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6話 指導者に

現役を引退し、母校寺西高校の教員として奮闘するユリカ。ある時、陸上部に所属する正人がケガをしてしまう。登校が困難になり、親も仕事で手を貸せない状態になり、ユリカが送迎をすることになるのだが。

ユリカが母校の寺西高の教師になり、陸上部の翌年には大山田が教頭に退き、ユリカは顧問になった。

島では寺西の陸上部は強くて盛んと有名だった為、自然と有力か選手が集まっていた。

その一方で私立高校でもなく、偏差値もあまり高くないため、無気力な学生もいて、風紀はあまり良くなかった。


ユリカが就任してから、陸上部の成績は徐々に落ちていった。大山田は威厳があり、逆らう学生はいなかったが、身長154センチと小柄で、若い女教師は、ヤンチャな学生は指示に反抗しやすかった。


「ユリカ先生彼氏いるの?」

「えっ?いないけど」

「あらら、じゃあお見合いすればいいのに」


保健の授業で性に関する授業では、

「先生、コンドームのつけ方実演してみせてよ」

その話を聞きつけた男性教論が生徒を怒鳴りつけたりしていた。


そして月日は流れていった。


陸上部は島の名門から、同好会レベルまで下がっていて、県内中学の有力選手も入ってこなくなっていた。


ある日、校庭でテンポ走をしていた部員の正人が転倒して、左足を骨折してしまった。


しばらく入院した後、松葉杖で退院した。正人は自転車で片道20分かけて通学していたが、乗ることはできない。電車やバスも自宅から学校に行く良い路線がなかった。

父親は大阪に単身赴任しており、母親はタオル工場で働いているが、この地域では珍しく車の免許を持っていなかった。高3の正人は半年後に受験を控えており、学校に通いたかった。


職員会議で議題になった。

「誰かに送り迎えしてもらうのが」

「私家の方向同じですし、やりましょうか」

ユリカが言った。


「それはユリカ先生の負担になるでしょうに」

「大丈夫ですよ」

家族持ちの教師が多く、28歳で独身彼氏なしのユリカはこの役が適任だった。


そして正式に正人の送迎をユリカが毎日車でするようになった。

正人はヤンチャではなく、口数少ない生徒で、これまでユリカを冷やかしたりすることはなかったので、なにかいたずらをされることはないだろうと、ユリカも他の教師も安心していた。


こうして片道10分、往復20分の送迎生活が始まった。

シャイな正人は最初はモジモジして話せなかったが、車の狭い空間に朝夕月曜から金曜まで、一緒にいるとだんだん話せるようになっていった。


「先生はどんな男がタイプなの?」

「私? そうねぇ...」

「大山田先生とか」

「こーら。不良みたいなこと言うんじゃないの。推薦とれなくなるわよ」

「なんで彼氏がいないの?」

「そんなの私が知りたいわよ」

正人は日増しに明るくなり、冗談も言うようになっていった。

そんな正人にユリカはどこか母性を感じていたのだった。


「先生は生徒と付き合ったことないの?」

「あるわけないでしょ」

「なんで?」

「なんでって、許されないことだから」


ユリカはアパートに一人暮らしをしているが、月に一度は隣町の実家に帰っていた。

家族で夕飯食べながら、父親は

「おい、ユリカや。誕生日きたら29で、来年30、つまりリーチや。いつになったら結婚するんや」

「お父さん、ユリカにそんなこと言わないで。まぁでも孫の顔は早くみたいなぁ」

「ほんま見合い話を用意せな」


ユリカには実家はストレスでしかなかった。


ユリカは自宅に帰り、夜ベッドで横になって考えていた。

「私だって早く結婚したい。言われなくたってわかってるわ。誰と? 寺西の教師はおじさんばかりで無理。年頃の私を満足させられるのは体力のある若い男じゃなきゃだめ。そんなの見合いでくるわけないわ」ふと正人の顔が思い浮かんだ。

「いけない。何考えてるのかしら。私」


翌朝、

「おはようございます」「ユリカ先生。正人は月末からは杖もなくなり、自転車に乗れますから、送迎はそうしたら大丈夫ですわ」

「いいえ。急に乗ったら、まだ骨が完治してないから危ないです。 もうしばらくは送りますよ」

「悪いわ〜。ずっとお世話になってばかりで」

「そんなことないですよ」


正人を車に乗せて、学校へ向かった。

「先生、オレと一緒に登校できなくなるのがイヤなんじゃないの?」

「そっ、バカ!そんかわけないでしょ」

「...オレはイヤだよ。いつまでも一緒に登校したいよ」


いつからか互いに居心地の良い、かけがえのない時間になっていた。

教師と生徒だから自制しなければという正義感が素直な感情を抑えていた。

でも男性教論は卒業と同時にに教え子の女子生徒と結婚するなんて、こんな田舎では珍しくないから、その逆の女子教諭があってもいいんじゃないか。 ユリカは考えていた。


「受験生なんだから、集中しなさい」

「じゃあ、受かったら先生ん家行っていい?」

「え? ちょ、それは。その時考えるわ」

「よっしゃあ、頑張るぞ」


そして、正人は推薦で他の生徒よりも早く他県の大学に合格した。

そして、春からは一人暮らしが決まった。


「先生、オレ、やったよ。合格だ」

「おめでとう。良く頑張ったわ」

「でも、先生と離れるのツラいな」

「....」


ユリカは黙っていた。

「そうだ、受かったら先生ん家行っていい約束だよね」

「え? 」


つづく


登場人物 

ユリカ 群馬県でサロン経営するセラピスト 高校時代世界陸上に出場

大山田 寺西高校教諭 ユリカの恩師

正人 寺西高校 生徒

大学に合格した正人との約束どおり、ユリカは自宅正人を招きいれるのか。

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