その頃、王都にて(8)
ただ、最近は標的にしていたモンスターを取り逃したり、足取りを終えない件が増えている気がする。
俺の体感ではあるけど、少なくとも俺が訓練兵になったばかりの頃は、そんな話題が兵舎の食堂にまで伝達される事はなかった筈。
だから兵士に向けられる目線が、最近冷たくなっている。
こっちもこっちで全力を上げて頑張ってはいるけど、何故そんな事態になってしまうのか、原因すらも掴めないのが現状だ。
・・・ある意味俺、とんでもないタイミングで兵士になったかもしれない。
別に俺は兵士として名を上げたいわけではないから、別に皮肉を言われようと、蔑まれようと、全然気にしない。
気にする暇もないくらい頑張ってしまえばいい。
でも、やっぱり俺をここまで支えてくれた兵士長が悩んでいる姿だけは、見たくない。
こんなに頑張っている人にも野次による猛攻の脅威があるなんて、歯痒い事この上ない。
もういっその事、耳が聞こえない方が幸せなんじゃないか・・・とさえ思う。
ウジミヤを襲ったモンスター達の捜索が中断してしまった原因だって、兵士長達にあるわけではない。
あそこは豪雪地帯だから、雪が降る前に王都へ戻らないと、雪で足の踏み場をなくしたまま、帰って来られない。
一度妹に助けられた兵士長だからこそ、自分の命を優先して行動した。
救われた命にも関わらず、安易に命を粗末にしては、兵士長を助けたコンの気持ちを踏み躙る行為にも見て取れる。
それは、兵士長でもしっかり弁えていた。だからこそ、雪が降る前日にギリギリ帰って来る事ができた。
もし一日でも遅ければ、雪による被害を免れる事はできなかった。無事に帰って来た兵士長を、俺達は歓迎して出迎えた。
出迎えた兵士の中には、「また助けられたか?」なんて皮肉を言う兵士もいたけど、「残念ながら、私を助けてくれた『天使』は現れなかったよ」と、照れ顔で話していた兵士長。
コンの話題は、兵士長の周りだけではなく、兵舎全体で噂されるようになって、俺は若干肩身が狭い。
多分、皆知ってるんだろうな。兵士長の言っている『天使』が、俺の『妹』である事を。
確かにコンは可愛い、天使に例えられても差し支えないよ。ただ兄としては、不安が拭い切れなかった。




