第二十一章 兄の近況報告
「いつも兄がお世話になっています。」
「いやいや。
私としても、『配慮』を怠ってしまって、彼には申し訳ない思いをさせてしまう事が幾度もあってね、
お礼を言われる筋合いなんてないよ。」
「・・・・・?」
バカラさんの話によると、やっぱり『人獣』は人間社会の中では異質な存在で、姿形が多少違うだけで、その他はほぼほぼ人間とは変わらないにも関わらず、獣の耳と尻尾を持つだけで、冷ややかな視線に晒されてしまう事も珍しくはないんだとか。
・・・きっと、里に住む人獣達が、『人間』を奇異の目で見てしまうのと同じだろう。
ただ、王都に住む全員の人間から蔑まれると考えるだけで、背筋がゾッとする。王都では、そういった『種族差別』が長年横行しているんだとか。
何故そんな偏見が横行しているのか、それは王都に住む人間の数が多すぎるから。里に住む人獣の何倍、何十倍もの人間が王都に住んでいる。
しかも、王都に住んでいるのがほぼ人間である事も、人間以外の種族に良い印象が持てない要因なのかもしれない・・・と、私は頭の中で考察した。
やっぱり、自分とは姿形が違うと、それだけでも警戒心を持ってしまう。
私達人獣にとっても、自分達の体に獣の耳と尻尾が生えているのが、ごくごく当たり前な事だったから。
今の私も、改めて人間の耳を見た時、ちょっと違和感を感じた。
前世の自分は人間だったにも関わらず、この世界では人獣の自分が定着してしまって、人間がすごく珍しく見えてしまう。
前世の世界でも、この世界でも、人間は世界中で生きている。そして前世の世界でも、この世界でも、人種間の問題は発生している。
私は平和な国である日本に住んでいたけど、日本にも少なからず、『差別』はあった。
でも、世界から見れば、日本で起きる差別なんて、個人同士の『トラブル』に過ぎない。
世界や人種を跨いだ差別となれば、解決には多くの時間を費やさないといけない。
定着してしまった意識を変えるのは、とんでもなく難しい。私の陰キャ体質の様に・・・ね。
ただ、世界に生きる人間の誰しもが、差別するわけではない。兄の師匠でもあるバカラさんは、種族を問わない性格の持ち主だった。
兄はせっかく王都までの旅路を終えたのに、そこに待ち受けているのは『人獣』というだけで蔑まれる環境・・・という、完全に絶望的な状況。
しかし、そんな環境の中でも、自分をしっかり見てくれる人がいれば、何事も乗り越えられる。
・・・そんな人が、前世で私にも欲しかったな。
やっぱり、子供の悩みを解決できるのは子供。女性の悩みを解決できるのは女性。
純粋な強さに憧れていたギンの悩みを解決させる事ができるのは、純粋な強さと純粋な性格の持ち主である、バカラさんが適任であった。




