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ボンノーさまがいく ~異世界で46cm三連砲を撃つ物語~  作者: wok
第4章 扶桑の厄災

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第59話 武蔵

空間が、ビリリと震えた。

亀裂が走る。

光が溢れる。

そして——

現れた。

純白の巨体。

「っ......!」

艦橋にいた全員が、息を呑んだ。

大和と魔戦艦の間。

大和の僅か50メートル先。

そこに——巨大な戦艦が浮かんでいた。

流麗な艦形。

大和と同じ大きさの巨体。

だが——

「静か......だね」

ナターシャが呟いた。

機関の音がしない。

魔導炉の息吹も、振動も。

まるで海面を滑るように、静かに浮かんでいる。

「あれは——」

ヤマトヒメが立ち上がった。

痛みも忘れて、前方を見つめる。

その瞳に、涙が溢れた。

「武蔵です......」

声が震える。

「私の、妹です......」

ボンノーは、目を凝らした。

確かに——面影がある。

艦橋の配置。

砲塔の構造。

艦体のシルエット。

三連装の主砲塔——三基。

15.5センチ副砲——四基。

武器配置は武蔵と同じ。

だが——

「明らかに......違う」

砲身は、青白い光を煌めかせている。

砲の形状は明らかに大和とは異なる。

装甲に、リベットが見えない。

艦全体が——継ぎ目のない、純白の塊のようだった。

「これは......」

クレアが目を見開く。

「大和と似ていますが......」

リリアは、祈りの手を止めていた。

ただ、見つめていた。

その時——

再び空間そのものから、声が響いた。

『僕が姉ちゃんを守るよ!』


◆ ◆ ◆


武蔵第一艦橋——

「姉ちゃん......!」

ムサシヒメは艦橋の窓から、大和を見つめていた。

傷ついた艦体。

煙を上げる砲座。

拳を握る。

「姉ちゃん、待ってて!」

『武蔵、転移完了』

人工的な女性の声が響いた。

艦長席に座る、一人の女性——御坂。

30代前半。短く切り揃えた黒髪。

引き締まった表情で、メインパネルを見据えている。

「ムサシヒメ、状況は」

「姉ちゃんが——大和が、包囲されてる!」

ムサシヒメの声が焦る。

「急いで助けないと!」

「落ち着け」

御坂は冷静に言った。

「micot、状況分析」

『了解です、艦長』

静かな電子音声が応答する。

感情を抑えた、女性AI音声。

『情報分析——完了』

メインパネルに、戦術マップが展開された。

『大和、被弾多数。敵戦艦62隻が包囲態勢』

「micot、システムチェック」

御坂が命じる。

『核融合炉、安定稼働』

『レールガンシステム、正常』

『航行システム、正常』

『全システム、オールグリーン』

御坂が命じる。

「ムサシヒメ。全15.5センチ電磁副砲——大和へ飛来する砲弾を、全て撃ち落とせ」

「了解!」

ムサシヒメの目が、鋭く光った。

「みこっち、諸元データを!」

『目標データを副砲に転送——完了』

ムサシヒメの意識が艦と繋がった。

micotから送られてきた射撃諸元が脳内に流れ込む。

全副砲が、動き始める。

砲身が青白く発光する。

ジジジジジッ——

高周波の唸り。

そして——

ビューーーン!ビューーーン!ビューーーン!

光が、放たれた。

高速で連射されていく。


◆ ◆ ◆


大和第一艦橋——


パン!パン!パン!パン!

砲弾が、空中で次々と爆発していく。

「!」

ボンノーが目を見開いた。

大和に迫っていた砲弾が——消えた。

まるで花火のように、空中で弾け飛んでいく。

「これは......」

クレアが、武蔵を見上げる。

「武蔵が......!」


大和露天艦橋——


ナターシャが呆然と呟く。

「あたいが斬ったんじゃ......ない......」

ヴィヴィは言葉を失い、ただその光景を眺めていた。


その時——


大和第一艦橋に、通信が入った。

『こちらは扶桑皇国海軍所属「武蔵」、艦長御坂です』

女性の声。

冷静で、引き締まった声だった。

『事情は大神アマテラス様より聞いております』

『こちらは右翼と中央の敵を掃討します』

『大和は左翼をお願いします』

ボンノーは通信機に向かった。

「大和艦長新村です」

「了解しました」

「左翼の敵は、こちらで対処します」

一瞬、間を置いて——

「助けていただき、感謝します」

『了解。では——』

通信が切れる——かと思われた時。

もう一つの声が響いた。

『姉ちゃん!』

ムサシヒメの声だった。

「ムサシヒメ......!」

ヤマトヒメが艦橋の通信機に駆け寄る。

『姉ちゃん、大丈夫?怪我は?』

「私は......大丈夫です......でも、艦が......」

『安心して。僕が全部やっつけるから』

ムサシヒメの声が、明るく響く。

『姉ちゃんは、見ててね!』

「......ええ」

ヤマトヒメが微笑む。

涙を堪えながら。

「あなたを、信じています」

『任せて!』

通信が切れた。

ボンノーは、ヤマトヒメを見た。

その横顔には——笑みが浮かんでいた。

痛みに耐えながら、それでも。

「兄様」

ヤマトヒメが振り返る。

「私は大丈夫です。——まだまだ戦えます」

ボンノーは、ヤマトヒメを見つめた。

「......無理だけは、しないでください」

一瞬、間を置いて——

「ですが——共に戦いましょう」

「必ず、ヤツマタノオロチを——」


◆ ◆ ◆


武蔵第一艦橋——


御坂が命じる。

「令七式徹甲弾を主砲に装填」

ムサシヒメが声高らかに回答する

「令七式徹甲弾、装填完了!」

『目標データを主砲に転送——完了』

micotの声が響く。

御坂は、前方を見据えた。

魔戦艦の群れ。

右翼と中央——約40隻。

「全46センチ三連装電磁砲——」

間を置いて。

「撃て!」

「了解!」

ムサシヒメの目が光る。

「いくよ——!」

主砲が、動き始めた。

三基の砲塔。

計九門の巨砲。

砲身が、青白く輝き始める。

ジジジジジジィィィィィーーーー

空気が震える。

電磁場が形成されていく。

光が——増幅する。

まばゆいほどの、青白い光。

そして——

ビギュゥゥゥゥゥーーーーーンンンン!!!

轟音。

九条の光が、放たれた。


光が、海を駆ける。

音速を超える弾丸。

一瞬の後——

ドオォォォォン!!!

遥か彼方で、爆炎が上がった。


魔戦艦の装甲が、貫かれた。

貫いた徹甲弾は別の魔戦艦も貫く。

徹甲弾が艦体を貫通し——内部で爆発する。

火柱が上がる。

艦が——真っ二つに折れた。

二隻。

四隻。

七隻。

一斉射撃で、七隻の魔戦艦が轟沈した。

「第二射、準備!」

ムサシヒメの声が響く。

武蔵の砲塔が、高速で旋回する。

次の目標へ。

ビギュゥゥゥゥーーーーンンンン!!!

第二射。

六隻が沈む。

第三射。

第四射。

第五射。

武蔵は止まらない。

令七式徹甲弾が、次々と魔戦艦を貫いていく。

そして——

武蔵到着から20分後。

海は、静かになっていた。


すべての魔戦艦は、沈黙した——

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