第64話 決戦II
武蔵第一艦橋——
ビギュゥゥゥゥゥーーーーンンンン!!!
九条の光が、放たれた。
令七式徹甲弾。
超音速の弾丸が、ヤツマタノオロチの首めがけて突き進む。
数秒後——
全弾、命中。
だが——
ドォォォォン!
徹甲弾は、オロチの表皮で爆発した。
貫通していない。
漆黒の鱗が、かすかに震えただけ。
傷一つ、ついていなかった。
『全弾、ヤツマタノオロチに命中』
micotの声が響く。
『敵へのダメージは確認できず』
御坂の表情が、一瞬だけ強張った。
だが、すぐに指示を飛ばす。
「怯むな、ムサシヒメ」
軍帽に手をかけ、前方を見据える。
「撃って、撃って、撃ちまくりなさい!!!」
声が、艦橋に響き渡った。
「ヤツマタノオロチの気を本艦に集中させます」
「了解!」
ムサシヒメの目が光る。
「みこっち、射撃データ!」
『目標データを主砲に転送——継続送信中』
ビギュゥゥゥゥゥーーーーンンンン!!!
ビギュゥゥゥゥゥーーーーンンンン!!!
ビギュゥゥゥゥゥーーーーンンンン!!!
武蔵は撃てるだけ撃った。
超音速の徹甲弾が、次々と放たれる。
命中。
命中。
命中。
だが——効かない。
オロチの鱗は、傷一つつかなかった。
◆ ◆ ◆
八つの首が、武蔵を見下ろした。
赤い瞳が、煌々と燃えている。
『汝はアマテラスの先兵か』
地の底から響くような声。
八つの口が、同時に言葉を紡ぐ。
『ならば——滅するべし』
オロチの八つの口が、大きく開いた。
喉の奥で、光が渦巻く。
瘴気が凝縮していく。
禍々しい、紫紺の光。
神災級のブレス。
その準備が、始まっていた。
御坂は即座に判断した。
「撃ち方止め!」
叫ぶ。
「ムサシヒメ、電磁バリア展開!」
「核融合炉、最大出力へ!」
「了解!」
ムサシヒメが応える。
「電磁バリア展開! 核融合炉出力——120%!」
武蔵の艦体が、青白い光に包まれた。
電磁場が形成されていく。
艦全体を覆う、防御障壁。
そして——
オロチの八つの口から、ブレスが放たれた。
◆ ◆ ◆
紫紺の奔流が、武蔵に襲いかかった。
ズガァァァァァァァァン!!!
電磁バリアと、神災級ブレスが激突する。
凄まじい衝撃波が、海面を叩いた。
波が逆巻く。
空気が震える。
「っ......!」
ムサシヒメが歯を食いしばる。
電磁バリアだけでは——足りない。
神力を増幅させる。
自分の力を、バリアに注ぎ込む。
(姉ちゃんと約束したんだ......!)
拳を握りしめる。
「ここで負けるわけにはいかないんだよ!!!」
ムサシヒメの叫びが、艦橋に響いた。
神力が膨れ上がる。
電磁バリアが、わずかに強化される。
だが——
ミシッ......
嫌な音が響いた。
バリアに、亀裂が走る。
ブレスが、少しずつ浸透してくる。
ドォン!
船体に被弾。
ドォン! ドォン!
さらに被弾が増えていく。
『警告』
micotの声が響く。
感情のない、淡々とした声。
『レールガンシステムに深刻なダメージ発生』
ガァン!
また被弾。
『警告、航行システムに深刻なダメージ発生』
御坂は表情を変えない。
だが、その目は前方を睨み続けている。
ビシッ——
艦橋の窓に、ヒビが入った。
『警告』
micotの声が続く。
『あと30秒で艦橋が消滅します』
『ただちに避難を』
「......っ」
ムサシヒメの額に、汗が滲む。
神力を振り絞る。
限界を超えて。
バリアが——持たない。
ミシミシミシッ......!
御坂は艦長席を立ちムサシヒメのところへ向かうと優しく抱きしめた。
艦橋の窓のヒビが、広がっていく。
ガラスの破片が、床に落ちた。
『警告』
『あと10秒で艦橋が消滅します』
『ただちに避難を』
ムサシヒメの視界が、白く染まっていく。
意識が——遠のいていく。
電磁バリアが、限界を迎えようとしていた。
(姉ちゃん......)
心の中で、呟いた。
(ごめん......)
その時——
続く




