第18話 生徒会は総辞職しろ~!
「相変わらず叡桜女子高の敷地内に入るのは緊張するね九条君……」
「そうですね中條会長……」
「それにしても、九条君が料理が得意で良かったよ。ボクはそちら方面はからっきしでね」
「俺も屋台の鉄板を使って焼きそば作ったのは、地元のお祭りでお手伝いした一回だけですよ」
放課後。
今日は、合同文化祭で叡桜女子高側で叡山高校が行う催しである焼きそば屋台についての打ち合わせのために、俺と中條会長が叡桜女子高に来ていた。
まだ2回目の来訪なのと、今回は滝瀬副会長は別用で同行したいないため、俺と中條会長の男2人。
当然、叡桜女子高内では目立っていた。
前回は初回という事もあり、清水会長たち、叡桜女子高の生徒会の方たちに、校門前に迎えに来てもらっていたが、今回は正門で入校手続きをしてそのまま校内に立ち入っている。
───それにしても、叡桜女子高の生徒からの視線は、前回と同じく好奇とちょっとの敵意の目線だけか……。
こちらに投げかけられる視線の種類について注意深く観察していた俺は、胸を撫でおろした。
この間、凛奈と観劇していた所を佐々木さんに目撃されたので、『玲というものがありながら、俺が浮気デートをしていた!』みたいな噂が叡桜女子高内を席巻している事態を覚悟していたからだ。
そうなったら、きっと俺に向けられる視線は、敵意が何倍にもマシマシな状態であっただろう。
これは、佐々木さんがこの間の事を黙ってくれていたからに他ならない。
あの子には、貸しを作ってばっかりだな。
本当、どこかで報いなければなと思いながら生徒会室のある校舎の方へ向かうために、中庭に差し掛かると。
『我々は、生徒会の独善的な振る舞いに対し、断固抗議する!』
『清水会長へのリコール請求も辞さないぞ~!』
『生徒会は総辞職しろ~!』
『革命だ~‼』
何やらスピーカーマイクを通した声が中庭に響いているのが聞こえてきて、俺と中條会長は顔を見合わせる。
何だ?
リコールやら総辞職やら、物騒な単語が聞こえてきたが。
よく見ると、中庭に女子生徒たちが一団となってシュプレヒコールを上げている。
その声の先は、ちょうど俺たちがこれから用事のある生徒会室がある校舎建物だ。
「ふむ……。お嬢様女子高だと、生徒たちの意識が高い分、こうやって野党活動も行われるんだな。
流石は名門女子高の叡桜女子高だ。意識が高い」
「そう……ですか?」
中條会長は感心しているが、多分違うと思う……。
この人は、ラノベやマンガに出てくる生徒会と敵対する団体に憧れでも抱いているのだろう。
しかし、何が気に食わなくてこの人たちは生徒会に公然と立ち向かっているのだろう?
と思いつつ、一団の先頭でメガホンマイクを持つ女子生徒に目を向けると。
『玲様親衛隊隊長 佐々木香奈は、叡山高校との合同文化祭の参加対象について、当局の変更を断固として要求いたしますわ!』
「ぶふっ⁉」
抗議団体の先陣を切っているのは、見知った顔の佐々木さんだった。
な、何してるの⁉
あ、よく見たら周りに親衛隊の腕章をつけてる子たちが何人も居る。
「この一団はどうやら合同文化祭について気に食わない点があるようだね」
「そ、そうみたいですね……。取り敢えず、部外者の俺たちが首をつっこむ話じゃないから、行きましょう中條会長。さぁ!」
気になって後ろ髪が引かれる中條会長の背中を押しつつ、色々と察しがついてしまった俺は冷や汗を流しながら中條会長の背中を押して、その場を後にした。
◇◇◇◆◇◇◇
「ああ、叡山高校の……。ご足労いただき、ありがとうございます」
叡桜女子高生徒会室に入ると、疲れた顔の清水会長に出迎えられた。
なお、この生徒会室は防音設備が施されているのか、外のデモの声は部屋の中までは届かない。
「大丈夫ですか? 清水会長。顔色が優れませんが」
「いえ、大丈夫です……。こちらこそ、お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありません」
そう言いながら応接ソファに座った清水会長の目の下にはクマがあった。
「あの……。叡桜女子高では叡山高校との合同文化祭について反対の意見が強いのでしょうか?」
生徒会室に到着早々、挨拶もそこそこに中條会長が訊ねる。
まぁ、さっきデモの一団が主張してたのは合同文化祭の事だし、こちらも当事者だから中條会長の懸念はもっともだ。
「いえ。ただ、叡山高校での合同文化祭演劇で、玲様がロミオ役を演じる事が学内でバレてしまいまして収拾がつかない状態になってまして……」
そう言いながら、清水会長が溜息をつく。
え? 今回の叡山高校での演劇って、叡桜女子高側には秘密にして執り行う予定だったの?
ってことは……。
「こっそり、生徒会の人間だけで叡山高校さんの文化祭へ出向く予定でしたのに……」
「厳正な情報管理をしておりましたのにね……。一体、どこから秘密が漏れたのか……。おかげで完全に炎上状態ですわ」
「焼きそば屋台で誤魔化せると思いましたのに……」
口々に、叡桜女子高生徒会の面々が溜息をつくのを、俺は冷や汗をかきながら聞いていた。
この現況、完全に俺のせいじゃん……。
劇場で会った時に、俺がうっかり佐々木さんに合同演劇の事を話してしまったばっかりに。
「こうなっては仕方がない……。それなら、叡桜女子高の皆さんを我が校に招くしかありませんね」
「「「「「え⁉」」」」」
と、ここで中條会長の提案に、その場の全員が驚愕する。
「し、しかし中條会長。そんな事になっては迷惑では?」
「まぁ、何とかなりますよ。叡桜女子高の皆さんは、品行方正なお嬢様たちですから、うちの高校の生徒が叡桜女子高に出向くよりはトラブルも起こさないでしょう」
「いや、それは……」
「玲様が絡みますと……」
「正直、自信ないですわ……」
うん……。
部外者の俺が言うのも何ですが、多分無理だと思います。
中條会長はこの間、俺と玲が叡桜女子高の校内を練り歩いた時の惨状を見てないからな……。
「ただいま~清水会長。親衛隊の子たちを説得しようとしたけど、ボクでも駄目でした~」
そして、渦中の人の玲が、生徒会室に残念な報告と一緒に帰って来た。
こうなっては皆、腹を括るしかなかった。
「では、どうすれば、無事に叡山高校で玲様が公演を行えるか。その点を話し合いましょうか……」
カタカタと手を震わせながら、清水会長が負け戦とわかっている戦争に突き進むしかない国家元首のような悲壮な顔で協議を再開させた。
本当に申し訳ない事をしてしまった……。
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