8話 事件
卒業式の後、ユリカは正人と密会する。そして別れて帰宅後、くつろいでいると、警察が現れる。
卒業式は薄暗い曇りだった。3月にしては寒い日だった。式が終わり、各教室で担任が最後の言葉を生徒に話した。感極まって涙する者もいた。
「おい、正人。謝恩会でないのか」
「ああ。ちょっと用事があって」
「おまえ、4月から島からでるんだから参加しろよ」
「ごめん。3月のまた別の機会に」
正人はクラスの謝恩会を欠席した。それから自宅に戻り、着替えて、歩いて公民館に向かった。
到着し、小さな図書室で本を手にとったり、戻したりしていた。
しばらくして、ユリカが現れた。
「正人くん。お待たせ」
「ああ。待ってないよ。ちょっと前に着いたばかりだよ」
二人は早足で外に出て、ユリカの車に乗った。ユリカは車を走らせた。
「謝恩会で友達は大丈夫なの?」
「うん、断ったから。また別の日に集まるよ」
「そう」
車は隣町に入り、そしてホテルの駐車場に着いた。フロントで部屋の鍵を受け取り、部屋に入室した。
「うわぁ。なにこれ」
「すごいでしょ」
部屋の装飾に正人は驚いた。ユリカも数年ぶりのホテルだった。
「えっと、どうすれば…」
「そうね。まずは交代でシャワーを浴びて体をきれいにしないと」
「私が先に入るから、出てきたら、正人君も入って」
うん。わかった」
そういうとユリカはシャワーに入り、10分後ガウンを着て出てきた。
「バスタオルで吹いて、ガウンを着てらっしゃい」
「うん,,,」
5分くらいで正人はでてきた。着慣れないガウンをぎごちなく着て、目が泳いでいた。
「緊張しなくていいのよ」
「うん….でもどうしたらいいのか。はじめてだから」
「大丈夫。私が教えてあげる」
ユリカは部屋の照明を暗くし、二人は唇を重ねた。それからガウンを互いに脱がして、愛し合った。
「また会ってくれるよね」
「うん」
「たまに島に帰って来た時は会おうね」
「そうね。あ、正人くん、喉乾いたでしょ。お茶のもう」
「え、うん」
ユリカはポットでお湯を沸かし、お茶を入れた。
「ああ、そうだ。ポット買うの忘れてた」
「そうなの?大変」
「ねぇ。ここって、店員が少なくない?」
「え?ホテルはそういうものよ」
「先生のカバンにあれ入れて持っていってもバレなくない?」
「え?それはまずいよ」
「大丈夫だよ。ポットくらい」
「でも…」
二人はユリカのカバンに湯沸かしポットを入れて、チェックアウトした。店員は気づいていないのか、何も言わなかった。
そして車で待ち合わせの公民館まできて、正人を降ろした
「じゃあね」
「うん」
ユリカは自宅に帰った。そしてアパートでぼんやりとくつろいでいると、
ピンポーン! 音が鳴った。
「はい」
「警察です」
ドアを開けると、警察官が2人立っていた。
「下に停めてある白い軽自動車ですが、あなたのですか?」
「え、はい?」
「今日夕陽町のホテルにいきましたね」
「え?」
「そこから被害届けがでてましてね。湯沸かしポットが盗まれたって」
「えええっ?」
「失礼しますね」
そういうと警官二人はアパートの部屋に入り、中を物色しはじめた。
「一緒に休憩した男性はどこですか」
「,,,,,,あの、その」
「正直に言わないと逮捕しますよ」
「….は、はい」
ユリカは正人の話をし、パトカーに連れられ、正人の自宅に向かった。
玄関で母親は驚いた
「先生。こんな遅くになんですか」
警官が家に入り、正人の部屋に入ると、ホテルから盗んだポットが置いてあった。
「どういうことなの?正人?盗んだって。ホテルってなに?先生と?はぁ?」
事態が飲み込めず、母親は取り乱した。
「とにかく一度警察署までご同行願います」
そう言われると、1台のパトカーにユリカが、もう1台には正人と母親が乗り、警察署まで連行された。
窃盗であるが軽微なものであるため、二人は罰金で釈放となった。しかしながら、その事実が高校に知れ渡り、大問題になった。
つづく
登場人物
ユリカ 群馬県でサロン経営するセラピスト 高校時代世界陸上に出場
正人 寺西高校 生徒
事件の後、高校では対応に追われる。責任問題となりユリカは学校にいられなくなり、事件は思いもよらぬ方向に向かう。




