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91-100

 91


 T川は、小学生のときに遠足に来た、ぼくには馴染み深い川ではあったのだけれども、そのときぼくはまた途方に暮れてしまった。


 92


 けれどもぼくは、先に感じたイメージのズレの感覚が確かなものなのかどうか、どうしても確認したいと思った。だから目を凝らし、遥か彼方の鉄橋を見つめた。

 その橋を渡る以外にT川を越える方法はないようだった。


 93


 T川の向こうのPプレート46番に辿り着くまで三十分近くかかってしまった。

 やはり越境している高速高架の近くに、やっとのことで、ぼくはそのプレートを発見した。光の『影』(筋)やプレートは余り遠くからでは判別できないので、見つけるまでにかなり時間を取られてしまった。

 近くを通り過ぎていった人たちは、いったいどんなふうに、ぼくを感じていたのだろう?

 正直いって、ヘンな子供だと思ったに違いない。

 なんといっても、上を見たり、下を見たり、ひたすらキョロキョロしながら、同じ通りを何遍も何遍も行ったり来たりしていたのだから……。

 でもまあ、それはいいさ。

 ぼくは諦めたような気持ちで、続きの探索を開始した。


 94


 川の近くの工場地帯を抜けた後、サッカー競技場の脇を通り、今度は細い川沿いに住宅街の中を進んだ。駅の近くを通り、幹線道路を渡り、同じ高速高架をまたくぐってしばらく行くと山が聳え、その上にPプレート49番と推定されるプレートらしきものが認められた。

「ひえーっ!」

 とか思いながらあちこち道を探し、民家の裏を抜け、自転車を持ち上げるようにしながら狭い石段を右に左にかなり昇った。

 その先にあったのは霊園。

 空は本当に抜けるように青く、プレートは逆光で見難かったのだけれども、逆に光の筋は強烈に濃い色で地面に落ちていた。


 95


 ついで、怖い思いもした。


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 Pプレート51番は、霊園ということもあり、木木に囲まれ、浮かんでいる位置が確認し難かった。しばらく彷徨うと、それは丘というより山の急斜面にあり、プレート自体は、その位置からは横向きに、わずかに木の上の空に浮かんでいた。番号を確認できないのも悔しいので、自転車を置き、山に入った。転びこそしなかったけれども、多少はそこですべり、プレート探索とはぜんぜん関係なかったのだけれども、昔、自転車に乗ってゴルフ場に迷い込んで出られなくなったとき、自転車ごと柵越えしてそこを抜け出したことを思いだながら、数字を確認した。

 その後、暗くて不思議でやはり細い石段を下って山を降り、交通量の激しい道路に抜け、ついで川を渡り、また山(丘?)に登り、別の川を渡ってからは先が山また山で登っては降り、降りては登り、いつのまにか車の音も聞こえない高台の田舎風景に達し、不安になりがらも先に進んだ。


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 P65番なんかは、高台の農家の敷地内で燦然と輝いていたものだ。


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 それからしばらく行くと、かなり高い位置に浮かぶプレートが続き、また山を登り、下り、街に入り、鉄道高架をくぐり、丘の上の公園を突っ切り、今度は黄色のまた別のプレートを遠くに眺め、

(まったく、何種類あるんだⅡ)

 小学校や中学校の脇を通り、いつのまにか住宅街を抜け、町工場が林立する地区に入り、そして鉄道架線の向こうに最終Pプレート103番があると確信し、すぐに橋を渡り、確認した。

 そのときには尋常ではないくらい疲れていたのだけれども、自販機で天然水を買い、飲み、しばらく休むと、多少なりとも体力が回復してきた。時間的にはまだ追えたのかもしれなかったけれども、……というか、Pプレート103番の近くには種々の色の別のプレート群があって、それぞれさまざまな方角に延びていたのだけれども、それらは少女の叫ぶ光の『影』のイメージを示すものではないと確信できたので、ぼくは何も考えずに家に帰ることに決めた。

 帰りの道は真っ直ぐに進めたので距離的には行きより数段楽だった。

 でも、家までの最後の数キロで気力も体力も限界を迎え、遅い夕方前に家に辿り着いたときには、頭の中が真っ白になっていた。


 99


 ここにきて、ぼくはまた手掛かりを失ってしまったことになる。


 100


 プレートを伴う空の『影』(筋)はどうやら無数にあるらしいことだけは理解できたが、逆に少女がいたあの光の『影』が特定できなくなってしまった。

 LGプレートの終点でPプレートと共に発見したLPUプレートを追う手もあったが、ぼくにはそれも違うだろうという確信があった。プレート自体は無数にあるのかもしれないけれど、少女のいる空の『影』に到る方法が見つからない。

 そんなわけで、ぼくの気力はすっかり剥げ落ちてしまったわけだ。


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