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光の『影』についても、わずかながらだけれど、わかってきた。
プレートのある場所の光の『影』は、筋が絡み合い、網の目のようになっている。先が尖った網の目だ。これは、あの少女の映像の場合も同じだった。『影』の長さは、少なくともその二ヶ所では十メートル以上あり、その先端部分よりやや低い辺りに結節というのか、ノードというのか、いくらか膨らんだ部分があっりそこから別の筋が延びている。
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光の『影』(筋)は繋がっていたのだ!
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だからその『影』の筋を追えば、おそらくプレートを遡る、または数を昇ることができるだろう。そうすればいつかは、あの少女の映像の場所に辿り着くことができるだろう。
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そのことに気がついたその瞬間から、ぼくのプレート探索の旅が始まった。
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距離については、ある程度の予想があった。
空の『影』(筋)が、もし今回の消える少女の噂と本当に関連づいているのなら、おそらくプレートはこの都市を出ることはないだろう、と考えたのだ。半径約五キロが約十キロになったとしても、せいぜいそれくらいの範囲だろうという予想だ。
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けれどもその予想が、実は微妙に外れていたのを、そのときぼくは知る由もなかった。
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目を凝らし、感覚を呼び覚まし、空を見上げる。
感覚器官は真っ当に反応し、きらきらする空の光が見える。
その下に目を移すと『影』。空の『影』が筋を形造り、ほぼ北と南の方角に向かって延びている。
ぼくは財布から百円硬貨を取り出すと、それを右手の親指で弾いて空に投げ、左手の甲で受け止め、面を読んだ。
裏だった。
だから、ぼくは南に向かった。
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自転車に乗り、陸橋を渡り、狭くはない路地に入り、全体で二百メートルくらい進むと、拍子抜けするほど呆気なく、次の光の網とプレートが見つかった。
〈31〉
降順だった。
そのプレートは民家の上にというか、すぐ隣に光っていた。
ぼくは先を急いだ。
その次のプレート(30)も、マンションというかアパートと呼ぶか、いわゆる集合住宅に分類される民家のすぐ近くにあり、その次(29)が自動車修理工場内、28が行き止まりでその先が民家の壁の路地の上、27、26が緑道(コンクリートで蓋をした川の上の散歩道で大抵は木が植えてある)沿い、25が八車線の大通り手前の歩道橋の脇、24で私鉄の高架線路を渡り、23がマンションに囲まれたぽつんとした狭い空地の上、22はまたもや行き止まりの路地で、21から緑道に戻り、それが16まで続き、15が中学校のグラウンドの外というか、隣接している国立大学の敷地内にあり、14が前とは別の私鉄の踏切り近くにあり、13が蓋が開いた緑道、つまり川沿いの高校隣にあり、12から8までがまた前と同じ――ただし学部は違う――国立大学の敷地内で、7が民家横、6が高台の小学校の正門横、5がさっきとは別の大通りを渡った切り通しの上。さらに別の私鉄の線路沿いにあった4から先が見当たらなかった。
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空の『影』(筋)は、そこで途切れていたのだ!
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ぼくは、その周囲に何かなかろうかと辺りを数百メートルほど放浪ったが、何も見つけることはできなかった。