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第八章 兄との別れ

兄は、ついに里を離れ

自らを高める為、王都へと向かう

全ては、この里と家族を守る為

「お金は?」


「持った。」


「上着は? もう一枚いる?」


「いらない。あんまり荷物が増えると、面倒臭くなるだけだから。」


「武器は? ちゃんと持った?」


「持ってるっつーの。」


やっぱり母は、こうゆう時に心配してしまう。かく言う私も心配ではあるけど、私まで口を挟んでしまうと、さすがの兄も鬱陶しく感じてしまうだろう。

でも、心配されるという事は、それだけ愛されている証拠でもある。前世の母親は今とは全く真逆で、私を心配した事は指折り程度しか記憶にない。

今日から数年、数十年は、私が母を守らなくちゃいけない。兄とずっと訓練を続けていた動機も、この為である。

そうじゃなきゃ、兄が安心して修行に行けない。

色々と不安だらけではあるけど、せめてその不安が少しでも和らぐようにと、私も私なりに奔走していた。

転生して改めて、私は人生に熱意が持てた。それは、大好きな家族と、大好きな里が、すぐ近くにあるから成せる『心の成長』なのかもしれない。

やっぱり、守るべきもの、愛すべきのがなければ、熱意なんて湧かない。

特に守りたくもない、愛せない存在に対して熱意を持つ事自体、無理な話だ。

それこそ、鍋の中の水を道具を使わず、熱湯に変える事くらい無理だ。熱意という炎がが水を温め、お湯になる事で、自分の熱意の強さが証明できる。

だからこそ私は、兄と一緒に訓練を重ねて、兄に自分の力を証明した。別に自慢したいわけではない、ただ兄を安心させたい、ただそれだけの動機。

しかし、たったそれだけの動機でも、私も兄と同じくらいの実力を身につける事ができたんだから、どんなに熱意の炎が小さくても、時間をかければどうにでもなる。

だからこそ、今度は兄が熱意を燃やす番だ。兄の熱意で、果たしてどれ程のお湯が出来上がるのか、もしくは熱しすぎてお湯自体が無くなってしまうか。

今からすごく楽しみだ。

もしかしたら、里に帰って来た兄は、見違える程立派になっているかもしれないと思うと、嬉しい反面、ちょっと寂しくもなる。

いや、今でも十分寂しい。普段はおしゃべりな父ですら、今ばかりは無言になっている。

父の寂しそうな表情を見るのは少し辛い部分もあるけど、きっと私が嫁いだりしたら、もしかしたら本当に『言葉を失う』かもしれない。

兄は里の住民全員と挨拶を交わし、大きな荷物を背負う。私はまだ王都に行った事はないけど、兄が帰って来たらその感想をじっくり聞こう。

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