4
「がっ!?」
困惑と衝撃。
そのふたつが混じったような声
予想だにしない反撃にこの男は何が起きたか分かっていない様子だ。
ただ首を掻き切っただけではすぐに人は死なない。
もちろん時間が経てば出血多量やショックなどで死に至る。
しかし反撃を避けるため今すぐにこいつは殺す必要がある。
無傷の状態でのダガー奪取はかなり難しそうだったが今は別だ。
俺はすぐさまディスアームを使用しダガーを奪い取る。
「!?」
未だに何が起きているか分かっていないこの男は簡単にダガーを手放してくれた。
人間の、いや生物の急所のひとつである頸動脈。
先程の攻撃では首の皮を切ったに過ぎない。
ただ今俺の手にダガーがある以上先程より確実にその頸動脈を狙うことができる。
首横を思い切り掻き切る。
先程より力強く、確実に死ぬように。
かなりの勢いで首元から血が吹きでる。
切れた。
もうほっておいて大丈夫だ。
頸動脈を切った以上こいつは十数秒で死に至る。
「さて」
この男が攻撃を仕掛けてきて約5秒といったところか。
俺は、もう1人の男に呆れたという感想を持ちながら目を向ける。
5秒も経ちながら何一つ行動に移せない。
そんな奴がよくダガーなど人に向けることができるな。
確かに先程この2人組の会話からこの男はあまり戦闘慣れをしていないと判断し後回しにしたがここまでとはな。
「何者...なんだ...」
こちらにも恐怖という感情が伝わってくるほどか細い声で俺に質問を投げかけてくる。
「答える必要があるか?」
俺はそう答えた瞬間一気に間合いを詰める。
急な動きにこいつは対応できず簡単に関節技のひとつアームロックの形を取ることができた。
アームロックは決まれば簡単に脱臼させることが出来る。
躊躇はしていられない。
俺は思い切り力を込めこの男の右肩をへし折る。
「ぐぁぁぁ......」
ポキッと乾いた音と共に声にならない叫び声。
こいつは情報を聞き出すために殺さず生かしておく。
聞きたいことは山ほどある。
俺は奪ったダガーをこいつの首元に近づけ
「殺されたくなかったら俺の質問に答えろ」
おそらくこいつにとって地獄とも言えるような時間が始まる。