第九章 しばしの別れ
「できれば、俺が里へ帰って来ても、この名刀はお前が肌身離さず持ち歩いてほしい。俺はこの宝剣を扱
うには、あまりにも雑すぎる人間なんだ。
人の感情にも、自然の流れにも敏感なお前が持ってこそ、この名刀は本領を発揮できると思う。」
「・・・・・
うん、分かった。」
私は静かに、兄から名刀を受け取った。それと同時に、朝日が黄金の獣に反射して、それに呼応する様に、山から涼しい風が里へ吹き抜ける。
まるで山も、兄の門出を見送る様に、木々の一本一本が大きく揺れていた。兄の顔に、もう曇りなんて一切ない。
兄は父と母に最後と別れを告げ、里の出入り口へ振り向いた。その大きな背中を、私達はただ静かに見守る。
心の中で、兄の成長と無事を願いながら。皆は一言も言葉を交わす事もなく、兄の背中が見えなくなっても、その場から動けなかった。
私は受け取った名刀を腰に下げ、これからお世話になる刀に向かって挨拶を小声で囁いた。「これからよろしくね」と。
・・・・・
でも・・・・・
せっかく憧れていた妹としての生活は、一旦中断になってしまった。兄が里を去ってしまったのも悲しいけど、前者も同じくらいショッキングである。
その悲しみに耐えきれず、私は無意識に涙と鼻水をドバドバ流していた。そんな私を見てドン引きする皆、本当にすいません。
潔く去る兄とは対照に
未練タラタラな妹のコンであった




