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第17話 え~、ボク解んない

「んふふっ♪ 才斗~」

「さっきは朝から親子喧嘩してたのに、ご機嫌だね玲」


 ハイヤーの車中。


 車両は凛奈のお家の専属送迎車と同じく、後部座席はゆったりとしたスペースが確保されているが、今日は隣の玲がくっついてくるので少し窮屈である。


「あれは、ボクだけ1人で車で学校に送られるのかと思って反発してたんだよ」

「ああ、そういうことね」


 それにしても、この王子様、寂しがり屋さんである。


 ふと、凛奈が言っていた『ヘタレ王子』の呼称が思い出されて、思い出し笑いをしてしまいそうになる。


「冷静に考えてみれば、電車と違って車内なら才斗と2人きりで色々とできちゃうから、むしろこっちの方がいいかもね」


「色々って何? 携帯ゲーム機で遊ぶとか?」


 2人きりと言っても、運転手さんは居るんだからな。


 流石に高級ハイヤーの運転手さんだから、顧客の情報をむやみに言いふらしたりなんてしないだろうけど。


「ゲームは放課後に一緒にやるからいい。今は、こうして才斗とくっついていたい。朝の才斗成分の摂取は重要だから。でないと、学校へ行けない」


 昨日、玲の連絡を長時間ブッチしてしまっていたのを宥めるために、今日は放課後に一緒に遊ぶことを約束させられていたのだ。


「随分と厄介な持病だね」

「そうだよ♪ 才斗のせいだからね」


 日常生活に支障が出そうですね。


 まぁ、電車内という公共の場で引っ付かれるよりはマシかと思い、俺も気にしないようにする。


「ふぅ。ちょっと背もたれ倒させてもらうね」


 せめてリラックスできる体勢をと思い、俺は座席のリクライニングを倒す。


「……才斗。いやに、この手の車の操作に慣れてるね。初見だと、この手の高級車の操作パネルの位置って分かりにくいのに」


「……ああ、この間乗った凛奈の家の車と一緒だから」

「…………凛奈ちゃん?」


 さっきまでウキウキだった玲の声が急速に冷えたのを聞き、即座に俺は自身の迂闊さを呪った。




 適当に誤魔化せばよかったのに、リクライニングしてゆったりシートに身体を沈めた心地よさで、つい思った事をそのまま口にしてしまった。


俺のアホ!


「そう……。女の子とのドライブはボクが初めてじゃないんだ」

「いや、ドライブって本来は2人きりで行くものだから」


 みるみる背後に闇をまとう玲。


「どうして凛奈ちゃんの家の車に乗せられたの? 拉致監禁未遂?」

「なんで、そんな物騒な罪状が真っ先に出てくるんだよ。乗せてもらったのは最近だよ。例の電車の動画がネットで話題になっちゃった時に、危ないからって送迎してくれてな」


「く……私のアクシデントをだしに、そんな攻め手を……。凛奈ちゃんめ……やっぱり油断ならない」


 昨日実は、凛奈が我が家に遊びに来た事は黙っていて正解だった。


 流石に俺でも、あの事を話したら、玲が『自分も遊びに行く!』と言い出すのが容易に想像できたから。


 と、そうこうしている間に、車は俺の学校の校門前に到着した。


「お、着いた。じゃあな玲。帰りもよろしく」


 帰りも車を寄こしてくれるのでちゃんと待っていろと、涼音さんからも言い含められている。

 まぁ、今日は玲の家で遊ぶ予定だから、その方が効率がいいから、甘んじて厚意に甘えることにしていた。


「ちょっと待って才斗。私もちょっと降りる」


 歩道側の車のドアを開けると、玲も一緒に同じドアから降りてきた。


「いいよ、お見送りなんて」

「ダメ。ちゃんと学校に無事に辿り着いたかを見届けないと」


「過保護だな玲は。お母さんの涼音さんを笑えないじゃん。っていうか、どっちかというと心配なのは女の子の玲の方なんだけど」


 玲を茶化したら、恥ずかしがってやめるかと思ったが、玲は気にせずに俺の腕を抱え込んでくる。


 はい。

 お嬢様女子高の制服は、うちの学校の前では異物もいい所なので目立ちまくりです。


 周りからの視線が痛い……。


 この間、玲を女子高の校門前まで送り届けた時も滅茶苦茶にガン見されてたが、それに比肩しうる。


「じゃ、じゃあね玲」

「うん、寂しいけど我慢する」


 おっ。


 もっと校門前で駄々をこねられて、無闇に注目を集めてしまうかと思ったけど、今日はあっさり引いてくれるようだぞ。


「じゃあね。ギュ~~~ッ!」


 そう言って、玲が俺に抱き着いてきた。

 ご丁寧に、効果音付きである。


「ちょ!?」


 不意打ちを食らった俺は身体を硬直させてしまう。


「これで、今日は私の匂いが才斗についたね」


 俺の胸元におさまる玲が、顔を見上げながら、はにかんだ笑顔を向けてくる。


 その頬は朱に染まっている。

 流石に衆人環視の中で抱き着くのは恥ずかしかったようだ。


「玲……、お前、これから俺がどんな目に合うか解っててやってんの……」


「え~、ボク解んない。けど、頑張ってね」


 そう言って、タタタッと玲は車の方へ駆けて戻って行ってしまった。


 俺は、その後いつもの何倍もの濃度の殺意の視線に曝されつつ、俺は重い足取りで学び舎へ向かった。


メガネ復活!


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― 新着の感想 ―
メガネめでたい。してみると、予備は重要ですよね。でも、時間経つと眼の状態代わって役に立たなくなっちゃうから、長期保存は効かないし。 さてさて、マーキングの上書きをされてしまうか… まあ、放課後に会う…
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