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ボンノーさまがいく ~異世界で46cm三連砲を撃つ物語~  作者: wok
第2章 煩悩坊主、姫と聖女と姐と妹と共に

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第27話 吾輩、煙攻めにて完全勝利を宣言するにゃ

リントベルクの冒険者ギルド——

ワイルドボア討伐から一夜明けた朝、灰銀の牙のメンバーは再びギルドの掲示板前に集まっていた。昨日の成功で士気は高まっていたものの、ザリオの表情には憂いの色が浮かんでいる。

「王都セレスティアに戒厳令か……」

ザリオが腕を組んで呟いた。

「俺たちのアジトはセレスティアの港湾区にあるんだ。早いうちに一度帰るべきかもしれねぇ」

「そうね……アジトに置いてきた荷物もあるし」

ユリスも心配そうに頷く。

「デモ、イマハ……」

ドランが掲示板を指差した。

ザリオの目が、一枚の依頼書に留まった。

**【緊急依頼:盗賊団討伐】**

**依頼主:ドーナ村 村長**

**報酬:金貨5枚**

**内容:古墳をアジトにする盗賊団が定期的に村を襲撃。早急な討伐を求む**

「金貨5枚……なかなかの報酬ですね」

ネルムが眼鏡を光らせる。

しかし、ザリオの目は報酬ではなく依頼内容に釘付けになっていた。拳が小刻みに震える。

「村を……荒らしまくってる盗賊団か……」

昨日の兄貴——ボンノーの言葉が脳裏に蘇った。

『人は一人では強くなれぬ。守り、守られる者あってこそ……真の煩悩は宿るのじゃ』

「兄貴なら……兄貴なら、きっと困ってる人を見捨てたりしねぇ」

ザリオがつぶやく。

「ザリオ?」

ユリスが不思議そうに見つめた。

「決めた!」

ザリオが依頼書を勢いよく手に取る。

「この依頼を受ける! 困ってる村人を助けるんだ!」

「えっ?」

一同が驚く中、ザリオは真剣な表情で続けた。

「俺たちは、もう昔の灰銀の牙じゃねぇ。正義の冒険者として、人々を守るんだ!」

「……あなた、変わったわね。いい意味で」

ユリスが優しく微笑む。

「ソウダナ……タスケル……」

ドランも頷いた。

「まあ、報酬も悪くないですしね」

ネルムが現実的な意見を述べる。

「吾輩も賛成にゃ! 困ってる人を助けるのは、冒険者の務めにゃ!」

ミケケが尻尾を振りながら宣言した。

◆ ◆ ◆

受付で手続きを済ませ、一行は馬車でドーナ村へと向かった。

馬車に揺られること一時間——

ドーナ村は、想像以上に荒廃していた。家々の扉は壊され、畑は踏み荒らされ、村人たちの顔には疲労と恐怖の色が濃い。

「ひどいにゃ……」

ミケケの耳がぺたんと伏せた。

村長の家を訪ねると、痩せた老人が震える手で出迎えた。涙ぐみながら言う。

「冒険者様……本当に来てくださったんですね……」

「詳しく聞かせてください」

ザリオが真剣な表情で尋ねる。

「盗賊団は、村から西へ一時間ほど行った古墳にアジトを構えています」

村長が震え声で説明した。

「月に二度は村に降りてきて、食料や金品を奪っていくんです。抵抗すれば……もう、限界なんです……」

「任せろ!」

ザリオが力強く言い放つ。

「俺たちが必ず、盗賊団を討伐する!」

◆ ◆ ◆

古墳への道中——

「どうやって攻める? 正面突破か?」

ユリスが弓を確認しながら尋ねる。

「いや、相手の数も分からねぇし……」

ザリオが悩んでいると、ミケケが前に出た。

「まず、偵察が必要にゃ!」

三毛柄の耳をぴくぴくさせながら提案する。

「状況を把握してから、作戦を立てるにゃ」

◆ ◆ ◆

