ルマニア戦記 #007 Part A
この序章もあともう少しで終わります。
かなりテキトーな部分を残しながらw
#007
Part A
大陸西岸の某国。
このある港街から極秘裏に緊急出港した一隻の超大型戦艦は、今やこの沖合の洋上、まさしく文字通りに空の上を飛行中――。
もとい、正確にはごくゆっくりと前進しながらに大気中を浮遊していた。
それすなわち航空巡洋艦、スカイ・クルーザーとはよくも言ったものである。
それは縦にも横にも見上げるほどに重厚な巨体であるのが、まるで当たり前かのよう、悠然と眼下の大海原を広く見渡す高さで鎮座しているのだから。
これを傍で見る者がいたらば、まず異様な光景だっただろう。
威圧するかのようなただならぬ雰囲気を全身にまとわせた、まさくし空飛ぶ巨大な船である。
その鋼の山の頂、戦艦の艦橋では、今まさに戦闘行動中であることを知らせる、単調な低いビープ音が鳴り響く。
そんな重苦しい雰囲気の中で、フロアの中央に配置されるひときわに目立つ大きな指揮官席の軍服姿が、やがておもむろにその声を発した。
初老のスカンク族の艦長、ンクスは指揮官席の台座に仁王立ちして、しごく落ち着き払った物の言いようだ。
みずからの左手のオペレーター席、若い犬族の通信士に視線を投ずる。
「…………さて、ベアランド隊からの通信はまだつかないのか? みな良く保たせてくれているが、肝心のアーマーがない状況では限度があるだろう。いくらこれが最新鋭の重巡洋艦とて、こうも大軍で押し寄せられては……!」
「ハッ、いまだ連絡はありません! 敵影、まだ数を増しています! どこかに母艦があるのでしょうか?」
「うむ、それも一つや二つではあるまいな。大陸湾岸から離れた沖合の洋上では逃げも隠れもできない。完全に回りを囲まれて、あちらはこちらの死角を理解した上での波状攻撃だろう。砲手長がよほど優秀でここまで持ちこたえてはいるが、限界は近いな……」
厳しい表情のスカンク族の老人だ。
これにまだ若い犬族、通信士のビグルス曹長はおなじく浮かない表情でこの口元を歪める。
「はあ、ならばいっそのこと、このまま上昇して逃げてしまうというのも手ではあるのでしょうか? 第一、第二、主力エンジン共に80パーセントで安定状態、その他の補助エンジンも問題ないとのことであります! 海の上を走っているあのドンガメどもならば、最大戦速でいつでも振り切れるのではないかと?」
半ば冗談めかして言っているのだろう。
そんな若い一兵卒の軽口に、ルマニアの軍部内でも名の知れた重鎮の将校どのは真顔で返すのみだ。
「……ん、戦いの要のアーマー隊を、このまま陸に置き去りにしてか? やつら、まだ少尉だったか、ふむ、野放図なのんびり屋のクマ助め。ウワサ通りの切れ者ならどうにか追いつくと思っていたが、どうやら期待が過ぎたようだ。こちらでどうにか対処するしかあるまい……ん、どうした?」
なおのこと浮かない表情だった通信士が何故だか突如、ひどく慌てたさまで手元のコンソールと耳元のレシーバーに意識を集中する。
そのさま、不可思議に見つめるスカンクの艦長だ。
それで犬族が驚いた顔で返す言葉には、こちらも目を丸くするのだった。
「あっ、いやっ、は、はい! あの、艦長、少尉どのが、その、すぐに到着するとのことであります! いや、でもどうやって??」
「む? いいから回線を開け! クマ族の坊主め、さてはどこにいる?」
「………っ! ……っ、……からっ、すぐにっ………ビビ!」
ただちに頭上のモニターに不意に砂嵐が映り、そこから荒い音声が途切れ途切れに伝わってくる。この音声と通信電波の発生源を必死に探る通信士が、またすぐさま慌てふためいて振り返った。
