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第六章 『人獣』とは

そんな過ごしやすい里を、兄は自ら離れて、王都へ向かい、『兵士』としての道を歩むのには、とある理由がある。

そう、そのきっかけとなった事件は、私がまだ7歳の頃。つまり、兄が11歳の頃。

その頃の兄は、いわゆる思春期で、何かと父に反抗してばかりだった。

成長過程の大事な時期である事に変わりはないけど、一度だけ、度が過ぎた喧嘩に発展してしまう。

あの時は本当に大変だった、家の中はメチャメチャになるし、私を気遣った母が、一緒に里の離れまで散歩してくれた。

でも、本当に大変なのはそこからだった。喧嘩の原因はもう思い出せないけど、ヒートアップした衝動で、兄は森の中へ姿を眩ましてしまった。

しかもその事実に気づいたのは、夕方が終わりを告げる頃。

昼の山は美しい景観と雄大な自然が歓迎してくれるけど、夜の山は恐ろしい野生動物とモンスターが蔓延る、恐怖と隣り合わせな世界。

昼間にも危険な野生動物はいる、でも危険なや後生動物に限っては、暗い世界も相まって、厄介な相手になってしまう。

何処から狙われているのかも分からず、相手がどんな動物なのかも判断できない。昼間に動く人間にとって、夜の世界は圧倒的に不利な時間帯なのだ。

それは兄も十分に理解していた筈、しかしその時は、気が動転していた事もあって、自らを危機に晒す行為をしてしまった。

一度夜の山に入り込んでしまうと、そこから里まで戻るのは無理に等しい。

道もなければ矢印もなく、闇雲に走り回るだけでも、深い闇に飲み込まれてしまう。

しかし、じっとしていればそれなりのリスクを伴う。獰猛な野生動物に狙われない保証なんてどこにもないのだ。

兄から当時の話は聞いているけど、あの時は怖いもの知らずな兄でも、命の危機を感じる程、恐怖に怯えていたんだとか。


人の姿をした獣でも

未来の為に生きる意識もあれば

未来を守る意思もある

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