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第23話 それは断るよ才斗

「グスッ……。才斗兄ぃが都会色に染まってしまったのじゃ……」


「いや、愛梨。だから違くて」


 グズグズと泣く愛梨に弁明をしようとするが、俺の声は届かない。


 そもそも、都会在住イコール、コスプレさせるとか無いから。


 ああいうのはへきによるものだから。


「お嬢様っぽい都会の女をメイドとしてこき使うプレイに、王子様系の都会の女には中学時代のジャージを着せてノスタルジーに浸るプレイなんて上級者すぎるのじゃ……」


「プレイなんて、してねぇって!」


「そうだよ愛梨ちゃん。ボクたちは望んでこの格好をしてるんだよ」

「ひぃ……。この都会の女、既に調教完了してるのじゃ」


 確かに、トンチキな格好をしてる奴が逆に堂々としていると、ガチ感が増すな。


「それに引き換え、凛奈は隠れるのな」


「流石に、会ったばかりの愛梨ちゃんにフリフリのメイド服姿を見られるのは恥ずかしい……」


  隣の座敷部屋の襖から顔だけ出しながら、凛奈が恥ずかしそうに答える。


 でも、凛奈。

 頭の上のカチューシャが、メイドさん特有の物だからバレバレだぞ。


「ふっ。その点、ボクは愛梨ちゃんも着ているであろう中学ジャージだから恥ずかしくないんだよ。ね? 愛梨ちゃん」


 凛奈に勝ち誇りつつ、愛梨に同意を求める玲。


 それに対し、



(ジ~ッ)



 と玲を頭の先から爪先まで見やる愛梨。

 そして、己の身体、主に胸の辺りに視線を落とす。


「こっちの王子様系都会の女の方が我は嫌いじゃ」

「え!? な、なんでぇ?」


「我と違って胸元だけは窮屈そうにしよって……。ブツブツ……」


 プイッと顔を背けてしまった愛梨に、玲がショックを受け聞き返すが、愛梨はブツブツと独り言をつぶやき答えない。


「愛梨ちゃん、ヘタレ王子が着てるジャージをよく見て。あれ、才斗のだよ」

「なぬ!?」


 ここぞとばかりに、凛奈が襖の影から愛梨に告げ口すると、大いに愛梨が反応する。


「おまけにヘタレ王子の奴、才斗のジャージを借りパクしようとしてるのよ。盗っ人よ」


「才斗兄ぃのジャージ……盗み……うちの中学(シマ)ではご法度……。制裁……。番長総代として……。これは正義の執行……」


「え……ちょっと待って愛梨ちゃん。一度、落ち着こう。ね?」


 ブツブツと、何やら心のリミッターを外す儀式の呪文みたいに呟く愛梨を見て、異変を感じた玲がたじろぐ。


「私と共闘して盗っ人から才斗のジャージを取り戻しましょう愛梨ちゃん」

「なんで、愛梨ちゃんを煽ってるの凛奈ちゃん!?」


 ジリジリと凛奈と愛梨に包囲されて、壁際に追い詰められる玲。


 ジャージを奪われまいと自分を抱き締める玲の表情は、不安と恐怖で塗りつぶされていた。


「覚悟なさいヘタレ王子。愛梨ちゃんと私の2人がかりなら一溜りもなく」


「やられて危ないからやめろ凛奈! 愛梨も!」


「イタッ!」

「痛いのじゃ!」


 危なかった……。


 頭上に振るわれた俺の拳骨で、痛がって頭を押さえる愛梨を見て、額にかいた冷や汗を拭う。


 凛奈はともかく、愛梨はバーサクモードに入りかけていた。


 もし、戻っていなかったら、俺だけじゃ止められていなかっただろう。


「ありがとう才斗。怖かったよ……」


  そう言って、玲が俺の腕にしがみついて来る。

  愛梨のバーサクモードになりかけていた時に漏れ出た殺気に当てられたのか、本当に怖かったのだろう。


 目は潤んでいた。


「大丈夫か? 玲」

「やっぱり才斗はボクにとっての王子様だよ。危ない時に、いつも助けてくれるね」


 そう言って、玲が見上げる。


「玲」

「うん。才斗」


 見つめ合った2人は、お互い言葉を交わさなくても不思議と、相手の思っていることが解かった。



「ジャージ返して玲」

「それは断るよ才斗」


 争いの火種にしかならない俺の中学ジャージは、その後、子供みたいにワンワン泣く玲から無事に俺の下に回収された。


 大の高校生の女の子の泣き叫ぶ声が集落中に響き、俺の評判はまたしても駄々下がりするのであった。


ジャージを取られて泣く王子様って何なんだろうね。


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― 新着の感想 ―
集落じゃ評判はダダ下がりだね。 北海道の様な感じだったら、そも隣の家との距離があるんで物理的に声が聞こえない場合もあったんだが(笑)
「コレクションを始めてない」なんて作者さんは書いてない、つまり。 両名やってそうな気がする。 というか、地元の女子もやってそう……愛梨はウブ過ぎて出来なさそう。
ヘタレ王子に考え無しにものを渡すからそうなるのよw 使ったストローとかもコレクション始めるなあ、そのうちw
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