第十三章 悲しき前世の記憶
でも、それを止めた人物がいた。私の母だった。
突然母が私の肩を強く掴むから、びっくりした反面、構ってくれた嬉しさもあった。
「一緒にその子のお母さんを探そうね」と言ってくれる、そんな淡い期待を持っていた。
その頃の私はまだ、『優しい母親』を諦めきれなかったのだ。
しかし、母の発した言葉に、私は愕然とするしかできなかった。
「余計な事に首を突っ込まないでよ、助けるのは私になっちゃうんだから。」
母は、無表情でそんな無慈悲な言葉を軽々と口にした。
当時はその言葉の意味をよく理解できなかったけど、幼い私にも、母が言いたい事が伝わってしまった。
私の母は、迷子になった子を『助ける・助けない』の選択肢すら与えてあげない。ただ単に、『関わりたくない』という堕落した心境のみ。
私はすごくショックだった。それと同時に、『大人』に対する信頼が大きく欠損した瞬間であった。
保育園の先生も、両親も、近所の大人も、誰も信じられなくなってしまう。
まるで、真っ暗な洞窟の中で、先に見えていた淡い光が消えて、全てに絶望した感覚だった。
結局迷子になっていた子は、たまたまパトカーで巡回していた警官に保護された。でも私の心は、迷子になったままであった。
母が私に構ってくれた事は、確かに嬉しかった。でも、嬉しかったのはその瞬間だけ。
『誰かを助ける』 『困っている人を助ける事は、とても偉い事』
そんな私の意思が、断固反対された気持ちになった。むしろ、誰かを救う事自体が馬鹿げている、そう母に教わった気がした。
幼児向けのアニメや漫画でも、必ずと言っていい程困っている人を助ける、正義のヒーローが華々しく描かれている。
そんなヒーローは、子供達にとっては『憧れの存在』である。私もそうだった。
いつかかっこいいヒーローが、可哀想な私を救ってくれる。
可愛いステッキを持った魔法使いが、魔法で両親を優しくしてくれる、愛に溢れた家庭にしてくれる。
そう思うしかなかった私の、最後の希望がへし折られた。
この世界では、困っても誰も助けてはくれない。誰もが傍観者である。
そしてこの世界は、『正義』や『善意』を嫌っている。
だから大人も子供も、皆が冷たいのだ・・・と。
貴女は身近な誰かに
『心無い言葉』を投げかけていませんか?
その影響は、相手に一生付き纏い
良くも悪くも、相手に影響を与えてしまう




