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序章二幕 荒ぶる怪物に終止符を

そんなホグジラの体から飛び出してきたのは、全身が葉っぱでコーティングされている、私の兄


『ギン・シルフォ』


相当手こずっていたのか、剣を握りしめていた兄の手は真っ赤だ。こんなに兄を苦戦させたなんて、改めてその強さが感じられる。

普段は山に出現したモンスターばかり狩っている兄だから、類を見ない程凶暴な動物を相手にして、さすがの兄でも苦戦していたみたいだ。

でも、いたずら半分で動物に手出しをしないのは、兄の『優しさ』だ。

食肉でどうしても動物を狩らないといけない時は仕方ないけど、困っている動物がいても助けてしまう程。

モンスターに対しては容赦がないけど、動物や人を相手にした兄は、見てるこっちが心配になるくらい優しくなる。

今回のホグジラ討伐だって、兄はそこまで乗り気ではなかった。

「野生動物なんだから、放っておいても大丈夫なんじゃ・・・?」と、珍しく父に意見した兄。

普段は父に意見なんて一切しない。時々喧嘩はするけど、『昔』に比べたらほぼ無いに等しい。

ただ、このホグジラだけは話が別であった。確かに野生動物だから、こちらから手を出さなければ良いだけの事。

でも、その巨体と性質のせいで、既に村人の数人が被害を受け、数件の家が荒らされた。

死者が出なかっただけでも幸いだったけど、私達の住んでいる『フシミの里』の場所を知られた可能性が高い。

里は山と違って、食べ物が多く保管されている。そこにつけ込まれると、里の被害が今後深刻化する恐れもあった。

だから父は、私と兄にホグジラの討伐を任せたのだ。私も嫌々気味な兄を引き連れて、色々と対策と作戦を事前に練っていた。


「・・・グフゥ・・・」


のたうち回ってからどれくらい時間が経ったのかは分からないけど、ようやくホグジラを絶命させる事ができた。

結局ホグジラ退治は、1日で終わってしまう。もっと時間がかかるかと思っていたけど、日頃からこの山を散策しておいてよかった。

此処は、私達のフィールド。だから地の利も罠の張り方も、こちらの方が断然有利なのだ。どんな巨体であっても、動物である事に変わりはない。

・・・でも、今回ばかりは兄も大いに喜べない様子。確かに、私もちょっと罪悪感が残る。


でも仕方ない、生きる為には戦わないといけない。それは、『一週目の世界』でも十分に理解していた筈。

でも何故、私は『一週目の人生』で戦わなかったのか。それは、事実に気付いた頃には、もう


『遅すぎた』




「・・・よしっ! とっととコレ村まで持ってくか!」


「うんっ、今日はお肉三昧ね!!」


こうやって無邪気に笑う事も、『一週目の人生』ではほぼできなかった。



そう、私は

『転生者』だ


優しい兄も

豊かな自然を満喫する事も

彼女が夢にまで見た『理想』であった

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