
カイルドが、
笑った。
「面白い……」
崩れ落ちる。
テッドも、
倒れた。
意識が、
遠のく。
頭の中に、
文字が浮かぶ。
――剣技レベル9
……。
目を開けると、
見知らぬ部屋。
包帯だらけだ。
隣に、
白衣の女性。
「治療院だ」
「生きてる」
テッドは、
天井を見る。
生きている。
カイルドは、
死んだ。
闇ギルドは、
壊滅したと聞かされた。
テッドは、
剣を探す。
ベッドの横に、
置いてあった。
錆びた剣。
だが、
なぜか、
温かい。
「お前が、
選ばれた」
背後から、
声。
老剣士ザイルだった。
「その剣には、
意志がある」
「強くなりたい者を、
導く」
テッドは、
柄を握る。
剣が、
わずかに震えた。
運命は、
さらに先へ進む。




