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閑話 リュウと騎士たちの楽しい訓練



アレクはその日、増え続けている仕事にイライラしながら執務室に籠って書類を捌いていた。


というのも第二騎士団の副団長だったローガンがしでかしたことの後始末を全部アレクがやる羽目になったからだ。

第一騎士団の団長のマーカスと第二騎士団の団長であるブレイデンが犬猿の仲なのは有名な話だ。そしてそのブレイデン団長はローガンが起こした今回の事件を自分は全く関与していないと言って、即刻、ローガンを騎士団から除名処分とし、ブレイデン団長は『この件に関して私は全く関与していないが部下がしでかしたことなのでその責を感じ暫く謹慎する』と自ら屋敷に引き籠ったのだ。


もちろん、マーカス団長はそのやり方に激怒し、宰相を通して再三。登城するよう使者を送っているが、持病が今回の事で悪化したため、登城できないと言ってきているらしい。

医者の診断書付きで返されたらしくこれ以上は本人の回復を待つしかないという事に収まった。


しかし、だ。

ただでさえ、ローガンの行方を探さないといけないのに、第二騎士団の業務も第一騎士団(こっち)に回ってきていて仕事量がいつもの何倍にもなっている。仕事を捌いても捌いても終わらないのだ。

しかも、普段からの第二騎士団の仕事の雑さが目に余る。第二騎士団から何人か呼び寄せて仕事をさせているがやる気がないのか進行が遅い。

いちいち呼び出して叱責するのも時間の無駄だし、俺が一人でやってしまった方が遥かに効率がいい。ここ2、3日はひたすら執務室で書類とにらめっこをしている状態だ。

ローガンの追跡はロイの班にまかせているが、誰かに匿われているのかなかなか見つからないようだ。


「ふぅ~‥‥」


少しきりのいいところで手を止めて机に置かれていた冷めた苦いコーヒーを飲む。


ヴィクトリアが作った甘いものが食べたいな。

というより、ヴィクトリアが作った料理ならなんでも食べたい。


ヴィクトリアを屋敷に送ってから別れた後、もう一週間も過ぎていた。

その間、屋敷に帰ることはできずにいる。騎士団の食堂で出される食事も悪くはないが、それよりもヴィクトリアが作る料理が何倍も美味しい。

そう考えたら、無性にヴィクトリアの作る料理が食べたくなった。


よし、今日は何が何でも帰ろう。


そう思って、再びペンを握るとノックもなしにいきなり執務室の扉が開いた。



「きううう~~~。」

(うえ~~~~ん)


扉から現れたのはリュウだった。リュウもずっと騎士団にいるのだが、騎士たちに決まった時間に食事を与えるように言ってずっと放っておいてしまった。


しかし‥…。

前見た時より何だか横に大きくなっている気がする。


「きゅうきゅうきゅう~、きゅうう~~~。」

(みんながねぇ、ぼくのことふとったって~、うわ~ん)


リュウは子供でもやっぱり女の子なんだな。体形の事を言われてショックだったらしい。


「そんなことないぞ。だがそういう意地悪な事をいう奴らにはお仕置きをしないとな。」


と言って笑った。そして、リュウを連れて騎士団の訓練場へと向かった。





「おい、副団長のさっきの顔みたか?」


「見た見た、魔王の様な……、おおぅ、身震いしてきたぜ。」


「俺、事務職でよかった…。」


執務室でアレクと一緒に仕事をしていた他の騎士たちは今から行われるであろう制裁(お仕置き)にその対象となった騎士たちが無事に明日の朝日が拝めるよう祈った。





アレクが訓練場に足を踏み入れるとそれまでに外まで聞こえていた騎士達の声がシーンと静まり返る。


(お、おい! なんで副団長がここに来るんだよ!今は執務が忙しくてここに来る暇なんてないって言っていたじゃねーか。)


(しらねぇーよ。それより、やけに笑顔なのが‥‥。)


(なんかやばくねーか?)


いきなり入って来たアレクに騎士達は目で会話する。


「ずいぶんと楽しそうな声がしていたな。お前らは暇なのか?」


「い、いえ! 訓練をしていましたっ!!」


「ほぅ…、笑い声が廊下まで聞こえるほどの訓練はよっぽど楽しいのだろうな。」


「えっ? あ、はい‥‥。」


(ばっ! あのばか!)


