表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/85

第6話 何だこの地獄絵図……

「ここが叡桜女子高の生徒会室か……」

「うちの高校の生徒会室とえらい違いですね会長……」


 目的地の生徒会室の前まで来たのだが、中條会長と滝瀬副会長が扉の前で固まって動こうとしない。


 荘厳な歴史を感じさせる木製アンティーク調の大きな扉と、廊下からつづく赤絨毯敷きの廊下に2人は怖じ気づいているのだ。


「じゃあ、ここの第一声は九条君が」

「いや、なんでですか!? どう考えても中條会長が先頭でしょ」


 突然、自分の方に飛び火してきたのに素でビックリする俺。


「無理。お腹痛い」

「そこは生徒会長としての矜持を見せてくださいよ。我が校の代表なんですから」


「いやいや、九条君。高校の生徒会長なんて、現実にはリーダーシップ溢れる陽キャじゃなくて、部活動がわりに生徒会活動してた陰キャが、何となく押し付けられる役職なんだよ。そんな奴が、こんなアウェイの地で上手く出来っこないさ」


 情けない事を堂々と言うな中條会長。

 内容がメタくさいよ。


 学外だから生徒会長パワーが抜けてるのか?


「じゃあ、滝瀬副会長に」


「マンガに出てくるような生徒会室……グフッ……ただの教室に事務机というゴミみたいな生徒会室の我々とは雲泥の差……」


 ダメだ。

 滝瀬副会長もダメージを受けている。


 斯様に、マンガみたいな権力持ってそうな生徒会室とはダメージを与えるものなのか?

 まぁ、2人はなまじっか生徒会活動をしているから、よりコンプレックスを刺激されてしまうのかもしれない。


 仕方ない。

 腑抜けてる会長、副会長はあてにならないので、ここは後輩の俺が一肌脱ぐか。


 それに俺は、実家の関係でこの手のお屋敷みたいな内装の場所は日頃から見慣れていたし。


「失礼します。合同文化祭の顔合わせの打合せのため参りました。叡山高校生徒会です」


 コンコンと扉をノックして、向こうから扉を開くのを待つ。


 さて、向こうの生徒会メンバーはどんな人達なのか。

 うちの会長、副会長が威圧されちゃうような人じゃなきゃいいけど。


「才斗~~~~!!」



 そんな事を考えていると、予想外の元気な声と共に生徒会室の扉が開かれた。


 そこに立っていたのは。


「玲!? なんでここに?」


 制服姿の玲だった。


「フフフッ、それはね。ボクが今回の合同文化祭のお手伝いをするからだよ」

「そうだったのか」


「才斗ならきっと、橋渡し役として今日ここに来ると思ってた」

「なるほどな。玲も俺と似たような役回りってことか」


 玲の説明に納得しつつ、正直助かったと思った。

 これなら協議の際に気まずい沈黙が流れたりする事態は避けられそうだ。


 幾分か気分が軽くなり生徒会室の中を覗き込むが……。


「あれ? 玲、他の生徒会の方々は?」

「ああ。居るには居るんだけど……」


 俺の問いかけに苦笑いしながら、玲が自分の後ろを見やる。


 ん?

