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ボンノーさまがいく ~異世界で46cm三連砲を撃つ物語~  作者: wok
第4章 扶桑の厄災

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第60話 決意

海は穏やかで不気味なほど静寂に包まれていた。

波一つ立たない。

風も止まっている。

魔島が、遥か前方に見える。


大和露天艦橋——

ナターシャが海を見渡しながら呟いた。

「嵐の前の静けさ——というやつさ」

深緑の瞳が、魔島を睨む。

「ここからが本当の地獄——」

「いや、この世界の運命をかけた戦いさね」

ヴィヴィは大盾を握りしめ、無言で前方を見据えている。

いつもの明るさはない。

緊張が、全身を支配していた。


◆ ◆ ◆


大和第一艦橋——

ピピッ——

通信機が鳴った。

「こちら大和艦長新村。どうぞ」

ボンノーが応答する。

『こちらは武蔵艦長御坂です』

冷静で、落ち着いた女性の声。

『新村艦長、これより作戦行動についてお伝えします』

「どうぞ」

御坂の声が続く。

『これより武蔵は、魔島の敵戦力掃討に当たります』

『大和は、ヤツマタノオロチ討伐に集中してください』

ボンノーは水晶球を見た。

魔島周辺に蠢く、無数の敵影。

「了解しました」

「武蔵が敵戦力をすべて引き受けるということですか?」

『はい』

御坂が静かに告げる。

『そして——武蔵は、現れるであろうヤツマタノオロチの気を最大限引きつけます』

「気を引く、ですと......?」

ボンノーの眉が動く。

『大和は、ヤツマタノオロチの討伐に専念してください』

『武蔵のことは気にせず、好機と見たら——攻撃を加えてください』

『タイミングは、新村艦長に一任します』

御坂の声に、一切の迷いはない。

『これは——大神アマテラス様がおっしゃいました』

ボンノーの手が、通信機を強く握る。

『七十年間、この世界との調和を図ってきた大和のみが——』

『ヤツマタノオロチを討ち果たせる唯一の存在であると』

——沈黙。

重い沈黙が、艦橋を支配した。

ヤマトヒメが、静かに目を伏せる。

クレアが息を呑む。

リリアが祈りの手を組む。

「......分かりました」

ボンノーが口を開く。

「武蔵が囮になる——そういうことですね」

『囮、という言葉は正確ではありません』

御坂が訂正する。

『武蔵は、大和が確実にヤツマタノオロチを討てる状況を作り出します』

『それが、武蔵の役目です』

「御坂艦長」

ボンノーの声が低くなる。

「武蔵の安全は——」

『詳しい話は、すべてが終わってからお話しします』

御坂が遮った。

『今は、作戦の成功を最優先に』

「......了解しました」

ボンノーは拳を握る。

「武蔵の武運長久を祈ります」

『ありがとうございます。大和も、ご武運を』

通信が——切れかけた、その時。

『姉ちゃん!』

ムサシヒメの声が割り込んできた。

「ムサシヒメ——」

ヤマトヒメが艦橋の通信機に駆け寄る。

『姉ちゃん、あとで会おうね!』

元気な声。

明るい声。

だが、その奥に——覚悟が滲んでいた。

「はい」

ヤマトヒメが微笑む。

涙を堪えながら。

「ムサシヒメ」

「......必ず、会いましょう」

『うん! 約束だよ!』

ムサシヒメの声が弾む。

『僕、姉ちゃんとまだまだ話したいことがいっぱいあるんだ!』

「わたくしも、です」

ヤマトヒメの声が震える。

『だから——絶対に生き残る! 姉ちゃんも!』

「......ええ」

通信が、切れた。

静寂。

ヤマトヒメは、通信機を見つめたまま動かない。

小さな拳が、白くなるほど握りしめられていた。

「兄様」

やがて、顔を上げる。

その瞳には——涙の跡。

だが、決意の光が宿っていた。

「私は——必ず、ヤツマタノオロチを討ち果たします」

「ムサシヒメと、約束したのです」


◆ ◆ ◆


武蔵第一艦橋——

「ムサシヒメ」

御坂が静かに呼びかける。

「......うん」

ムサシヒメが振り返る。

その目は、少し赤い。

「準備は、いい?」

「..うん....大丈夫」

ムサシヒメが頷く。

「僕、姉ちゃんを守るって決めたから」

「わかっている」

御坂が立ち上がる。

艦長席から、ムサシヒメの元へ歩み寄る。

そして——

ポンッ

頭に、手を置いた。

「ムサシヒメ」

名前を呼ぶ。

優しい声。

普段の冷静な御坂とは、少し違う。

「みさかさん......」

「戦女神が泣くものではありませんよ」

御坂が微笑む。

「泣いたら、ヤマトヒメが心配します」

「......うん」

ムサシヒメが目を擦る。

「大丈夫。僕、泣いてない」

「そうだね」

御坂が手を離す。

「では——配置につきなさい」

「了解!」

ムサシヒメの声が、力を取り戻す。

「針路005、魔島へ」

御坂の指示が飛ぶ。

武蔵の核融合炉は静かに稼働し、電磁モーターへ電力を送る。

そして、武蔵は魔島へ向けて進んでいく


続く

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