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ボンノーさまがいく ~異世界で46cm三連砲を撃つ物語~  作者: wok
第4章 扶桑の厄災

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第66話 陽電子砲

クレアが、落下を始めた。

力を使い果たした体。

重力に引かれ、海へと落ちていく。

だが——

ふわり。

風が、クレアの体を包んだ。

優しく、柔らかく。

「お疲れさま、クレアちゃん」

ナターシャの声が聞こえた。

風魔法がクレアを支え、ゆっくりと降下させていく。

そして——露天艦橋へと、静かに着地した。

「ナターシャ......ありがとう」

クレアが微笑む。

その時——

キラリ。

上空で、何かが光った。

一本の剣が、落ちてくる。

「......?」

ナターシャが風魔法で軌道を変え、手元に引き寄せた。

美しい剣だった。

刃は青白く輝き、神々しい気配を放っている。

「これは......なんなのさ?」

不思議に思いつつ、ナターシャはそれを回収した。


◆ ◆ ◆


上空では——

首をすべて失ったヤツマタノオロチが、崩壊を始めていた。

ゴゴゴゴゴゴ......

漆黒の巨体が、崩れ落ちていく。

肉片が剥がれ、骨が砕け、瘴気が散っていく。

「ヴィヴィ、あとは頼んだのさ」

ナターシャが声をかける。

「任せて!」

ヴィヴィが大盾を構えた。

「姫様、リリアさん、姐さん——先に艦橋へ戻ってて」

「わかりました」

クレア、リリア、ナターシャが第一艦橋へ向かう。

ヴィヴィは、一人残った。

「大地の神イグナよ、我が盾に神威を宿せ!」

蒼いオーラが、ヴィヴィの全身から立ち上る。

『聖盾士権能——ディバインシールド!』

ブワァァァン!

巨大な蒼い障壁が、大和の上空に半球状に展開された。

オロチの崩壊で降り注ぐ肉片や骨が、障壁に弾かれていく。

「あたしが、大和を守る......!」


◆ ◆ ◆


大和第一艦橋——

クレア、リリア、ナターシャが戻ってきた。

ボンノーが頷く。

「お見事でした、クレアさん」

「ありがとうございます、ボンノー」

クレアが静かに応える。

だが、まだ終わっていない。

それは、全員がわかっていた。

ボンノーが号令を発した。

「第三段階作戦——開始」

そして、ヤマトヒメに指示を出す。

「取り舵一杯。針路280」

「了解です、兄様」

大和が、大きく旋回を始めた。

魔導炉が唸りを上げ、艦体が傾く。

「射界を確保します」

ボンノーの目が、前方を見据える。

「陽電子砲——発射準備」

「了解です、兄様」

ヤマトヒメの声が、凛と響いた。

「安全装置——解除」

カチリ。

重い音が、艦橋に響く。

「神域との回路——接続」

艦内に、低い振動が走った。

何かが繋がる感覚。

「神域エネルギーの充填を——開始します」

大和の主砲が、青白く輝き始めた。

三基九門の砲身に、光が集まっていく。


◆ ◆ ◆


上空——

オロチの崩壊が、終わりを迎えようとしていた。

肉が消え、骨が砕け——

そして、現れた。

漆黒の球体。

禍々しい光を放つ、蛇核。

それが——オロチの本体だった。

蛇核は、ゆっくりと上昇を開始した。

その先には——空間の亀裂。

次元の裂け目が、ぽっかりと口を開けている。


◆ ◆ ◆


大和第一艦橋——

ヴィヴィが、上空防御を終えて戻ってきた。

「ふぅ......なんとか守りきったよ」

「お疲れ様です、ヴィヴィ」

クレアが労う。

その時——リリアが、上空を見上げて呟いた。

「あの裂け目に......向かっているようです」

蛇核が、空間亀裂へと上昇していく。

ナターシャが気づいた。

「逃げるつもりなのさ」

深緑の瞳が、細められる。

「逃したら、またどこかで厄災を引き起こすだろうね」

ボンノーが、静かに頷いた。

クレアは、黙って様子を見ていた。

(ボンノーなら——必ずやり遂げる)

その確信が、胸にあった。


「エネルギー充填——80%」

ヤマトヒメの声が響く。

砲身の輝きが、増していく。

「エネルギー充填——100%」

蛇核は、さらに上昇していく。

空間亀裂まで、あとわずか。

「ボンノーさん!」

ヴィヴィが急かした。

「はやくやっつけちゃって!」

ボンノーは、動じなかった。

「ヤマトヒメ」

静かに告げる。

「最大限——充填してください」

「はい、兄様」

ヤマトヒメが応える。

艦内の振動が、さらに強くなった。

主砲の輝きが、眩いほどに増していく。

数秒後——

「エネルギー充填——120%!」

限界を超えた力が、主砲に宿った。

ボンノーが、力強く命じる。

「陽電子砲——」

間を置いて。

「撃てっ!」


◆ ◆ ◆


三基九門の主砲が——同時に火を噴いた。

ビュオオオオオ———

青白い光が、収束していく。

神域のエネルギーが、一点に集まる。

そして——

ドドドォォォォォォンッ!!!

九条の光線が、天を貫いた。


蛇核に——全弾命中。

『ギ......ギャアアアアアアアアアアアア!!!』

断末魔の絶叫が、空に響いた。

青白い光が、漆黒の核を包み込む。

侵食していく。

焼き尽くしていく。

『おのれ......おのれ......おの......!』

声が、途切れた。

そして——

蛇核は、完全に消滅した。

光の粒子となって、散っていく。

四千年の怨念が、ついに——終わりを迎えた。

空間亀裂も、ゆっくりと閉じていく。

まるで、傷が癒えるかのように。


◆ ◆ ◆


大和第一艦橋——

静寂。

誰もが、息を呑んでいた。

そして——

「蛇核の完全消滅を——確認しました」

ヤマトヒメの声が、震えていた。

「ヤツマタノオロチの——」

言葉が、詰まる。

「討伐——完了です」

——その瞬間。

「やったー!!!」

ヴィヴィが叫んだ。

「勝ったのさ......!」

ナターシャが、安堵の息を漏らす。

「ボンノーさま......」

リリアの目に、涙が浮かぶ。

「終わりましたね......」

クレアが、静かに微笑んだ。

大和第一艦橋に——歓声が沸き起こった。


ヤマトヒメの両目から、涙が溢れ出した。

止まらない。

止められない。

七十年。

七十年間、待ち続けた。

この日のために——準備してきた。

この日のために——兄様を待っていた。

そして、ついに——

「兄様......」

声が、震える。

「兄様っ......!」

ヤマトヒメが、ボンノーに抱きついた。

小さな体が、ボンノーの胸に飛び込む。

嗚咽が漏れる。

「終わりました......やっと......やっと終わりました......!」

ボンノーは、ヤマトヒメを優しく抱きしめた。

「よく頑張りましたね、ヤマトヒメ」

頭を、そっと撫でる。

「七十年間......ずっと、一人で......」

「もう大丈夫です」

ボンノーの声が、穏やかに響く。

「もう、一人ではありません」

「兄様......兄様ぁ......」

ヤマトヒメが、ボンノーの胸で泣き続けた。

クレア、リリア、ナターシャ、ヴィヴィ——

四人は、その光景を優しい眼差しで見守っていた。

誰も、何も言わない。

ただ、静かに。


長い戦いが——終わったのだ。



続く

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