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63話 ロイの休日(side:ロイ)



「あ~あ、これは早く買い物を済まさないと降り出すなあ。」


久しぶりの休日で今のうちに消耗品などを買いためておこうと商店街へ足を運んだのは良いが、空は今にも雨が降りそうなどんよりとした雲に覆われていた。

ロイは少し歩く速度を速めて目的の物を買い次第、騎士団の宿舎に帰ることにした。


あいつ(アレク)は、今頃、王宮にいるのかな…。」


確か今日は、国王陛下にヴィクトリア嬢と一緒に婚約の挨拶に行くと言っていたな。

しかし、俺と同じく独身貴族を謳歌していたあいつが弓矢のごとく即行で婚約しやがって。


『結婚に興味はない。』


とつい数か月前まで言っていた男とは思えないほどの変わり身の早さだ。

初めは、ヴィクトリア嬢の現在の置かれている身から助ける為の仮初めの婚約だと思っていたが、ヴィクトリア嬢を見るあいつの今まで見たこともないようなデレデレした顔に本気なのだとすぐに気づいてしまった。

あいつと出会った頃を思い出すと長年の友人としてアレクに大切な人が出来たのは本当によかったと思っている。






俺とアレクが出会ったのは8歳くらいの時だった。

その時、俺はかなりやさぐれていた。伯爵だった親父がメイドに手を出してできた子供が俺だった。しかもそのメイド…母親は俺を生んでからすぐに死んだらしい。親父には奥さんがいたが夫婦仲が悪く子供もいなかった為、仕方なく俺を嫡子として育てることにしたらしい。


そんな大人の事情を子供の俺におせっかいにも包み隠さず話す連中のおかげでひねくれた性格になっていた。今ならよくある話だよなって思えるが、なんだがその時は世界中の不幸を背負った気持ちになっていた。


そんな時、出会ったのがアレクだった。

マーカス・ハワード団長の家がウチと隣同士になっていて、マーカス団長から直々に家に来て、俺と同じ年の子供を預かることになったから仲良くしてくれと言われた。

まあ、俺も同じ年ごろの子供と話すのは初めてだったし、『俺の手下として置いてやってもいいな』などとゲスな事を考えていた。


で、初対面でいきなり決闘を申し込んだ。負けた奴が下僕になると取り決めをしたのだが、結果は俺の惨敗だった。

軽々と俺の攻撃を躱して簡単に返り討ちをされた事が悔しくて何度も勝負をするうちに、いつの間にか仲良くなっていった。さすがに第一王子と聞いたときはびっくりしたが、変わらずに接して欲しいと言われて、俺達は身分関係なく親友と呼べる間柄になった。



まさかあいつが俺より先に結婚するなんてなあ。

友として嬉しい反面、なんだか少し悔しかったりもする。

これまでに何度か女の子と付き合ったりもしたが、どうやら軽薄そうに見えるらしく、浮気を疑われて別れてしまう事が多かった。


「俺ほど、誠実な奴はいないのになあ~。」


まあ、しかし今回の件が片付くまではガールハントは控えなくては。




そして、今回の一連の事件はかなり厄介な事になりそうだ。

あの、ローガンの屋敷にいた男。

あいつは野放しにしてはいけない奴だ。

人を殺すのにも躊躇いなく、笑いながら実行するだろう。

魔法具を作らされていたジャンの虐待の跡がその残忍さを示していた。

しかし、奴は一切の痕跡を残さず、その足取りは不明のままだ。


「とにかく、早く見つけないとな…。」


今にも降り出しそうな雰囲気でますます辺りが薄暗くなってきたのでこれはもう濡れるのも覚悟しないと思いつつ歩く速度を速めた。





「……きゃー!!」


丁度、細い路地の前を通りかかったその時、女性の悲鳴のような声が聞こえた。

咄嗟に悲鳴が聞こえた路地に入ると奥で男達が3人背を向けて立っていた。


「おい、大人しくしろ!」


「や、止めてくださいっ…。」


どうやら、街のチンピラ共に女の子が絡まれているようだ。


「こんなところで何をしている。」


「ああぁん!? なんだてめえは関係ない奴はすっこんでいろ!!」


一番、ガタイのデカい奴が睨みつけてきたがチンピラごときに俺が怯むと思っているのか。


その後は、きちんと体に()()()()()やったら脱兎のごとく逃げて行った。


「あ、あの! 助けて下さってありがとうございます。」


大きな瞳を潤ませて見上げた女の子は俺好みのめっちゃ可愛い子だった!

いかん、いかん。


「いえ、大したことはしていませんよ!」


笑ってそう言うと、彼女は顔をぽぅと赤らめる。


「あ、あの。私はロゼと言います。お名前を教えていただけませんか?」


「あー、俺はロイと言います。」


「ロイ様ですね。今度、お礼をさせて下さい!」


「いや、お礼をしてもらうようなことは……。」


「助けてもらえなかったらどうなっていた事か…。だからお願いします。せめて連絡先でも!」


そう言う彼女を無下にもできずに連絡先を交換した。


「では改めてご連絡しますので!!」


手を振りながら去っていく彼女の後姿を見送った。

どうやら俺にもツキが回ってきたらしい。




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