 玲の背中の後ろにうごめく塊が……。


 よく見ると、女子生徒達が3人、まるで電車ゴッコ……というか、先頭の子は玲の腰の辺りに頭頂部を押し付けている形なので、まるで玲の尻尾のように連なっている。


 それか、後ろ足が6本ある斬新なケンタウロスとでも例えるべき。


「よ、ようこそ叡桜女子高へ! 叡山(えいざん)高校の皆さん!」


「ご、ご足労ありがとうございます!」


「か、歓迎いたしますわ!」


 玲の後ろで女の子たちが顔を上げないで、もてなしの言葉をくれた。


「ごめんね……。会長たち、本物の男の子には慣れてなくて恥ずかしいみたい」


 ケンタウロスの上半身担当の玲が頬をポリポリかきながら苦笑いした。




 ◇◇◇◆◇◇◇




「ほ、本日はお日柄も良く……」

「あ、お茶出さないと」

「ど、どうぞ粗茶ですが。召し上がってください」


 生徒会室にある応接用のソファに座る俺たちに、何とか玲を依り代としたケンタウロスの下半身から抜け出た叡桜女子の皆さんがお茶をすすめてくる。


 歓迎はしてくれているようだが、色々とカッチカチに硬い。


 紅茶を出す際に、ソーサーに乗ったカップがカタカタ音をたてていた。


「い、いただきます……。うわ……このティーセット高そう……。割ったらえらいことだぞ」

「紅茶おいしい……。この茶葉、一杯いくらするの……。うちの生徒会室なんて、業務用の粉末紅茶なのに……」


 そして、叡山高校側の中條会長も滝瀬副会長も、普段と違うラグジュアリーな生徒会室と高級紅茶カップに、緊張と劣等感を感じてソーサーをカタカタいわしていた。


 おかしい。

 この場には、学校を代表する方々が集まっているのに、まともな平静状態にある人の方が少ない。


 そして、早速会話の糸口をなくし、黙り込む場。

 こういう沈黙の時間って、一瞬なのに永遠のように長く感じる。


 しょうがない。ここはまた俺が一肌脱いで。


「じゃあ、まずはベタですけど自己紹介からしましょう」

「お、玲が口火切るのか」


 意外な配慮に、俺はつい感嘆の声を上げてしまう。


「仕方ないでしょ。この場で冷静なの、ボクと才斗だけだよ」


 ああ、玲も気づいてたんだ。

 って、両校の生徒会の人たちがソーサーをカタカタさせてたら分かるか。


「たしかに。でも、これじゃあ俺と玲は、さながら合コンの幹事みたいだな」

「あ、ダメだよ才斗! そんな軽率な事言ったら」


「ご、ご、合コン⁉」

「え、私たち合コンに参加していましたの⁉」

「そんな……。お父様お母様……私、お二人の知らぬところで大人の階段を」


 さっきまでソーサーをカタカタいわせていた叡桜女子生徒会の面々が急に騒ぎ出した。


「落ち着いてください会長。これはお仕事で」


「たしかに若い女と若い男が飲食の場を共にするのは、まさしく合コン!」

「そうですわ。男女比がちょっぴりおかしい事に目をつぶれば、まさしくこれは合コン!」

「たしかにそうですわね会長!」


 慌てて否定するが、叡桜女子生徒会の方々は大いに盛り上がってしまい、玲の言葉は届かない。


「会長……。今日の叡桜女子高との打ち合わせに、合コン気分で参加していたんですか?」

「うぇえ!? いや、そんな訳ないじゃないか滝瀬くん!」


「別に会長は彼女がいらっしゃる訳ではないので合コンに行くのは自由ですけど。ましてや、私なんかが止める権利なんてないし……」


 そして、あらぬところにも流れ弾が飛び、へそを曲げてしまった滝瀬副会長を中條会長が必死になだめる。


「何だこの地獄絵図……」


 片や、合コン初体験に浮かれるお嬢様女子高生たち。

 片や、やきもち副会長と鈍感生徒会長とのラブコメが目の前で繰り広げられている。


「才斗のせいだからね」


 ジトッとした横目でにらんでくる玲に、俺は返す言葉もなかった。

ブックマーク、★評価よろしくお願いします。

励みになっております。


本作1巻を既に手に入れた人は帯の裏面を見て御存知かと思いますが、本作はコミカライズ企画が進行中です。マンガで玲たちの活躍が拝めるぞ!


そして、電車王子様1巻もよろしくお願いします!


まぁ、表紙でやらかしているんですけどね……。

その辺は作者の活動報告を確認してください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
男女比が1:99よりはマシだけれど……w バランス取れてませんわね。 喜んでいるのは玲だけだな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