その頃、、兵舎にて(3)
「・・・兵士長、ちょっと。
鎧は、どうしたんですか?」
「実はね、私を『治癒してくれた人(恩人)』が外してしまったんだ。」
「・・・え??」
俺達は一斉に口を揃え、疑問の言葉を投げかける。
『治癒してくれた人(恩人)』??
そんな人が、あの山の中に居るのか??
兵士長がもし遠征隊の兵士に助けられたなら、普通に「仲間の兵士に助けられた」と公言する筈。
なのに、助けてくれた人を曖昧にしか表現できない・・・という事は、兵士長とは何の関わりも無い人から救われた・・・という事になる。
人が住む町や村ならまだしも、あんな人気のない山の中(無法地帯)で、人一人(兵士長)を救える人なんているのか?
しかも、兵士長の口ぶりから、盗賊団に襲われた際、かなり重度の傷を負ったそう。
けど、そんな深傷を秒で治癒できる人がいるとしたら、世界でも数少ない、『治癒魔法』専門の魔術師でもない限り、不可能な筈。
そんな人物が都合よく鉢合わせるなんて、あり得ないに等しい。いや、絶対あり得ない。
でも、兵士長は決して冗談でも嘘を言う人ではない。・・・いや、兵士長自身も、自分が何故助かったのか、理解できない節のある表情をしている。
こうなってくると、完全に『人智を超えた者(山の神様)』が、この件に介入しているとしか思えない。
報告とかどうすればいいんだ?
「よく分からないけど傷口が塞がっていたので帰って来ました」では、絶対納得してもらえないだろ。俺だったらその報告書を破るくらいはする。
兵士長は老若男女に好かれている事は前から知っていたけど、まさか『神様』にも好かれているとなると、それはそれでまた厄介になりそう。
周りでヒソヒソ話している兵士達も、報告書の内容について揉み合っているんだろう。




