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第二十七章 記憶から『自分』が生まれる

「私は一人でも多く、モンスターによって理不尽な目に遭っている人々を守りたい。

 私の様な悲しい記憶を引き摺る子供を、もうこれ以上つくるわけにはいかない!!

 私の生まれた町の様に、突然全てを失うにされる恐怖と絶望を、もう誰にも味わってほしくない!!」


バカラさんの切実な思いは、彼を支えると同時に、彼を苦しめているのかもしれない。確かにその志は、確かに間違ってはいない。

でも、人一倍責任感が強い彼にとって、この感情は、あまりにも重すぎる。

それこそ、バカラさんが分身でもしない限り、彼の悩みは解決しないだろう。ただ、彼はその感情を、簡単に捨てられないのだ。

よく理想と現実に悩む人の話は聞くけど、現実をずっと直視するのも、体や精神には毒なのかもしれない。


「・・そっか・・・大変だね・・・」


ごめんなさい、私にはこんな言葉しか頭に浮かばなくて。ずっと呑気に生きていた私にとって、彼は遠い存在に見えてしまう。

こんなに自分の考えを貫き続ける人は、前世の世界でも見かける事はなかった。何故なら人間は、時代と共に移り変わるのが普通だから。

流行や環境が変化すれば、当然自分達も変化を強いられる。

それが例え強制ではなかったとしても、変化しない事によるデメリットが後々響くパターンもある。

流行にある程度ついていかないと、他人との話も盛り上がらない上、時代に乗った活動ができない。

だからこそ、流行に乗るのは、ある意味賢い立ち回りなのかも。

ただ、バカラさんの場合は、自分の意思を曲げず、うまく立ち回った結果、着々とキャリアを積み重ねた。

今彼が抱えている問題は、その反動なのかもしれない。別に悪いわけではないのだが、彼も彼で、真面目になりすぎているのかも。

世の中には、真面目に取り掛からない方が、むしろ良い結果になる事も多い筈。

前世の世界でも、ちょっと卑怯なくらいが丁度いい場合があった。

ただ、良心が大きすぎる彼にとって、今の状況は解決するにも簡単に解決できない、八方塞がりな状況。

かと言って、卑怯な手も使えない、自身の心を緩める事もできない。そんな彼が導き出した答えが、『逃走』しかなかった。

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