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4 魔王さま、診察される。

 魔王はおばあさんに連れられて、【のどかそう】という表札がついた古い木造家屋に入りました。

 築五十年は経つのであちこちガタがきています。

 歩くたび床がギシギシ悲鳴をあげる。たたみの匂いも初めて嗅ぐもの。

 もともとが巨体だったため、人の家の中というものに初めて入った魔王は、わくわくしていました。


「これを着るとええ」


 アイロンがけされ畳まれていたアロハシャツ。ジャージのズボンには大家おおやと刺繍が入っています。


「ふむ。着る、とはどうすればよいのだ」

「なんてこった。頭を打ったショックで服の着方も忘れちまったってのかい。かわいそうに……」


 おばあさんがほっかむりにしていた手ぬぐいを外して、あふれる涙を拭います。

 忘れるもなにも、服を着たことがないからほんとうに着方がわからないのです。見た目が三十半ばの男性なので、服を着たことがないなんて誰も思いません。


 おばあさんに教わりながらどうにかこうにか服を身につけて、ようやく露出狂ではなくなりました。


『魔王さまよくお似合いです!』


 ケルベロスも似合うと言いたげに吠えます。そこらの若者が見たらクソダサい組み合わせですが、魔王はこの服装が気に入りました。


「あいさつが遅れたな、登呂さん。おれは大家おおやトメというんらよ。このアパートはおれんちの管理してるもんらすけ、落ち着くとこがねんなら空いてる部屋を貸しちゃる。家賃は働けるようになってからでええでの」

「おお、住んでもいいのか。助かる」


 この集落唯一の診療所で赤ちゃんを診てもらい、健康体だと太鼓判を押されました。

 医者の老人、石谷いしやは魔王の診察もします。


登呂とろさん、あんたも大事ないかね」

「儂はなんともないぞ」

「んだが、記憶喪失になっているのだから、どこか強く打っているのかもしれねえろ」


 聴診器をあてられ色々質問され、看護師が針のついた透明な筒を持ってきました。


『ぎゃあああぁ、魔王さまに何をする気だ人の子! まさかそれを魔王さまに刺そうなんて、やはり人間は我らのて』

「さっきから外のインコがうるさいねえ。君、ちょっと窓閉めて」


 看護師がピシャンと窓を閉め、中の様子を伺っていた爺やが追い出されてしまいました。


「安心するとええ。わたしの注射はちっとも痛くないので有名だすけな」

「ぬわあああぁああああ!!!!」


 めちゃくちゃ痛かったと、のちに魔王は語ります。

 

 あれこれ検査を終えて、のどか荘に戻る頃には夕方になっていました。


魔王は【注射ギライ】になった。


 _____

 \_╋_/

  ( ^д^) 刺すお

 ∠つ|二||エエ>―

  (__)__)

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新連載はじめました。
シスター・キントレ!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 住む所も決まって、順調に生活基盤が整っていきますね。 それにしても、鳴き声がうるさいという理由で看護師さんに閉め出された元サンダーバードの爺やが、何とも哀愁に満ちています。
[良い点] 4 魔王さま、診察される。読みました。 魔王様可愛いですね。 楽しい日本に馴染んでください~!( ≧∀≦)ノ と思いました。
[一言] 魔王様の弱点に注射が加わった(゜Д゜;) なんにしてもなんとか人間としての暮らしスタート!! 果たして魔王様ははた○く魔○さまになれるのか!?( ォィ
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