第八章 兄との別れ
「コン、ちょっといいか?」
「ん??」
兄が急に、私の元へ歩み寄って来た。そして、腰にかけてある『我が家の宝剣』を鞘ごと引き抜き、私に差し出した。
「これを、お前に託したい。」
「えぇ?!!」
兄の言葉に、私と両親は驚いていた。
その宝剣は、シルフォ家に伝わる名刀で、この里を守り抜いてきた、いわゆる『守り神』的な存在。
その名刀の名は、『宝剣 キュウビ』
王都で孤独になってしまう兄を、宝剣が守ってくれる事を願い、母が兄に持たせた筈。
装飾も素晴らしけど、切れ味も強度も、そこら辺の農具とは比べ物にならない程強い。きっと王都で働く兵士が使う武器よりも、よっぽど質がいい。
「でっでもこれは・・・!!
お兄ちゃんが持っていた方が・・・!!」
「いや、いいんだ。里に残るお前が持っていた方が、この宝剣も喜ぶだろう。
俺は、宝剣に頼らずとも強くなる。それでこそ『実力の持ち主』だ。」
「・・・・・」
兄は私に向けて、申し訳ない目線を向けていた。きっと、私にこの里の全てを任せっきりになってしまう事に、申し訳なさを感じているんだろう。
兄も兄で色々考えた結果、王都に行く事を決めたのなら、私も黙ってその背中を押す。それが妹だから、家族だから。
ただ、兄が王都に行くと、里で一番の戦闘要員は、私になってしまう。兄はどうしてもそれが許せない節があるみたいだ。
というのも、よく父から言われていたのだ。「男は女を守ってこそ、胸を張る事ができる」と。もちろん里には兄以外の男性もいる、だがその全員が、モンスターを退治できる能力があるとは限らない。
私は昔から兄の特訓に付き合っていたから、モンスターとの接し方はしっかりマスターしている。
モンスターと出くわした際、相手の態度を見て戦うか逃げるかを選択したり、凶悪なモンスターが出現した際の対処法も学んだ。
今度は私が、その知識を里の皆の為に役立たせる。ただ兄としては、『女』である私が里を担う事が、不憫に見えているんだろう。
別に差別や偏見ではない、兄なりの優しさである事は重々承知している。でも私は、喜んでその役目を担いたい、だから私は兄の背中を押したのだ。
でも、兄の言っている言葉も、筋は通っている。確かに兄に持たされた宝剣は、『兄』だけの守り神ではない、『里に住む皆』の守り神だ。
だからこそ、里の警備を担う私が持ってこそ、守り神としての価値を見出せる。それは最もだ。
兄は里を妹であるコンに託し
コンは兄の気持ちを受け取った




