第1話 あー、もうっ面倒くせぇ!
【これまでのあらすじ】
凛奈の婚約を九条家の名を使って阻止した才斗だったが、凛奈は完墜ちし、それを見たメインヒロインである玲は脳を破壊されるのであった。
それでは、3章スタートです。
「2人きりね才斗」
まぁ、一緒に登校してた玲も学校内までは入ってこないからな。
夏休みも終わって、最初の登校日。
代り映えのしない、いつもの日常が戻ってきて……と言いたいところだが、大きく変わったことがあった。
「いや、周り見ろ凛奈」
「私には貴方しか見えないわ」
「大丈夫か? 夏休み明け初日だけど、今日は学校は休んで眼科に行った方が」
「私の体調を気遣ってくれてるのね。優しい、好き」
だめだ、話が通じない……。
「優しいついでに、組んでる腕を解いて欲しいんだよな……」
学校の玄関の靴箱で、夏休み明けで久しぶりの上履きに履き替えて、すでに学校の建物の中にいるのだが、凛奈が腕を絡めて放してくれないのだ。
さっきから、周りの生徒たちからの視線が痛い……。
「それはダメ。だって、夏休みの間に私達2人の関係が進んだんだぞって、周りに知らしめないと」
お断りの言葉と共に、凛奈の腕のホールドがきつくなる。
確信犯かよ、こいつ。
「いや、校内でも腕組んでるとか、かなり痛めなカップルに見られるんだけど」
「いいじゃない。それに私たちは婚約者同士なんだし」
「だから、それは正式な奴じゃないっての! いいか凛奈。絶対に他の人に婚約云々の話は言うなよ」
もうすでに、憶測や事実がない交ぜになって、大分ややこしい事になっている俺の学内の評判だが、これ以上新情報入れたらカオスっぷりがいよいよ収拾つかなくなるし。
「分かってるわよ。聞き分けよく婚約者である事は黙ってるから、これ位のラブラブアピールは許しなさいよ」
「う……」
そう言われると、婚約の話を色々と有耶無耶にしている側としては強く出れない。
その点を解っているため、凛奈も笑いながら俺の腕を離したりしないのだ。
そういうところ、こっちの気心を知り尽くしてやがるな凛奈の奴は。
「あ、あ……ついに西野さんが……」
「あの距離感……完全に夏休みの間に、その……しちゃってるよな……」
「ぎぎぎ……高1の夏休み……一皮むけた顔しやがって……」
故に、俺としてはこのまま周りからの嫉妬と怨嗟の目にただただ耐えるしかない。
あと、別に一皮何て剥けてないからな!
結局、夏休みは色々とありすぎて筋トレもちっとも捗らず、上げられるベンチプレスの重量は増えなかったし。
まぁ、夏休み前に立てた目標なんて、大概は達成される事の方が少ない訳だが。
「おはようでござる。九条殿、西野殿」
「おはよう中條さん」
1か月以上ぶりの懐かしき教室に入ると、中條さんが話しかけてきた。
なお、他のクラスメイトは俺と凛奈のバグった距離感に目を真ん丸にしている。
「その様子を見ると、西野殿とは仲直りできたようですな。良かったじゃないですか九条殿」
「ああ。中條さんのおかげだよ」
「まぁ、ちと仲良くなりすぎですがな」
「アハハ……」
教室内でも、まだ俺の腕にしがみつく凛奈を見て苦笑いする中條さんに、俺も苦笑で返す。
「決断したんでござるな九条殿は。きちんと西野殿と吉報を伝えに来たのに免じて、吾輩にバーサクモードの叡桜女子の王子様を焚きつけた件は勘弁してやるでござるよ」
そういや、凛奈の婚約破棄のために自分がどうするべきか、バイト先のスケートリンクで中條さんに相談してたんだよな。
そして、その様子をスケートリンクで目撃した玲に中條さんは絡まれたんだった。
「そういえば、玲に追いかけられて、あの後どうなったの?」
「ゴリゴリ文化系の吾輩が、アスリートの王子様に走力で敵うはずもなく、あえなく捕まってカフェに連行されたでござるよ……。その後、みっちり3時間の聴取でござ候」
当時を思い出してか、中條さんがゲンナリした顔をする。
「そうだったんだ。カフェで3時間も一緒に駄弁れるなんて、だいぶ玲と仲良くなったんだね」
「尋問をした、された間柄を仲良しと称するなら、九条殿の国語力は死んでるでござるな」
「いや、俺は国語は結構得意だぞ」
「……なんか、才斗と中條さん、随分と仲良いわね……」
俺と中條さんとの息の合った漫談を凛奈が恨めしそうに見やる。
あ、ごめん。
凛奈のことそっちのけで中條さんと喋ってたわ。
「ひえっ、西野殿……。そんな殺気こもった視線を向けないでくれでござる」
「こら凛奈。中條さんには俺が色々と相談に乗ってもらったりして世話になってるんだから、そんな威嚇するな」
俺の背中に回って、猫が威嚇するがごとくの凛奈を慌ててたしなめる。
なお、猫ににらまれたネズミである中條さんは可哀そうに固まっている。
言うて、中條さんの助言があったからこそ、俺も最終的に決断して、九条の家の力を使って凛奈の婚約に横やりを入れたのだ。
そういう意味では、間接的にとはいえ、中條さんは凛奈にとっても恩人なんだから、そんな殺意を向けんなよ。
「相談者ポジションの女なんて、一番ヤバいんだから……。まったく、ヘタレ王子をつぶしたと思ったら、思わぬところに伏兵がいたわね……」
ジトっとした目を向けつつ、俺の腕を更に抱え込む凛奈。
いや、あの……。一人盛り上がってるけど、凛奈……。
クラスメイト達が固まったままだから、そろそろマジで勘弁してほしいのだが。
「なんで何も悪くない吾輩が、叡桜女子の王子様と西野殿に睨まれなきゃいけないんでござるか……。ヨヨヨ……」
「そこは、何かゴメン。俺もこんな事になるとは思わなくて。俺に出来ることなら何でもするから」
泣きまねをする中條さんに、俺も慌ててフォローの言葉をかける。
「ゴメンで済んだら警察はいらんでござるよ!」
「何でも⁉ 何でもしてあげるなんて、私には言ってくれないのに、中條さんには言うんだ?」
「あー、もうっ面倒くせぇ!」
こうして、俺の夏休み明け一日目は早くも暗礁に……、いや、見えてる地雷を踏みまくって大爆発していった。
しかし、最近はこういう渦中に常にいる玲が、朝の登校時にイチャつこうとする凛奈を前に、やけに聞き分けが良かった事だけが救いだったなと思いつつ、とっとと担任教諭の剛史兄ぃが教室に来ないかなと、目の前でギャーギャーわめく凛奈と中條さんを前に現実逃避するのであった。
3章始まりました。
メインヒロイン不在で始まりましたが、ちゃんと次話から出ますのでご安心を。
そして、電車王子様の第1巻が11/25から発売です。
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