第十一章 帰ろう
父も母も、兄を信じているから、あえて何も言わない。時々
「ギンは今頃何してるかな?」とか
「ギンはしっかりご飯食べてるのかな?」と
物思いに耽る事はあるけど。
私としても色々と言いたい事はあるけど、言わないようにしている。変に話を深掘りすると、今度は両親が面倒臭くなりそうだから。
そう思うと、私もいつか里から出て一人暮らしする未来が来るのかな・・・?
今のところ、そんなつもりはさらさらない。この森から離れるなんて、趣味と仕事を両方失うくらい残酷な事。
前世で一回くらい、一人暮らしについて考えておけばよかったかもしれない。そう思うと私の前世、すっっっごい薄っぺらいなぁ。
もっと、色々と経験した後から転生すれば、転生後に色々と選択肢も増えたかもしれないけど、それもほぼ皆無に近いからなぁ。
・・・でも、経験したくてもできそうにないな。あんな環境だと。今の環境と前世の環境を見比べたら、本当に天と地程の差がある気がする。
今思えば、前世では暖かい家庭にずっと憧れていたから、暖かい家庭は珍しものだと、ずっと思い込んでいた。
でも、転生するとそうでもない事に気づいたのだ。里にある他の家庭も全部暖かくて、この里自体が、一つの大家族の様でもある。
家族や人生に『当たり』『ハズレ』なんてつけたくないけど、私の前世は、完全に『ハズレ』だったんだなぁ。
家族と別れる事がこんなに辛いなんて、前世では経験できなかったから尚、そう思えるわ。




