第一章 転生へ至るまで
いや・・・まぁ・・・ね。
未練が無い・・・と言ったら嘘になるけどさ。未練を感じる程の記憶も感情も、生きていた世界では皆無に等しい。
社会や家族、学校や生活が楽しかったわけでもないし、むしろ何度も嫌になった。
あの世界、あの境遇から抜け出したいと何度思ったのか、記憶だけでも数え切れない。
でも、ようやく全てからオサラバできた現状の私は、もう目も当てられない。
こんなシュチュエーションより、ベッドの上でもいいから、大勢の人間に見守られながら旅立ちたかった。そんな事、口には出せないけど。
私の旅立ちを見届けてくれたのは、紛れもなく初恋の相手であった。でも決して、『不幸中の幸い』とも言えない。むしろ『不幸中の追い討ち』だよ。
・・・でも、『彼』には悪い事をしてしまったのかもしれない。
私のいざこざに巻き込んだ挙句、間接邸ではあるけど、『殺人罪』に問われるような事態を招いてしまったんだから。
正直私の死については、誰が責任を問うか・・・とか、誰が一番悪い・・・とか、そうゆう事は問わない方がいいだろう。
それくらい、自分は中途半端で、薄暗い存在と、薄暗い人生であった。
でも、何故かスッキリしている。全ての束縛から解き放たれた解放感は、寒い日に入る熱々のお風呂を凌駕する。
前に動画で見たけど、人間が一番快感を感じる瞬間は、『死ぬ直前』らしい。
私の場合、ちょっと違うのかもしれないけど、その理論は割と理にかなってるのかも。
・・・だからといって、私自身の死に関しては、納得できないけど。