51話 それぞれの戦い(side:騎士・ロイ)
― 騎士達の視点 ―
「おい、どうする?」
騎士達は目の前の光景を呆然と眺めていた。
第二騎士団の副団長だったローガンが魔物のようになってしまったのが信じられなかった。それ以上に魔物から発せられる瘴気の強さに逃げ出したい衝動を必死にこらえていた。
アレクからは退避命令が出されている。
しかし‥‥
「俺はここに残る。あの魔物は副団長に任せよう、俺がいっても足手まといになりそうだ。それなら俺達ができることをしよう。」
「俺も手伝うぜ。他のやつらも無理に付き合うことはないぜ、これは命令違反だし、後からお咎めがあるかもしれないからな。」
「俺は、リュウ様を助けたいから残る!」
最初はドラゴンの子供とはいえ、怖かったが給餌したり追いかけ回されたり(主に餌の催促)したが、意外に愛嬌があることに気づきかわいく思えるようになった。そんなリュウを見捨てることはできないし、それ以上にアレクを置いて逃げるような事をしたくなかった。
俺も、俺もと次々に名乗り出て結局は全員が残ることにした。
そうして騎士達による作戦会議が始まった。
「じゃあ、言い出しっぺの俺が仮のリーダーでいいんだな?」
「おう! 任せたぜ。」
「では、近隣の住宅に被害が出ないように、この屋敷全体に結界を張りたい。」
「じゃあそれはこっちがやる。俺達4人なら聖属性が強いし多少の攻撃なら跳ね返せる。」
「では、よろしく頼む。」
4人はすぐに屋敷に結界をはるため動き出した。
「あとはリュウ様を助ければ、リュウ様と副団長であの魔物を何とかしてくれるだろう。」
「ファイアは通じないし、百本足の体は鋼のように固い。どうする?」
「俺、氷属性なのでフリーズが使えます! それで足止めできませんかね?」
「なるほど、それはいいな。」
「私は、雷属性なのでサンダーが使えますよ。足止めしてくれればサンダーで倒すことが出来ると思います。ただ、強力なものは1回しかできません。」
「よし。なるべく俺達で百本足を引き寄せてからフリーズで足止めして、とどめはサンダーで倒す! これで、いいな?」
「「「「おう!!」」」」
こうして、自分たちの役割を果たすために各々が動き出した。
― ロイ視点 ―
「あいつらの事だから、大人しく退避するとは思えないけどなあ~。」
「ロイさんもそう思いますか?」
アレクは本人が思っている以上に騎士達には尊敬と信頼を持たれている。騎士の中には家格をひけらかすものも多い中、アレクは誰にでも平等に接していることが一番の理由だろう。そんなアレクを騎士達が見捨てるような真似をするとは思えない。そういう人間を突き動かせるような何かをアレクは持っている。
「あれがカリスマっていうやつなのだろうな‥‥。」
「なんですか?」
前を歩く騎士には聞こえなかったようだ。何でもないと言って先を急がせた。
地下には長い螺旋状の階段を下りていく、灯りも最小限のものしかついてなく薄暗くて気味が悪い。
「‥‥着きました。」
「よし、気を付けて開けろ。」
騎士が鉄でできた扉に手をかけた。
「おやおや、もうここへ辿り着きましたか。」
部屋の中には小太りの中年の男が立っている。そしてその足元には若い男が倒れていた。
ロイはすぐに剣を抜き構えた。
「大人しく捕まるなら何もしないが、抵抗するなら斬る。」
(こいつはヤバい。)
ロイの本能がそう告げている。
剣を向けられても怯むどころか面白そうに笑っている男は何か得体のしれない者に見えた。
「いやいや、わたしは今回の事は関係ないのですよ~、すべてローガンが勝手にやったことなんですよ。まったくあのお方には困ったものです。」
「あいつを化け物にしたのはお前か?」
「化け物ねぇ~、アレはあの人が望んだことですよ。まあこっちとしては完成品の実験体になってくれたのでその点は感謝しますが…。」
「実験体? お前は何を企んでいる!」
「おっと、少しおしゃべりが過ぎましたかな。私はこの辺で失礼しますよ。」
男はそう言うとあっという間に霧のように消えた。
「チッ、転移魔法か。」
逃げてくれたのは助かったというべきなのか、しかし厄介な敵になりそうだということはわかった。
騎士が倒れている若い男に近づいた。
「大丈夫ですか?…っ!!」
若い男は意識朦朧としているようだが大丈夫なようだ。
「デイジー…を、たすけ……。」
「君はジャン・スミスくんだね?」
ロイが膝をついて男に尋ねる。
「はい。」
「デイジー・スコットなら我々が保護したから安心していい。彼女も君の事を心配していた。」
「よか…った。」
「君も我々が保護する。魔物が現れて危険なのでここから出るぞ。」
「魔物…、止め…て、くださ…い。あれは、にんげん…で。」
「っ!? 君はアレの止め方を知っているのかっ?」
「あれは‥‥。」
その時だった。
ドゴーーーッン!!!!
と何かが落ちたような大きな音と共に地下部屋が揺れ、小さな石がパラパラと天井から落ちてきた。
「まずいな、とにかく今は上に逃げるぞ!!」
「はい!!」
騎士の背中にジャンを背負わせて、ロイは螺旋階段を駆け上がって行った。
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