「艦長! 味方の機体反応、洋上、この艦のはるか上空に感知しました! いわゆる成層圏、おまけに陸とはまったく逆の方角です!! こいつは一体、どんなマジックなんだ!? ベアランド機、ありえないところから出てきました!!」
「……ほう、ウワサはあながち間違いではなかったのだな? ようやくの真打ち登場、随分と気を持たせてくれおって。航行士、艦の戦闘機動をひとまずこの場で停止、エンジン出力はそのままだ! 余った出力はそのまま砲手長にくれてやれ! 少尉! ……ああ、ベアランドくん、聞こえるかな?」
「やっほー! ああっ、バッチリ聞こえてるよ!! 感度良好、本日も晴天なり♡ ンクス艦長、並びにトライ・アゲインのみんな、どうもお待たせしちゃって悪かったね? いやはや、弾道軌道で一足飛びにぶっ飛んで来る予定がさ、あいにくと空の上でもわちゃわちゃしちゃって、こんなタイミングになっちゃった!」
砂嵐の中から、ニカリと屈託の無い笑みを浮かべたクマ族の青年が応じる。
画像が落ち着いて、そこにしっかりとガタイの良さげなパイロット姿が顔面どアップで映し出された。
その自信に満ちた表情でおまけひょうひょうとしたそぶり、画面を見上げるスカンクの艦長はこちらはやや呆れたさまだ。
「ん? 何のことだ、いや、後で聞こう。そちらでもわかるだろうが、こちらは現在、複数の敵アーマーに囲まれて苦戦している。ならば即座に合流、ただちにこれらを撃退してもらいたいものだ。無論、できるのだろう?」
「あはは! それはもちろん♡ てか、ここまでだいぶ無理しちゃったからか大気との摩擦でコクピットがサウナみたいな状態なんだけど、焼け死なない程度に最速で駆けつけるよ! フロート・ドライブ・システムで浮遊航行なんてしてたらいつまでたってもたどり着かないもんね? はじめに邪魔が入ったおかげで突入ポイントがズレたから、相手の意表を突く角度から突撃できるし! 不意打ちさながらw」
クマのパイロットはとかくあっけらかんとした物言いだ。
これには犬族のオペレーターが切羽詰まった調子で悲鳴を上げる。
「ああもう、少尉どの! ごたくはいいですからさっさと援護に来てくださいよっ、こっちはもう一杯一杯だ! 最新の高出力のメガフィールドも、こうもあっちこっちからひっきりなしに砲弾ぶち込まれたら、さすがに音を上げちまいますって!!」
「ん、おほん……! まあ、こちらは船体を停止してあえて敵方にこの巨体をさらしているから、その新型の威力を背後からでも思う存分に食らわしてやるがいい! そしてようこそ、ベアランド少尉! ここが今日からきみたちの新しいホームだ!!」
「……うん、はじめましてだけど、あえて〝ただいま〟って言わせてもらうよ! 後から追っかけてくるみんなの分も含めて。それじゃベアランド少尉、ただいまより戦艦『トライ・アゲイン』に着任、ただちに新型機、バンブギン改めこのランタンにてこの職務を全うします。あ、そっちの砲手さんたちには間違ってこのボクのこと撃ち落とさないようにって伝えておいてね♡ それではいざ、突撃!! そおっりゃあああああああああっっっ!!!」
号砲一発!
はるか空の彼方から飛来した一機の大型アーマーが流星さながら一直線の軌跡を描いて登場。大気との摩擦でオレンジのオーラを放ちながらに眼下の洋上、激しい戦いを繰り広げる戦艦とその戦場へと目掛けて流れ落ちていく。
これを機に流れは一転……!
若きクマ族のエースパイロットが新型機と共にその存在を艦内に轟かせる、華々しきデビュー戦となるのだった。
※次回に続く…!
はじめの予定よりだいぶカットした部分があるのですが、いろいろとデザインが間に合わないという事情があったり、他にもいろいろやってるものとの兼ね合いwもあったり(^_^;)
ま、しゃーないですね!
とりあえず序章の完結が急がれますw