古墳に到着すると、確かに入り口がぽっかりと開いていた。石造りの古い建造物で、かなりの大きさがある。

「ユリス、周囲を調べてくれ」

ザリオの指示で、ユリスが素早く古墳の周りを偵察する。

しばらくして戻ってきたユリスが報告した。

「入り口に見張りが二人。出入り口はここだけみたい」

「なるほどにゃ……」

ミケケがスカイブルーの瞳を輝かせ、突然大きく息を吸い込んだ。

「戦いとは、戦う前に勝利は確定しているにゃ!!」

ミケケが高らかに宣言した。

「は?」

全員がぽかんとする。

「何言ってんだ、ミケケ……」

ネルムが呆れたように呟いた。

しかし、ミケケは得意げに尻尾を振りながら一同を手招きする。

「吾輩の策を聞くにゃ!」

全員が集まり、ミケケを中心に輪を作る。ミケケが声をひそめて説明を始めた。

「いいかにゃ? ごにょごにょ……」

「ほう……」

「ひそひそ……」

「なるほど、それは……」

ザリオが感心したように呟く。

「ぼそぼそ……」

一同が顔を見合わせ、頷き合った。

「よし、やってみるか」

「まず、薪を集めるにゃ!」

「薪?」

「そうにゃ! たくさん必要にゃ!」

一同は周囲から薪を集め始めた。枯れ枝、倒木、乾いた草——燃えそうなものは何でも集める。

「かなり集まったな」

ザリオが汗を拭いながら呟く。

「ふふん、見ててにゃ」

ミケケは集めた薪の山を見て満足そうに頷いた。

「次は、見張りの交代を待つにゃ」

一時間ほど待つと、確かに見張りが交代した。新しい見張りが配置について、前の見張りが中へ入っていく。

「交代から10分後……今にゃ!」

ミケケの合図で、作戦が開始された。

まず、ネルムが詠唱を始める。

『黒ノ四式・サークルパラライズ!』

紫の霧が見張りの二人を包み、一人の体が硬直した。同時にミケケも詠唱。

『白ノ四式・サークルスリープ!』

白い霧がもう一人の見張りを包むが——

「ぐっ……!」

一人が耐えた。

「チィッ!」

ザリオが素早く駆け寄り、剣の柄で後頭部を叩く。どさりと倒れる見張り。

「よし、縛り上げろ!」

手早く見張り二人を縛り、茂みの中に隠す。

「次は薪を運ぶにゃ!」

全員で薪を抱え、古墳の入り口から少し中へと運び込む。暗い通路に、大量の薪が積み上げられていく。

「これで準備完了にゃ! ネルム、火をつけるにゃ!」

『黒ノ五式・ファイア!』

薪に火がつき、めらめらと燃え始める。

「いよいよだな」

ザリオが静かに呟く。

「ここからが本番にゃ!」

ミケケが腰のポーチから、何かを取り出した。麻痺草と眠り草の束だった。

「これを火の中に入れるにゃ!」

草を火の中に投げ込むと、濃い煙が立ち上り始める。

「なるほど! 煙で燻し出すのね!」

ユリスが目を見開いた。

「そうにゃ! でも、まだ完成じゃないにゃ!」

ミケケがネルムを見る。

「入り口を半分塞ぐにゃ!」

『黒ノ三式・ストーン・ツヴァイ!』

大きな岩が召喚され、入り口を半分塞いだ。完全には塞がず、少しだけ空気が入る隙間を残している。

「ザリオ、盾をうちわ代わりに使うにゃ!」

「おう、任せろ!」

ザリオがナイトシールドを構え、うちわのように煙を古墳の奥へと送り込む。もくもくと濃い煙が、古墳の中へと流れ込んでいく。

「交代でやるにゃ!」

一時間——ひたすら送煙。疲れたら交代、また送る。単純だが、確実に煙は古墳内部へと充満していく。

やがて、煙が薄くなってきた。草が燃え尽きたのだ。

「もう大丈夫にゃ」

ミケケが確認するように鼻をひくひくさせる。

「煙も晴れてきたにゃ」

「ドラン、石を破壊しろ」

ザリオの指示で、ドランが斧を振り下ろす。

ガシャン!

