表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/241

第十六章 目覚めの後悔

「・・・・・」


私は何も言えなかった。私の言いたかった事を、父はもう見抜いていたのだ。それこそ、『私の父』だから。

そう、何故私が他人に対して、一族の秘術である〈ノリト〉を使ったのか、その経緯ですらもお見通しだった。

もし問い詰められたらどうしようと思っていたけど、迷う時間もなかった。

でも、弁解する余地もなさそうだ。何故なら父の考察は、ほぼほぼ当たっているから。

私は何も言えず、ただ黙る事しかできなかった。ただ、ゲンコツを喰らう体制と心構えは用意しておく。

ぶっちゃけ、セーフのような、アウトのような。私の行いは、微妙な所でフワフワと浮く風船みたいだけど、怒られても仕方ないと思えてしまう。

普段から

「山を甘く見てはいけない」「山は恐ろしい場所である事を忘れてはいけない」

と、散々言われているにも関わらず、この為体。シルフォの一族として、村長の娘として失格だ。


「・・・そっ・・・その・・・

 ごめんなさ」

「いいんだ」


私が謝ろうとした直後、父が私の頭にポンと手を置いた。驚いた私が父の顔を見ると、父はいかにも「やれやれ」と言わんばかりの表情をしている。

後ろで佇む母も、少しだけ微笑んだ表情をしていた。そう、この表情は、「叱りたいけど叱れない」という感情の現れ。

そこで私は、改めてとんでもない事をしてしまった事を自覚した。

青年を助けた代償として、両親に多大な迷惑をかけた挙句、気を遣わせてしまったのだ。

居た堪れない気持ちになった私は、唇を噛み締めながら、俯く事しかできない。普段から賑やかなこの家が、静かな静寂に包まれていた。

私の胸は、まるで針が何本も刺さった感覚のような、ジクジクとした鈍い痛みに襲われた。それと同時に、彼を救った右手も痛い。

私は、ずっと夢に見ていた『平穏で温かい家庭』を、自らの手で壊そうとしていた。父や母に愛されている事は、毎日ずっと実感していた筈。

そんな両親が、娘の無理を気にかけないわけがない。そして、『愛情』と『責任』が紙一重である事も、私はこの日知ったのだ。


『大切なモノ』を守る事って

こんなに難しくて大変な事だったのね・・・


一度やってしまった事は、もう取り返しがつかない

『善意』であっても

『悪意』であっても

起こしてしまった事態には、必ず『結末』が待っている

それをコンが知るのは、数週間後の事である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