思わず返事をしてしまった新人の騎士に他の騎士達は慌てた。


「なるほど、訓練が楽しいとはすばらしい向上心だ。そんな君たちに今日は特別メニューを与えよう。では、今から10分以内に騎士団にいる騎士達を全員集めて野外演習場へ集合しろ。行け!」


「サー!」


一目散に騎士達は訓練場を出て、野外演習場へと走った。その途中で休憩していた騎士達も呼びに行き一緒に走る。


「お前ら! 一体何をしでかしたんだ!!」


「話は後だ、とりあえず走れ! 遅れたらどんな目に合わされるかわからんぞ。」



10分後、騎士達は全員整列してアレクの前に立っていた。


「よし、全員集まったようだな。では、今日は特別にリュウに協力してもらって訓練してもらう。笑うくらい訓練が好きなお前たちにピッタリだぞ。」


とアレクはニヤリと笑った。


(やべえよ。副団長キレているじゃねーか。)


(俺、今日デートの日だったのに…。俺、この訓練が終わったらアリスにプロポーズするんだぁ…。)


(あの楽しそうな笑みは怒っているというより、憂さ晴らしのような…。)


そんな騎士たちの思惑を置いて、アレクは訓練の説明を始めた。


「まず、お前たちにはこれからリュウの捕獲を命じる。ただし、武器や魔法攻撃を禁ずる。」


「そんな! 火を吹く竜に素手で立ち向かえと?」


「無理ですよ! 俺達死んでしまいます!!」


騎士達が次々に不満を漏らす。


「黙れ!!! 誰がしゃべっていいと言った、それに俺は『捕獲』と言ったのだ。いいか、リュウはメイスフィールド家から預かったものだ、傷一つでも付けたらどうなるか分かっているだろうな?」


「そ、そんなぁ~。」


「…まあ、お前たちにはハードルが高いようだから()()()()()手加減してやる。そうだな、リュウの角を触ったら『捕獲』とみなす。これでどうだ?」


騎士達はその言葉を聞いてほっとした。リュウは食欲旺盛なので食べ物で釣れば簡単に角なんて触れるだろう。


そんな騎士達の心の中を見透かしたようにアレクはリュウに話した。


「リュウ。あの木の高さまで大きくなっていいぞ。これからみんなで追いかけっこだ。リュウが捕まったら負けだぞ。」


「きゅううう!」

(うん、わかった!)


そう言ってリュウはアレクが指した木の高さ5メートルくらいまで体を大きくさせる。


「う、うそだろ‥‥。」


「マジかよ…。」


「死ぬ前にアリスちゃんに会いたかった‥‥。」


騎士達は絶望した顔で大きくなったリュウを見上げた。



その様子を見ながらアレクはリュウに耳打ちした。


「いいか、リュウ。あいつらを死なせてもリュウの負けだぞ、大きな怪我も駄目だ。できるか?」


「ぎゅうううう!!!」

(難しそうだけどやってみる!!)


「よし、いい子だ。今日は魚の缶詰をやるからあいつらがだす餌には手を出すなよ?」


「ぎゅるるるる~!!」

(わかった!!)



こうして、リュウと騎士達による訓練という名の追いかけっこが始まった。

最初は餌で釣る作戦が決行されたが最高級の餌(魚の缶詰)がもらえるのでリュウは我慢した。

それから何度も何度も挑戦は続けられたが、どれも失敗に終わった。

疲労困憊の騎士達は次々に草むらに倒れこんでいった。


「ぎゅうるううう?きゅううう~?」

(あれ、もうおわりなの? もしかして死んじゃった?)


騎士達が地べたに倒れこんでいるのを見てやりすぎたかもと少し反省したリュウがいつもの小さいサイズになって倒れている騎士の一人に近づいて行った。


(今だぞ、行け!)


みんなの願いは一つだ。


リュウが近づいて行った騎士が手を伸ばしてリュウの角を触った。


「さ、触ったぞー!!」


「でかしたー!」


「ようやく終わったー!!!!」


「アリスちゃんに会えるー!」


一斉に雄叫びを上げる騎士達。




「お前たち、まだこんなところにいたのか。」


騎士達が喜びを分かち合っている中、アレクの声がした。


「あ、副団長! 俺達やりました!!」


「ああ、そうか。それより直ちに出動準備をしろ、ローガンの場所がわかったから出るぞ。」


「え?」


「何をぼさっとしている、 早く準備しろ!!!!」


「は、はい!」


(悪魔だ、悪魔。)


(いや、魔王だろ‥‥。)


(アリスちゃん‥‥。)


それぞれの思いを抱えながら走っていく騎士達。







「リュウ、お前も行くぞ。」


「きゅううう?」

(どうしたの?)


いつもより表情が固いアレクにリュウは首を傾げた。






「ヴィクトリアが悪いやつに捕まったらしい。」




いつも誤字脱字をご報告してくださっている皆様、本当にありがとうございます!

ご指摘いただいたものは確認して随時、直していきます。


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