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第16話 その事は内緒だって言ったでしょお母さん!

「おはようございます。星名玲さんをお願いします」

「畏まりました九条様」


 俺は今日も今日とて、朝に一緒に登校するために玲のマンションを訪れていた。

 昨日、俺が図らずも玲の連絡をシカトしてしまった事の詫びの一つだ。


 すでに何回も玲のマンションに来ているので、コンシェルジュさんが俺の顔と名前を憶えてしまったようだ。


 もはや、己の家と言っても過言ではないほど落ち着いて。


「九条様」

「は、はい! なんでしょう!」


 いや、ごめん。

 まだ慣れてないわ。


「星名涼音様より言伝で、本日は家に上がってくれとの事です。あちらのエレベータからどうぞ」


「涼音さんから!? わ、分かりました」


 コンシェルジュさんに誘われ、俺は慌ててエレベーターに乗り込む。

 お母さんの涼音さんが、朝から何の用だろう?


 いぶかしく思いつつも、早めに来て時間もあるので俺は言う通りに星名家の部屋へ向かう。


「おはよう九条君」

「おはようございます涼音さん」


 今日は仕事が休みなのか、ルームウェア姿の涼音さんが玄関でお出迎えしてくれる。

 その顔は少し疲れている。女優の仕事がお忙しいのだろうか?


「ゴメンね折角迎えに来てもらったのに。悪いんだけど、玲ちゃんはこちらで学校へ送迎を」

「お母さん! 勝手に決めないでよ!」


 後ろから、制服姿の玲が憮然とした顔で涼音さんに食って掛かる。

 なお制服は昨日と同じく、女の子仕様だ。


「だから言ったでしょ玲ちゃん! 昨日、玲ちゃんが女の子の格好で出ちゃったから、玲ちゃんの可愛い姿がネットで曝されてるの! だから電車なんてダメ!」


「いいもん! 何かあっても、ちゃんと才斗が守ってくれるもん! 行こ、才斗」


 そう言って、玲がまたしても腕を絡めて引っ張り、玄関から出て行こうとする。


「ダメよ玲ちゃん! それだと才斗君まで危険な目に合わせちゃうかもでしょ! 少なくとも、今回の件で諸々の関係者への処遇に目途がつくまでダメ!」


 普段はホワンとした印象の涼音さんだが、ここは譲らないという意志の強さが、態度に現れている。


「う……、でも学校の違う私が才斗と一緒にいられる貴重な時間なんだから、邪魔しないでよ、お母さん」


 娘の玲も、お母さんの普段とは違う様子にたじろいでいる。


「今後一切ダメとは、お母さんも言ってないでしょ。ただ、今は時期が悪いから控えなさいと言ってるの」


「ネットの方で、そんなに玲の姿が騒ぎになってるんですか?」


 昨夜は、玲をなだめすかす長電話に疲れてしまって、リサーチをせずに寝てしまったのだが。


「ええ。今回は動画ではないですが、スカート姿の玲の画像が出回っています」


「うわ、本当だ」


 スマホで『まぁまぁニキ』で検索すると、関連記事のトップとして、玲と俺が電車で寄り添いあっている写真がデカデカと掲載されていた。


『え!? 被害者の子、男の子だと思ってたのに女の子だったの!? マジで!?』

『制服の下にパーカー着てたから気づかんかったな。でもピアスが動画と一緒だし』

『しかもこれ、お嬢様校の叡桜女子の制服じゃん!』


『横顔だけで分かる。めっちゃ可愛い』

『イケメンだと思ったら美少女だったとかラノベかよ


『じゃあ、あの犯人の奴、女の子殴ったんだ。サイアク~』

『女相手にイキりまくってたニッカポッカ君、マジしょぼいわ』

『女だから勝てると思ってケンカふっかけたけど、まぁまぁニキが無駄にガタイ良くてニッカポッカ君ビビったんだろうな』


『写真からだけでも解かる。この女の子、完全にまぁまぁニキに骨抜きにされてる』

『わかる。特濃のメス顔してるよね』


『腕組まれて、まぁまぁニキはちょっと腰引けてるね。女の子だったって、まぁまぁニキも最近知ったっぽいね』

『このムーブ、間違いない。まぁまぁニキは童貞だ』


『朗報。まぁまぁニキ、俺たちの仲間だった』


 もう新たな燃料は無いので、鎮火しつつあったまぁまぁニキ問題が、ここに来て特大燃料が追加されて大いに盛り上がってしまっているようだ。


 被害者の男子高校生が、実は女子高生でしたって、確かに急展開だから盛り上がるのは無理ないが、俺のこと童貞とか見抜いてるんじゃねぇよ! そこは関係ないだろうが!


「なるほど。状況は分かりました」

「という訳で今日はハイヤーを呼んでるから、車で通学して。もちろん九条君もね」


「あ、いや俺は電車で」

「いいから乗りなさい! ほとぼりが冷めるまでは、こちらで送迎を手配しますから。いいですね!」


「はい……」


 断る間もなく、涼音さんに押し切られてしまった。

 やはり、子を思う親の力というのは強い。


「ゴメンね才斗……ボクが、こんな格好でに世に出たばかりに……」


 しょんぼりした玲が、うつむいて謝ってくる。


「謝る必要ねぇよ。玲は、自分が着たい服を着ただけだ。それの何が悪いっての? どんな服を着てようが、玲は玲だろ」

「才斗……」


 ズボンを履いていようがスカートを履いていようが玲は玲だ。

 どっちも玲に似合ってるし。


 というか、悪いのは盗撮してネットにアップした奴のせいである。

 きっと怒ってる涼音さんが、動画をアップした不届き者もろとも成敗してくれるはずだ。


「良かったわね玲ちゃん」

「は、はぁ!? な、何が」


 ニヨニヨしている涼音さんに、玲が反抗期っぽい素っ気ない回答をする。


「今日は、いつもの格好に戻すか悩んでたけど、九条君なら受け入れてくれるって、お母さんが言った通りじゃない」

「そ、その事は内緒だって言ったでしょお母さん!」


 慌てて涼音さんの口を塞ぎにかかる玲。


 仲良し母娘だ。

 羨ましい親子関係だな……。


「はいはい。ほら、そろそろ出発しないと遅刻するわよ2人とも。コンシェルジュさんがハイヤーを呼んでくれてるから」


「うん、行ってきます」

「す、すいません。では同乗させてもらいます涼音さん」


 玄関前でのひと悶着により、たしかに時間はギリギリだった。


玲と俺は走ってエレベータホールへ向かい、背中で「危ないから走らないっ!」と、お母さんらしい涼音さんのお小言を受けながら、学校へと向かった。


作者のメガネのフレームが逝きました。

花粉症なのにコンタクトつけたくないよ……。


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― 新着の感想 ―
玲は玲"でしょ"って部分母親と口調混ざってませんか?"だろ"なきがして。細かくてすみません。
乱視でなければ、最近は数時間で作れるし… 乱視が強いとどうにもならないのよねえ。 いつでもどこでも、盗撮されちゃうんですねえ。 当然凛奈もそれを見ているのだろうし… やっぱり、リア充は爆発しないとね…
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