01 新しい拠点となる街
久々の執筆。リハビリなので、軽い話にしたい。見切り発車でもある。
「ーーあとで迎えに来るから、ここで待っていてねーー」
街の片隅、路地と路地の間に隠れるようにして言われたように彼女を待った。
冬の始まり、冷えた風が吹き抜け震えたのを憶えている。
お腹が空いて、寒くて、喉が渇いて、寒くてーーー・・・
いつの間にか眠ったらしく、気づいた時には大人に囲まれいくつかの質問と回答の後、孤児院に入ることが決まっていた。
迎えに来ると言った彼女が母だったのかも曖昧で、捨てられたのか迎えに来られなかったのかは知らない。
ただ、何となく捨てられた気がする。
発見された場所は警邏隊の詰所に近く、巡回ルートでもあったからだ。殺す気まではなかったのだろう。
親との仲もあまり良くなかったのか、親や家を恋しがる事もなかったそうだ。この辺りのことははっきり憶えていない。
ただ、この地域では赤毛は歓迎されないから可能性としてはあるかな、と。バカバカしい理由だと思うが、信仰深い人ならさもありなん。
孤児院でも一部には嫌われたし、街の人も蔑んだり嫌がらせしてくる奴はいた。
院長先生や良くしてくれた人もそれなりにいたけど、生きづらい街はとっとと捨てて正解だったと今では思う。
新しい拠点となるこの街は、赤毛がどーの言う奴なんてほとんどいないはずだ。
サイッコー。
孤児院を出ていく時に薄情だと言う奴もいたけど、院長先生はあの地に残ることをよく思わなかった。器のちっせぇ奴と一緒にすんなってこった。
路銀を稼ぎながらこの街に着くまで半年。よく生きてたなってくらい散々な目にもあった。しばらくはゆっくりして、のんびり割のいい仕事探しだな。
「兄ちゃん、何にする?」
「鶏肉のシチューとパンで、酒はいらね」
「あいよ」
目についた酒場で今日の晩飯とする。最初の方こそ酒も飲まねぇのに入るのは躊躇ったもんだが、今では酒を飲まねぇでも飯を食いに来る客ってのは一定数いるらしく店員側は大抵気にしねぇとわかった。
がやがやとしたこの雰囲気は嫌いじゃない。お上品な食事処の方が落ち着かず、ついこういった店に足が向く。
半年の間に、短かった髪も伸びて肩につくまでになった。邪魔なので後ろで1つ括りにしているが、今のところいちゃもんを付けてくる輩もいない。
それは旅の中でこの街に近づくほどそうだった。
「お待たせいたしましたぁー、シチューでぇす」
ウェイトレスが注文の品を置いていく。酒場では時に店員が春を売る場合もあるが、ここは違うようだ。間延びしたしゃべり方に反して、酒場では珍しいくらいにキッチリした服を着用していた。
「ごゆっくりどうぞ〜」
店内の客もお上品ではないが、下品な連中もあまりいなさそうだ。こういった酒場ではウェイトレス相手に騒がしい奴らがたまにいるものだが、そういう奴らもいない。落ち着いて食えそうで気分もいい。
「あったかそうだな」
置かれたシチューからほかほかとした湯気が匂いとともに上がってくる。
期待して口に含めば、想像通りに美味い。パンも思ったよりは柔らかく食べやすい。これは当たりの店だったな。
この辺りは治安も良さそうだし、住みやすいかもしれない。幸先がいい。
一応女の身としちゃ、治安が良いに越したことはない。
まだ本文に出てませんが、酒場の人が兄ちゃん呼びしてた通り男っぽい見た目です。髪はポニーテールじゃなくて、バサバサの髪を後ろでギュッと縛っただけ。