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65話 御祖母様、隣国へ旅立つ



御祖母様(おばあさま)と王妃様は隣国へと今日、旅立つことになった。

御祖母様(おばあさま)はお爺様からの連絡がない事を気にしているみたいだったけどニライ国のパーティが2日後に迫っているため今日中に出ないと間に合わない。


王妃様と御祖母様(おばあさま)にお見送りの挨拶をするため玄関へときたのだが、なんだか様子がおかしいことに気づいた。

玄関に用意されている馬車が王家の紋章が入っていない簡素な作りのものになっている。


御祖母様(おばあさま)、ずいぶん質素な馬車をお選びしたのですね。‥‥それに警備の騎士がいないように見えるのですが、今からいらっしゃるのでしょうか?」


いつもなら数十人もの護衛の騎士がついてくるはずなのだが、今日は王妃様と御祖母様(おばあさま)、それに甲冑を身にまとった騎士が1人いるだけだった。


「今、王都周辺では魔物騒ぎで騎士が必要なのよ、私は自分の身くらいは自分で守れるし、御者兼ねた優秀な騎士を1人用意してもらったわ。」


御祖母様(おばあさま)はそうおっしゃったけど、それでも王妃様の護衛を1人に任せるなんて…。

なんだか言いようない不安が押し寄せる。陛下もお父様もこの事をご存じなのかしら、陛下はとても王妃様の事をご寵愛なされていると有名なのに。


「リアちゃん。陛下もルイスにもちゃんとお話を通して許可をもらっているわ。護衛は1人だけど彼は私が太鼓判を押すくらい強いのよ! だからそんな不安そうな顔をしないでちょうだい。」


私が心配しているのを察したのか御祖母様(おばあさま)は安心させるように朗らかに笑いながら言った。

御祖母様(おばあさま)がそこまでいうのなら大丈夫なのだろう。私はその言葉に頷いて甲冑の騎士に声をかけた。


「騎士様、どうぞ王妃様と御祖母様(おばあさま)をよろしくお願いしますね。」


『命に代えましてもお守りします。』


甲冑の中からくぐもった声が聞こえた。


「アンジュ様、それでは参りましょうか。」


王妃様は先ほどから落ち着かないご様子で御祖母様(おばあさま)を急かすように一人で馬車の中へと入って行った。

なんだろう、以前お会いした時と雰囲気が違う気がするのは気のせいだろうか。


「リアちゃん。大丈夫よ、王妃様も隣国の王太子殿下の事が気になるのでしょう。」


「はい、御祖母様(おばあさま)もお気をつけていってらっしゃいませ。」


私がお別れの挨拶をすると御祖母様(おばあさま)は私をぎゅっと抱きしめてきた。


「リアちゃん。何があっても諦めちゃダメよ。」


耳元で囁くようにそう言って御祖母様(おばあさま)は馬車へと乗り込んでいった。



どういうことなのだろうか。

何だか胸騒ぎがして自然と指が御祖母様(おばあさま)から頂いたネックレスの赤い石にそっと触れた。










「あっヴィクトリアさん!」



部屋に帰る途中の廊下で急に声がかけられた。聞き覚えのある声に嫌な予感がしつつ振り返るとクララ駆け寄ってきた。その後ろには無表情のアレク様がクララの後ろについて歩いてきた。


「どうしたのですか? こんなところにいるなんて。」


クララが無邪気に聞いてくる。すぐにでもここから立ち去りたい気持ちを抑えて答えた。


「つい先ほど王妃様と私の御祖母様(おばあさま)が隣国へとお立ちになったのでそのお見送りしたのです。」


「そうなんですねー、私達は今から神殿に建国祭の聖女の儀式のお話を聞きに行くんです。その後、アレクがお食事に連れて行ってくれるんですって!」


アレク様はこちらを見ようともせず無表情のまま、ただ前を見つめていた。


「そうですか、それではお気をつけていってらっしゃいませ。」


二人並んで歩いている姿をその場で見送って、二人が見えなくなると私は我慢できずに走って自室へと戻った。

メイも一緒にいたが、一人になりたいと言って寝室へと入ってベッドへ倒れるように横になって顔を枕に埋めた。



大丈夫、大丈夫。

私は信じている。


何回も何回も呪文のように反芻する。

でも、どんなに言っても締め付けられる胸が治まることはなかった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 何度読んでも面白いなぁと思いました。 更新いつまでも待ってます。負担になってしまったら申し訳ないです
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