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04 お買い物



 アルロートが順番に話を聞き、俺の言葉の確認をする。少年の名前はカルセといった。


「いいのかい?」


「何も取られちゃいねーし」


 少年の処遇に対し希望を聞かれたので特にないと答えた。そっちに任せる、とも。


「じゃあ俺そろそろ行っていー? 腹減ったし」


「まぁ、君が良いならもういいだろう。すまなかったね」


 ヒラヒラっと手を降って部屋を出る。少年がどうなるのか気になるが、首を突っ込むのもどうかと思うし大人しく引き下がれる内に引き下がっとくか。


 今度こそギルドを出て市場に向かう。妙な事に巻き込まれて冒険者ギルドに行く気が削がれてしまった。まぁいい、とりあえず腹ごしらえだ。

 

 刺激的な匂いにテンションも上がる。


 まずは腹ごなしに肉をパンで挟んだやつにするか。甘辛のタレがかかったやつを注文する。


「へへ、うまそ」


「うちのは美味いよ、ついでにポテトのフライもどうだい? セットなら180ゴルだよ」


 単品だとどっちも100ゴルだから、セットにすると20ゴルお得か。


「買った!」


「まいど!!」


 金を渡し、商品を受け取る。紙越しに手に伝わる熱さにますます腹が減った気がして、その場でポテトを一掴み口に放り込む。


「あふ」


 まだ熱くてハフハフと空気を含みながら口を動かすと店主が笑う。


「美味そうに食うね」


「そう? 落ち着いて食べるとこってあんの? 俺、この街初めてなんだよね」 


「そうなのかい? この近くなら、向こうに座るとこくらいはあると思うよ」


「そか、あんがと」


「また来ておくれ」


「美味かったらなー」


「じゃ、大丈夫だな」


 お互い笑いながら別れ、示された方へ向かう。俺と同じように食べ物を持った人がそれなりにいて、テーブルは少ししかないものの座れるような場所がちらほらある。


 空いた椅子に座り、パンにかぶりつくと口の中に肉汁が広がった。パンと野菜、それに甘辛いタレも絶妙なバランスで自信たっぷりだっただけあって美味い。気持ち冷めたポテトも口に放り込み、またパンをかじる。


 食べ終わって、次はスープと串焼き。これも美味い。串焼きの店で冒険者ギルドの場所も聞けた。


 昨日の酒場といい、この街は食い物が美味いのかもしれない。

 次はどうするか、辺りを見回しているとさっき捕まえたガキンチョと同じくらいのが三人目の前に立った。

 どいつも睨みつけてきて友好的には見えない。


「お前、あいつをどうした?」


 真ん中にいた奴が口を開く。


「は?」


「さっきの、商業ギルド前で捕まえた奴だよ」


 あぁ、あいつの仲間かなんかか?


「商業ギルドの中の奴に任せたよ。ちょうど出てきた奴が知り合いみたいだったし」


 答えるとギュッと眉間にシワを寄せたが、案外冷静で「悪かったな」とだけ言って残り二人に行くぞと声を掛けて引き連れて去っていく。


 目は濁ってなかったし、悪い集団では無さそうだ。なら、とっ捕まえたガキンチョも大丈夫かもしれない。


 後で商業ギルドに寄って顛末を聞いてみようかな?


 せっかくだから、市場の方へも足を延ばす。


 地元じゃ、市場もゆっくり見て回れなかったから楽しい。特に何か目的があるわけでもなく店をひやかしていく。


 仕事を見つけて家も落ち着けば、いろいろ買ってみてぇなぁ・・・

 今まで縁のなかったインテリアや小物用品を特にじっくり見ていく。鳥やドラゴンのモチーフが多いな。

 

「兄ちゃん、これなんて彼女にどうだい?」


 じっと鳥の模様が入った小箱を見ていれば店主に声を掛けられた。両手に収まるくらいで、アクセサリーや髪飾りを入れるに最適な小物入れだ。


「生憎、彼女はいねぇなぁ」


「じゃ、意中の女の子にプレゼントしてみたらどうだ?」


「好きな子が出来たら考えるよ」


「ちぇ。若けぇんだから数打ってみろよ。なら、こっちはどうだ?」


 小箱から少し離れた場所に置かれたドラゴンの意匠の小さな折り畳まれた革を寄越してくる。


「んん? 財布か?」


「デートで持ってると格好いいぞ」


 確かにさり気なく描かれたドラゴンは凛々しく、革の状態もいい。大金は入らないが、持ち歩くのに便利な大きさだ。

 今使ってるのは古ぼけた革袋で、かなり擦り切れたりもしている。新調するのもありか?


「ドラゴンか。さっきから他も見てたんだけど、鳥とドラゴン多くね?」


「なんだ兄ちゃん、知らねぇのか? ここらじゃ縁起もんだぜ」


「縁起もん?」


「ここいらの領主の紋章なんだ。興味があるなら詳しい奴に聞いてくれ、俺も何となくでしか知らねぇんだ」


「ふぅん・・・・・・これ、いくら?」


 財布を裏返したりして綻びがないか確認したが問題無さそうだ。


「3000 ゴルだな」


「たっけぇ」


「ふざけんな、高くねぇよ」


「1000でどうだ?」


「あ? 値引きしすぎだろ。問題外」


「1500」


「そんなんじゃ、彼女は無理だな」


「1800?」


「2800だ」


「しゃーねぇ、2500でどう?」


「てめーが言うな。それでいいよ、女の子に渡すもん買う時は値切んなよ」


 よっしゃ!

 値切ってみるもんだな。金を渡して商品を受け取る。


「おっちゃん、ありがとな」


「調子のいい奴だねぇ、また来な」


 うしうし。いい買い物が出来た。

 手を振って別れるとまた品物を見て歩いていく。なるほど、鳥とドラゴンは縁起物、と。


 ドラゴンは手に入れたから、次は鳥の物を買うのがいいかもな〜





お相手の不在が長い・・・

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