ルマニア戦記 #005 Part C
やっと出てきたライバルキャラ!
あれ、実際はこの前のおはなしで出て来る予定だったんだっけ?
うやむやで終わらせちゃったからw
何はともあれキツネ・タヌキ・イタチのトリオですね!
#005
Part C
コクピットの中でひとり意気を上げるクマ族の隊長に対し、こちらはもう一方の敵方である、三機のアーマー追撃部隊――。
その中でもレーダーに捉えた標的、これをみずからのモニターの正面に拡大表示して睨み据える、眼光鋭くしたひとりの男がいた。
その顔つきを見ればまだ若いのだろう。
しかしながら一分のスキもない堂々たるさまで、深くシートにその身を落ち着ける。
それがやがては独り言かのように静かに言葉を発するのだった。
「…………ふむ。このようなわかりやすい場所で、加えてあれ単機のみで、ずいぶんと呑気なありさまよな? 相も変わらずのひょうひょうとした食えないやつばらよ……! どうぞ見つけて下さい、と言わんばかりのたわけた不用心ぶり。セオリーは一切無視、か……」
しごく冷静なさまで互いの射程距離まで、あとギリギリにまで迫る大型の敵アーマーを見つめる。
やはり若くした、それはキツネ族のパイロットだ。
かくして相手の意図するところをこれと真顔で推測している内に、それをこの脇から渋い声音が茶化すように言い当ててくれる。
「はあ、やっぱり囮ってヤツですかね? つまるとこでありゃあ?? はなしじゃ、あいつ以外の別動部隊が海岸線沿いに先行してるらしいんですが、えらい勢いで追尾しきれないらしいですぜ! 国境の守備隊はあっさりとまかれちまって、今はもう隣国の山岳地帯をひたすら爆走中だとか。相手になるのは目下、こうしてお空を飛べるこの俺達くらいなんですが……」
「いやはや、あいにくとこっちにヤマを張っちまって、そっちはすっかりノーマーク! いいや、もとよりそんなもん相手にする気なんてはなからありやしないんでしょう、我らが隊長どのは? なんせ出会ってからこれまで、あっちの緑のデカブツくんにゾッコンなんだから!!」
はじめ左からの通信に続いて、右からもおかしげ含んだような低めの声音が届く。これに口元をかすかに緩めるキツネのパイロットは、突き出た鼻先から軽く息を吐くのだ。
「フッ…………そう、いかにも。興味はない。このわたしの狙う獲物は目下、あれただひとつのみ。それ以外はもはや捨て置いてかまわぬ。どれ、ここからは手はずどおりだ。両中尉らは一切、あれに手出しはするな……!」
鋭い視線を左右に流して、また静かに正面へと向き直る隊長どのだ。
するとこれにはまた左から、少しだけ不服なさまのだみ声がぼやく。
正面のモニターの左右に四角い小窓が現れて、この左側に映った、見るからにタヌキ面した事実タヌキ族のベテランパイロットが、そのでっぷりと大柄な身体を露骨にすくませる。
これにまた右側の小窓に映った、こちらは小柄なイタチ族でやはりベテランとおぼしきパイロットが応じた。
まさに間髪入れぬテンポの良さだ。
さてはさぞかしいいコンビなのらしく。
「はあん、りょーかい! ですがいざって時は、旦那ァ、俺等はただのお飾りじゃねえんだ、万が一にも必要と見たらすかさず横ヤリ入れますぜ? あんなうまそうなごちそうにこっちもさっきから武者震いがよ、腕が鳴ってしょうがねえや! ま、万が一にもそんなことはないんだろうが……!」
「ははん、たりめーよ! やいブンの字っ、おれらの旦那を誰だと思ってやがる? なにを隠そうこのお方こそが東の空に敵なしの『神速の雷刃』、二の太刀いらずのキュウビ カタナ様だろうが!!」
威勢の良い掛け合いに、しごく落ち着いた声音が応じた。
「…………ふっ、いかにも無用の心配だ。だがブンブ中尉、貴様の機体は前回の戦いにおいて少なからぬダメージを受けているのだろう。それをあれとの戦いにいかようにして割って入るつもりなのだ? いいや、おまえたちは見届け人であればいい。結果は知れているのだから……」
キツネ族の隊長は、およそ自分よりも一回り以上は年上のベテランたちをこの部下に従えているのだとわかる。
気勢をあげる左右からの文句もしれっと聞き流してひらりとやり返す。
「うっ、そこを突かれたらもはやぐうの音も出ませんぜぇ! ちきしょー、俺もアイツと遊びたかったぜー、こちとら試したいことが山とあるのに!!」
「諦めろよ? この旦那がいる以上、しょせんおれらには出る幕なんてありやしないんだ。せいぜい敵のアーマーのモニターに徹して、本部にゴマを擦ってやるくらいだろ! ま、大事な新品の機体を見事に破損させちまった、その修理の代金か償いくらいにはなるだろうさ?」
「ぐううっ、おめーもいちいちチクチクきやがるよな! このすかしっぺめ! せいぜいか弱い蚊蜻蛉よろしく鳴いてろよ、間違っても巻き添えくらって地べたにたたき落とされねえようにな!!」
左右の耳でやたらに威勢のいい掛け合いを、やはり涼しい顔で聞き流すキツネ族の隊長だ。
これがやがては足下のアクセルペダルをゆっくりと踏み込む……!
「よい。では双方、このわたしの『ゼロシキ』の射程はわかっているな? こちらから良いと言うまでは間違っても中には入ってくるな。ゴッペ中尉も機体の身軽なのをいいことに目障りな動きは無用、この場にとどまるのが無難だ。無駄な巻き添えを食いたくないのなら?」
「へいっ! おっと、こいつは参った、おれまで一発入れられちまった! 了解、おおせのままに。旦那のお楽しみの邪魔は間違ってもしやしませんぜ」
「あ~あ、たく、俺等、完全に三下扱いだな? こんなことならおとなしくあっちの別動隊の追撃にでも向かってれば良かったぜ!」
「笑止。その機体では前回の二の舞がせいぜいであろう? ならば次に取っておくがいい。あの二番手のアーマーも、その実力はただならぬ物がある。万全でなければ中尉たちでもその手に余るほどにな……」
「ぐぬぬっ……!」
「それが戦場となればどの局面においても油断は大敵よ。それが故にわたしはすでに認めている。見てくれいっかな正体の知れぬあれこそが、その実この生涯においての真のライバル、まさしくそれたりえることを……!」
「へぇ、そこまでですかい? だんなっ!!」
「フッ…………いざ、参る!」
他愛もない部下たちとのざれあいを殺気を高めることで断ち切る。
刹那、その全身を渋いシルバーにまとった鋭角のシルエットの機体がうなりを上げて急速発進! その先の全身を緑に塗りたくられた見た目ブサイクなロボットへと猛然と挑みかかる……!!
次回に続く!
序盤はけっこうテキトーな部分が目立つこのSFノベルなのですが、話が進むにつれてこなれてイラストもそれなりになるはずです。今見るとかなりキビシイのですが、ぬるい目で読み進めてもらえれば幸いです(^o^) 目指すはNHKあたりでアニメ化w みんなで応援してね!




