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第四話 無名の剣士


ギルドから戻ったテッドは、

宿の一階にある酒場へ入った。


身体は、

重く、

痛い。


それでも、

眠る前に腹を満たしたかった。


木のテーブルに座り、

硬いパンと薄いスープを頼む。


周囲では、

冒険者たちが騒いでいる。


「昨日の依頼は最悪だった」

「報酬が安すぎる」


テッドは、

黙ってスープを飲む。


剣は、

壁に立てかけた。


そのとき。


「その剣」


低い声がした。


隣の席に、

老人が座っている。


ぼさぼさの白髪。

汚れた外套。


冒険者には、

見えない。


「……何ですか?」


「握りが、

間違っている」


テッドは、

思わず剣を見る。


「振り方も、

足の運びも、

全部だ」


胸が、

ぎゅっとなる。


「でも、

生き残っている」


老人は、

テッドを見た。


「運じゃない」


テッドは、

息をのむ。


「あなたは……?」


「ザイル」


それだけ言った。


テッドは、

頭を下げた。


「教えてください」


老人は、

しばらく黙る。


そして、

立ち上がった。


「ついてこい」


宿の裏。


小さな空き地だった。


月明かりが、

地面を照らす。


ザイルは、

木の棒を拾った。


「構えろ」


テッドは、

剣を抜く。


「違う」


ザイルが、

棒で腹を叩いた。


「腰を落とせ」


言われた通りにする。


「足を、

開きすぎるな」


直す。


「力むな」


汗が出る。


ザイルは、

突然踏み込んだ。


木の棒が、

テッドの剣を弾く。


「……っ!」


剣が、

手から離れた。


テッドは、

地面に転んだ。


「遅い」


立ち上がる。


また構える。


また弾かれる。


何度も。


息が、

切れる。


腕が、

上がらない。


「もう一度」


ザイルは、

言う。


テッドは、

歯を食いしばる。


振る。


今度は、

弾かれなかった。


だが、

腹を打たれる。


「隙だらけだ」


それでも、

少しだけ、

感覚が分かった。


剣は、

振るものじゃない。


当てるものだ。


ザイルは、

木の棒を下ろす。


「明日も来い」


それだけ言って、

去った。


翌日。


その翌日も。


テッドは、

空き地へ通った。


斬られ。

打たれ。

転び。


毎日、

泥だらけになる。


それでも、

剣を握る。


五日目。


ザイルの棒を、

初めて弾いた。


小さな音。


だが、

確かだった。


頭の中に、

文字が浮かぶ。


――剣技レベル3


テッドは、

息をしながら、

笑った。


「ありがとうございます」


ザイルは、

ふん、と鼻を鳴らした。


「まだ、

始まりだ」


テッドは、

うなずいた。


剣士としての道が、

少しだけ、

見えた気がした。


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