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ボンノーさまがいく ~異世界で46cm三連砲を撃つ物語~  作者: wok
第4章 扶桑の厄災

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第68話 エピローグII

大和第二艦橋——


白いクロスで覆われた長机が整然と並び、柔らかな照明が空間全体を包んでいる。

一同が着席した。

ヤマトヒメとムサシヒメは、隣同士。

手を繋いだまま、座っている。

御坂が、口を開いた。

「皆さま、お疲れ様でした」

静かな声。

だが、確かな重みがあった。

「まず、扶桑での経緯をお話ししたいと思います」

一同が、御坂に注目する。

「武蔵は扶桑歴2025年5月、佐世保で建造された最新鋭戦艦です」

御坂が語り始めた。

「私は武蔵の艦長を拝命し、任につきました」

「武蔵の乗組員には見えませんでしたが——私にはなぜか、ムサシヒメが見えました」

ムサシヒメが、小さく頷く。

「私の実家が美多木神社で、そこの娘だったので霊感があったのか」

「あるいは——先代の武蔵艦長、竹中の曾孫であったからか」

「理由は分かりませんが」

ボンノーの心が、揺れた。

(美多木神社といえば、大煩寺の近く……)

(そして、自分の教官だった竹中さんの曾孫だったとは)

(縁とは、分からぬもの——)

御坂が続ける。

「ムサシヒメから事情を聞きました」

「そして私はムサシヒメと共に、伊勢神宮へ向かいました」

「そこで私は——大神アマテラス様にお会いし、すべての事情を知りました」

リリアが息を呑んだ。

(大神様にも会えるということは、レファリア様にも——)

ヴィヴィが目を丸くした。

(御坂さんって大神様にも会っているんだ。すごい)

「バナテールの状況は予想外に厳しい、助けてくれないか——と」

「私は扶桑を守ることを決意し——」

「扶桑の神々の協力のもと時空転移し、ここにやってまいりました」

御坂は、一度言葉を切った。

「そして、本日——」

「無事に任務を終了しましたので、これから扶桑へ帰還しようと思います」

その時——

「申し上げにくいんだけど……」

ムサシヒメが、俯いた。

「御坂さん、ごめんなさい」

「武蔵の時空転移の神器は、あの戦闘で破損してしまって……」

御坂の目が、わずかに見開かれた。

「あの神器は、神々でしか直せないんだ」

「……なんと」

御坂が、沈黙した。

しばしの間。

(これは——)

内心で、思考が回る。

(生きたまま異世界転生というわけね)

(トラック異世界はいやだけど、この転生なら有よ有)

(やったー!)

だが、表情は変わらない。

「……仕方ありません」

静かに告げる。

「直るまで、ここにとどまりましょう」

そして、頭を下げた。

「皆さま、しばらくの間——よろしくお願いします」

クレアが、穏やかに微笑んだ。

「リヴィエラ王国の第一王女の名において、あなたたちを国賓として保護します」

「どうか、ご安心ください」

「ありがとうございます、姫殿下」

御坂が、深々と礼をした。


◆ ◆ ◆


「そういえばさ」

ナターシャが、声を上げた。

「ヤツマタノオロチが崩壊するとき、この剣が落ちてきたんだけどさ」

テーブルの上に、一振りの剣を置く。

青白い刃。

神々しい輝き。

ヤマトヒメの目が——見開かれた。

「こ、これは……」

時が、止まったような感覚。

驚きのあまり呼吸すら忘れているようだった。

しばらくして——

「神代の時代に喪失した——『草薙の剣』です」

一同が、息を呑んだ。

「扶桑において、最強の剣と言われています」

ヤマトヒメの声が、震えていた。

「まさか……ヤツマタノオロチが持っていたとは……」

クレアが、身を乗り出した。

「草薙の剣は、天羽々斬を上回ると?」

「はい」

ヤマトヒメが頷く。

「草薙の剣は——斬りたいと思ったものを、必ず斬る剣です」

静寂。

その言葉の意味を、全員が理解した。

「姉ちゃん」

ムサシヒメが口を開いた。

「草薙の剣は扶桑所縁の物だし——」

「御坂さんは剣道もしていたから、護身用に持たせておくのはどうかな」

ヤマトヒメが、考え込む。

「そうですね……ナターシャさんがよければ」

ナターシャが、にやりと笑った。

「いいさね。御坂が持つと、様になりそうなのさ」

御坂が、居住まいを正した。

「では、一時的にお預かりさせていただきます」

草薙の剣を、受け取る。

(ちょっと待ってよ)

内心が、爆発した。

(いきなり世界最強の武器って、俺TUEEEEじゃないの)

だが、表情は——変わらない。


◆ ◆ ◆


最後に、ボンノーが立ち上がった。

「では、皆さん——リヴィエラに帰りましょう」

穏やかな声。

「まだまだ、我々にはやるべきことが残されています」

「武蔵は、大和についてきてください」

「了解しました」

御坂が頷く。

ヤマトヒメが、嬉しそうに言った。

「リヴィエラに帰ったら、美味しいものをたくさんご用意させていただきます」

「やったー!」

ヴィヴィが、両手を上げた。

「ヤマトヒメ様、うまい酒も頼むのさ」

ナターシャが付け加える。

「姉ちゃんの手料理が……食べられるなんて……」

ムサシヒメの目に、涙が浮かんだ。

八十一年。

ずっと、夢見ていた。

姉の手料理を、また食べられる日を。

なぜだか——

御坂の表情が、少し砕けている感じだった。

(異世界のグルメと酒が楽しめるって、もうこれは……)

(レールガンは使えなくなったけど、最新の設備は武蔵にあるし……)

(今、気づいたんだけど——言葉の壁もないわ)

(もう最高の異世界ライフじゃないの)

(この素晴らしい御坂に祝福をだわ!!!)

ナターシャが、御坂を見た。

そして——にやりと笑う。

「御坂とは、いろいろと楽しめそうなのさ」

御坂の表情が、一瞬固まった。


◆ ◆ ◆


リリアが、窓の外を見つめた。

夕日が、海を染めている。

「ようやく……みんなが笑って暮らせることができますね」

クレアが、隣に立った。

「これからみんなでつくっていくんです、リリア」

「はい、姫殿下」

リリアが、微笑んだ。


◆ ◆ ◆


夕日が、大和と武蔵を照らしていた。

オレンジ色の光が、二隻の艦体を包む。

姉妹艦。

八十一年ぶりの再会を果たした、二隻の弩級戦艦。

ゆっくりと——

リヴィエラへ向かっていく。

戦いは、終わった。

だが——


御坂の素晴らしい異世界生活はこれから始まるのかもしれない。


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