第25話 痴女お嬢も痴女王子も信用できるか!
「ごちそうさまでした。カレー美味しかったよ愛梨ちゃん」
「うん。夏野菜の素揚げもカレーに合って美味しかった。愛梨ちゃんの家で作ったお野菜なのよね?」
夕飯の夏野菜キーマカレーを食べた玲と凛奈が、口々に礼を述べるが、
「チッ! 痴女どもめ。お世辞を言われれば、我がなびくと思ったか」
そう吐き捨てて、愛梨は自分の食べ終わったカレー皿を持って、台所の方へ愛梨行ってしまった。
どうやら、カレーや自家製野菜を褒めただけでは、愛梨の信用を得ることは出来なかった模様である。
「どうしよう才斗……。ボクたち愛梨ちゃんに、すっかり嫌われたゃったよ」
「都会の女から、痴女に格下げされた後でも入れる保険ってありますか?」
コソコソ話で、俺に相談してくる玲と凛奈だが、そんなん俺も分からんよ。
「そもそも、何で玲と凛奈はあんな格好で出てきたんだよ」
どう考えても、ネグリジェなんて寝る直前に着るものである。
風呂の後は夕飯だって言ってあったのに、明るいリビングで、ネグリジェ姿で食卓を囲んでカレー食うつもりだったの? シュール過ぎるだろ。
ちなみに、今は2人とも普通のパジャマ姿だ。
そっち持って来てるなら、最初からパジャマ着ろよ。
「それはヘタレ王子が悪いのよ! 抜け駆けで、1人でネグリジェ姿で着て出ようとするから!」
「凛奈ちゃんだって、掃除の時に抜け駆けでメイド服着てたじゃない! 」
「ああいうセクシー下着は先にネタバレしたら意味ないでしょって止めたのに、アンタが意固地になって聞かないから! おかげで、共倒れにしかならなくて最悪よ!」
なるほど。
玲がネグリジェで出ていこうとするのを止めきれないから、凛奈も一緒に自爆攻撃を計ったのか。
他人を利する位なら、自分が多少の損をしてでも相手と共倒れする道を選ぶ。
実に経済学的行動であり、そして、どこまでも愚かな行いであると言える。
「っていうか、今のパジャマ姿だって、十分に青少年には目に毒なんだからな」
ボソッと何気なく俺がこう言ったのは、もうネグリジェ姿で突撃してくるなよという玲と凛奈への注意のつもりだった。
だが、事態は思わぬ方向へ転がっていく。
「へぇ~。才斗ってこういうのが好きなんだ」
「確かに、ボクのお母さんのネグリジェ姿相手でも反応薄かったし」
「え? あ、しまった」
迂闊。
みすみす、突っ込みどころを晒してしまった事を悔いるが、後の祭りだ。
「才斗って、セクシー系のランジェリーより、こういう抜けてるパジャマ姿の方が好きなんだ?」
「ちょ、凛奈近いって」
さっきまで落ち込んでた癖に、急にグイグイくる凛奈。
湯上がりの女の子の髪から漂う、普段の生活では嗅ぐことのない香りは否応なしに脳に刺激を与え、心拍数を上げる。
「凛奈ちゃんのパジャマは抜けてるって言っても、ショートパンツスタイルだしなぁ。その点、ボクのパジャマは、シャツと長ズボンタイプのTHEパジャマだから可愛くないし……」
「いや、そんなことないぞ玲。うん……可愛いと思う」
そもそも、女の子が無防備な、本当に気を許した相手の前でしか晒さないパジャマ姿ってだけで、こっちとしては色々とヤバイんだよ!
なんて言えないので、俺は可愛いの言葉で誤魔化した。
「じゃあ、添い寝はこっちの格好でね」
「うん。そうしよう」
凛奈と玲が勝手に納得してくれたが、上手くパジャマを着させる方向に着地できて結果オーライな形となった。
女の子のパジャマ姿が扇情的なのはウソではないが、セクシーナイトウェアの方がエロいに決まっている。
けど、パジャマなら何とか乗り切れそうだと、俺はホッと胸を撫で下ろした。
「…………添い寝じゃと?」
撫で下ろした直後に、別方向から新たな火種がやって来た。
「愛梨!? これは、その……」
「と、年頃の男女が同じ部屋で寝るつもりか!? 修学旅行でも男女同室なんてあり得んのじゃぞ!」
どうやら、皿を洗い終わってこちらに戻ってきた愛梨に完全に聞かれてしまっていたようだ。
「愛梨ちゃん落ち着いて。私たちは純粋な気持ちで才斗と添い寝をしたいだけなの」
うわ、凛奈の奴。
真っ直ぐに愛梨の目を見ながらウソついた。
「そ、そ……、そうだよ愛梨ちゃん。全然そんな、才斗とあわよくば致すとか、全然考えてないから。全然」
対して、玲は分かりやすく顔を赤らめながら目を泳がせ、所在なさげに指先同士をツンツンしている。
女の子だからと言っても、皆がウソつくのが得意な訳じゃないんだな。
「痴女お嬢も痴女王子も信用できるか! こうなったら我も一緒に寝る!」
拳を握り潰さんばかりにワナワナ震えるちびっこい少女の顔は、赤ちゃんみたいな赤みを帯びていた。
決意は固いようだった。
痴女お嬢様はともかく、痴女王子様は多分叡智な本でも見たことないキャラだな。
誰か書いて(他力本願)
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