序章二幕 荒ぶる怪物に終止符を
その証拠に、矢がみるみると冷たくなり、氷でできた槍の様な形状になる。放たれる冷気が肌に触れる度に、鳥肌と寒気が止まらない。
そして、準備が整った直後、ついにホグジラが姿を現した。その巨体で巨木ですらも簡単に突き破る、規格外の大きさを誇るイノブタが。
でもパッと見では、それがイノブタかどうかも分からない。『大きな毛の塊』にしか見えないけど、顔は辛うじて認識できる。
私はホグジラの顔を捉えたと同時に、振り絞っていた矢を解き放った。
「〈凍てつく矢〉(アイスアロー)!!!」
ヒューンという空気を突き抜ける音と同時に、辺りに茂っていた木々の枝に霜が降りる。
そのまま白狼の如く空中を駆け抜けた氷の矢は、ホグジラの眉間を貫いた。
ホグジラはまるで地鳴りのような鳴き声で呻きながら、その場で転げ回る。でも、痛みからは決して逃れられない。
その矢が眉間に刺さっている限り、矢の痛みとアイスの痛みからは決して逃れられない。
むしろ狼狽えれば狼狽える程、眉間に刺さった矢が食い込む。我ながら、かなり恐ろしい矢を作ってしまった。
里の食事も武器も自給自足だから、私は山に登る度に適当な材料をコツコツ集めていた。
若干加工したり、作り替えたりしながら、状況に応じた武器の研究をしていた。
だから、このホグジラを射止める為には、普通の矢では威力が足りない。だから矢尻に『かえし』を加えて、簡単には引き抜けないようにした。
その威力は想像以上に絶大みたいだ。あれほど村民を恐怖させていたホグジラが、なす術もなくのたうち回っている。