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その頃、、兵舎にて(1)
王都に来たその日、俺にまず立ちはだかったのは、『人種』という壁である。
王都では人獣がよほど珍しいのか、市場を歩くだけでジロジロ見られ、一部の人間からは汚い目線で見られていた。
そこから兵舎へ赴き、訓練生としての登録をする段階にも、『人の姿をした獣』だとか、『野蛮な種族』だとか、散々言いまくっていた兵士もいた。
だから、俺は愕然としていた。どんな種族であろうとも、どんな敵を目の前にしても、勇猛果敢に戦う兵士の像が、完全に崩壊した。
俺の理想は、単なる『御伽噺の中だけの存在』だと、打ちひしがれていた。
何より人獣に対する目線がそんなに偏見に塗れていたなんて、追い討ちにも程がある。
俺達人獣は、決して穢れた種族でもなければ、野蛮な種族でもない。
俺達は獣の耳と尻尾が生えているだけで
人間と同じように生活をして
人間と同じように働いて
人間と同じように食事を取り
人間と同じように家庭を持つ
でも、ただ単に人間とは少し違った外見なだけで、周りから冷たい目で見られる。俺は、初めて人間が怖いと思った。
里を訪れる旅人は、俺達に対して偏見を持った事なんて一度もなかった。
でも人柄が違うだけでこんなに態度に差が出るなんて、あまりにも汚いと思う。そして同時に、卑怯だとも思った。