石が砕け、入り口が開いた。慎重に中へ入ると——

「こ、これは……」

通路にも、奥の広間にも、盗賊たちが倒れていた。全員が麻痺し、眠っている。その数、なんと10人。

「す、すげぇ……」

ザリオが呆然とする。

「一人も戦わずに、全員無力化……」

「これが吾輩の『無血勝利戦法』にゃ!」

ミケケが得意げに胸を張る。

「戦いとは、戦う前に勝利を確定させるものにゃ!」

今度は、誰も呆れなかった。むしろ、感嘆の眼差しでミケケを見つめている。

「ミケケ……お前、やはり天才だな」

ザリオが素直に認める。

「こんな戦法、俺じゃ絶対思いつかねぇ」

「本当に……すごいわ」

ユリスも感心している。

「アタマイイ……」

ドランまでが目を輝かせた。

「理論的で、効率的で、実に素晴らしい」

ネルムが眼鏡を直しながら頷く。

「じゃあ、今後のパーティーの戦闘指揮は、ミケケに任せる」

ザリオが宣言した。

「異議なし!」

全員が賛同する。

◆ ◆ ◆

盗賊たちを一人ずつ縛り上げ、外へ運び出す。その途中で、奥の部屋から宝物も発見した。金貨、宝石、小麦、干し肉——明らかに村から奪ったものだ。

「これ、全部村に返すんだろ?」

ユリスが確認する。

「当たり前だ」

ザリオが即答した。

「俺たちは、もう盗賊じゃねぇ。正義の冒険者だ」

(昔なら、全部もらってたけどな……)

心の中でそう思いながらも、ザリオは迷わなかった。

◆ ◆ ◆

馬車に縛った盗賊たちを積み込み、略奪された物も一緒に積んで村へと戻った。

村に着くと、村人たちが驚きの声を上げる。

「盗賊団が……全員捕まってる!」

「冒険者様がやってくださったんだ!」

わらわらと人が集まってくる。村長が涙を流しながら駆け寄ってきた。

「本当に……本当にありがとうございます!」

「これ、盗賊団が略奪した物です」

ザリオが略奪された物を差し出す。

「全部、村のものですよね。お返しします」

「え……?」

村長が目を丸くする。

「冒険者様の戦利品では……?」

「いや、これは元々村のものだろ」

ザリオがきっぱりと言う。

「俺たちは、依頼報酬だけで十分だ」

村長の目から、再び涙がこぼれた。今度は、感謝の涙だった。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

村人たちが次々に礼を言う。

「これで安心して暮らせます!」

「子供たちも、もう怯えなくていいんだ!」

「冒険者様は、村の恩人です!」

口々に感謝の言葉を述べられる。子供たちが無邪気に近寄ってきて、ミケケの尻尾を不思議そうに見つめる。

「にゃー!」

ミケケが愛想よく応えると、子供たちがきゃっきゃと笑った。

「なんか……すごく……気持ちいいわね」

ユリスが呟いた。

「ああ」

ザリオも頷く。

「人に感謝されるって、こんなに嬉しいものだったんだな」

昔の灰銀の牙は、恐れられ、嫌われていた。金と力だけを求め、人を蹴落として生きていた。でも今は違う。人々の笑顔が、心を温かくする。

「これが、兄貴が教えてくれた道か……」

ザリオが空を見上げる。ボンノーの言葉が、改めて心に響いた。

『守り、守られる者あってこそ……真の煩悩は宿るのじゃ』

「イイ……キモチ……」

ドランが不器用に微笑む。

「こういうの、悪くないですね」

ネルムも素直に認める。

「吾輩も嬉しいにゃ!」

ミケケが尻尾をぶんぶん振った。

◆ ◆ ◆

夕方、リントベルクへの帰路——

馬車の中で、一行は今日の成功を振り返っていた。

「ミケケの作戦、本当にすごかった」

ユリスが改めて感心する。

「えへへ〜」

ミケケが照れくさそうに耳を伏せた。

「でも、みんなが協力してくれたからにゃ」

「そうだな。俺たち、いいチームになってきたな」

ザリオが頷いた。

「そういえば」

ネルムが思い出したように言う。

「王都のアジト、どうします?」

「……そうだな」

ザリオが考え込む。

「戒厳令が出てるし、一度様子を見に戻るか。荷物も取りに行かねぇと」

「賛成」

ユリスが頷く。

「ここで稼いだ金もあるし、アジトの整理も必要ね」

「ジャア、アシタ?」

ドランが尋ねる。

「ああ、明日の朝一で王都へ向かう」

ザリオが決断した。

「でも、これからも冒険者として、人を助ける道は続けていく」

◆ ◆ ◆

夕日が、馬車を赤く染める。

新生灰銀の牙は、確実に成長していた。かつての悪党たちは、今や人々を守る冒険者へと生まれ変わりつつある。

それもこれも、一人の僧侶との出会いがきっかけだった。

「兄貴……」

ザリオが小さくつぶやく。

「俺たち、正しい道を歩いてるよな?」

風が、優しく頬を撫でていく。まるで、誰かが「そうだ」と答えてくれているかのように――

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