第七章 転機
更に運悪く、その頃森を荒らし回っていたモンスターとも鉢合わせてしまい、兄はもう戦う気力すらもなかったんだとか。
その話を聞いた当時の私は、「モンスターに対して抗戦的な兄にしては珍しい」と思ったけど、そのモンスターは、明らかに格が違ったらしい。
そのモンスターの名は、『ボーンドラゴン』
太古の昔に絶命したドラゴンが、長い年月をかけて再生した姿。しかし本来のドラゴンとはかけ離れた姿で再生してしまう。
普通、ドラゴンの体は硬くて大きな鱗に覆われ、その目で獲物を捉えると逃さない。私は実際に見た事はないけど、本等でその姿を把握できる。
だが兄の話によると、『ボーンドラゴン』の体には鱗が一切無い。体を覆っているのは、露出した骨のみ。
目がある場所には、ぽっかりと空いた穴だけが風を通し、鳴き声は骨を吹き抜ける風の音を集めた、女性の悲鳴にも似た声だったとか。
それだけ聞くだけでも、私だったら失神してそのままENDを迎えそうだ。パタリと倒れて、そのまま泡を吹く結末しか見えない。
しかもボーンドラゴンはレベルが高い個体が多く、それを本で読んでいた兄は、もう何も考えられなくなり、ただ呆然と、自分が食われる未来を眺めていたんだとか。
でも兄が食べられてしまうギリギリのところで、父が咄嗟に助けてくれた。
父は兄を救う為、周りの制止を振り切り、危険な森の中に自ら立ち入ったんだとか。
それだけでも十分凄い事だけど、暗闇に包まれた森の中で、たった一人の子供を見つけられたのも、もう神力レベル。
だが、兄を見つけてもまだ安堵はできない状況であった。
ボーンドラゴンは、2人にそのまま襲いかかったが、父はボーンドラゴンを振り切り、どうにか里に帰って来た。
父と兄が里に戻って来た頃には、既に朝日が昇り始めていた。幼い私は、別の家の母親に預けられ、母は不眠でずっと2人の帰りを待ち続けた。
でも私も、あの時の事はうっすらだけど覚えている。
目が覚めたら突然知らないベッドで、知らない女性に顔を覗き込まれ、私は驚きすぎて大泣きした。あの時の話は、ある意味我が家の伝説として語り継がれている。
兄の家出エピソードも確かに語り継がれているけど、何かある度に笑いのネタにされる私の事も考えてほしい。恥ずかしいし、何より申し訳ない。




