第十章 一人ぼっちになると、考え込んでしまう
森はいつも通り
静かに彼女を迎えてくれた
兄が旅立ってから、10日が経過した。
森の見回りはそれほど大変ではないけど、一人きりの見回りは、ちょっと寂しいものがある。
前は兄と一緒に話しながら散策していたから、話し合いがいないだけでこれだけ虚しくなるなんて、前世のトラウマが掘り返された気分だ。
でも、『辛い』と感じる程虚しいわけではないから、きっとそのうち慣れるだろう。
『虚しい+辛い』だと、ただただ苦しいだけ。でも今は、全然辛くない。
森が私にいつも寄り添ってくれている、そんな気がするから。前世はずっと苦しい時間ばかりが過ぎて、誰も私を見てはくれなかった。
兄が旅立った苦しみを慰めてくれるのは、両親や里の皆だけではない。そう思うだけで、今日も張り切って散策できる。
今の季節は、丁度『夏』が近づく頃合い。前世の世界で例えると、『ゴールデンウィーク』の半ば・・・という感じ。
相変わらず私は、ずっと山の中にしかいないも同然だけど、それでも楽しいと感じられるのは、この山が好きだからだろう。
好きじゃなかったら、毎日毎日山登りなんてしない。体力も使うし、数時間登るだけで土まみれになってしまう。
でも、私の進行を邪魔する虫に対しても、何故か苛立ちを感じない。小さな子供にちょっかいをかけられた程度の感覚だ。
前世ではゴールデンウィークになると、殆どの家族が旅行やショッピングを楽しんでいた。でも我が家は違う。
両親2人典型的なぐうたら思考で、どこにも行かずにただ家の中で寝てるだけ。
会話もほぼ無く、時々母が「休みなら家事くらい少しは手伝ってよ」と愚痴を零す程度。食事もインスタントか出前。
ただただ何もない日々だけがずっと過ぎていく、でも、それでも私は幸せだった。学校に行かなくてもいい、それだけでも私は十分救われた。
だから、ゴールデンウィーク明けはいつも異常に辛かった。
私を蔑もうとワクワクしながら待ち望んでいるクラスメイトにも会いたくなかったし、クラスメイト達のバカンス自慢を聞くのも辛かった。
「私は○○に行った」「私は○○を食べてきた」「写真あるんだけど見る?」
その言葉のどれもこれもに、自分自身を自慢したい欲求がはみ出ていた。
「私はこんなに充実した休みを過ごしたの。羨ましいでしょ?」とでも言わんばかりに、皆が周りの様子を伺っては、自慢できる瞬間を心待ちにしていた。
友人達に自慢をする為にゴールデンウィークを駆け抜けたのか、それとも嘘なのかも分からない。




