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32話 兄弟喧嘩ですか



「さてと、そちらの件はうまく収まったようで何よりですが、私からアルフレッド殿下に一つ質問がございます。」


「何かな?」


「先ほど、アルフレッド殿下が『兄上』とお呼びしたのはこちらにいらっしゃるアレク様の事でお間違いないでしょうか。」


「あっ……。」


アルフレッドは自分の発言を思い出したのか気まずそうにアレクに目を向ける。


「まあ、ばれてしまったのは仕方がない。いずれは話すつもりだったから問題ない。… 俺の本当の名前はアレックス・オースティンだ。いろいろ事情があって今は騎士団長の養子としてアレク・ハワードと名乗っている。」


「アレックス殿下はたしか第一王子……。」


「そうだ。まあ病弱ってことで表に出てなかったけどな。王位も継ぐつもりはなかったから早々に王位継承権は返上した。」


「それはっ、兄上が勝手に言っていることで俺や父上は納得などしておりません! 本当なら兄上が国王になられるのが順当なはず……。」


「おい、それについては何度も話をしただろう。 俺は側妃の子供でお前は王妃の子供だ、王妃の子であるお前が王になるのが順当だ。それに、俺は王とかそういうガラじゃねえし、お前の方が相応しいと俺は思うぞ。」


「そうやって……。」


アルフレッドが拳を握り締めて俯いた。

それから顔を上げてキッとアレクを睨みつけた。


「アルフレッド?」


「そうやって! いつも兄上は俺に何もかも押し付ける、『お前ならできる』『お前の方が優秀だ』そうやって言葉で縛り付けて、俺は兄上や父上に認めてもらえるように、そして完璧なメグに嫌われないように必死で努力して……。彼女が、クララ嬢が言ったのです『周りを気にして自分を偽ることはない。自由に生きる権利は誰にだってある』と。俺は心が軽くなるような気がしました。それで気づいたのです。父上にとって優秀な者であれば後継者は誰でもよくて、兄上は王になるのが嫌で体よく俺に押し付けただけだって! 俺は国王にならない! 俺は、メグさえいてくれたらいいのです。」


アルフレッドは感情のままに捲し立てるとまた俯いた。

まるで叱られるのを待つ子供の様に少し体が震えていた。


「アル様……。」


マーガレットが強く握りしめているアルフレッドの拳に自分の手を重ねた。


「メグ…。みっともない姿を晒してしまったね。」


アルフレッドは照れくさそうにぎこちなく笑う。


「みっともなくないですわ。アル様は私の事、完璧とおっしゃいましたけど全然、完璧ではありませんのよ? 失敗もしますしそれを隠すのが上手なだけですの!」


マーガレットはエッヘンといった感じの顔をする。


「そうなの?」


アルフレッドはふふっと思わず笑みをこぼした。


「そうですわ! 完璧だったのはアル様のほうです。だから私は追い付くために必死に努力しましたのよ? 今、アル様の本音が聞けて嬉しいのです。やっと信頼してくださったのだと。私はアル様についていきますわ、たとえ平民になろうともご一緒させてくださいませ。」


「メグッ。」


アルフレッドは感極まったようにメグをぐっと抱き寄せて互いに顔を見合わせるとその距離がだんだん近づいていって……って!!


「すとーっぷ!! それ以上の事は場所を代えてください!」


「「あ……。」」


慌てて私が止めに入る。

いやいや、いくら親友でも人様のキスシーンを見るのは恥ずかしい。

我に返ったらしい二人は顔を真っ赤にさせていた。



というか、先ほどから隣のアレクが石像のように固まったままなのだが。


「アルフレッド。」


あ、石像が動いた。


「兄上。すみません、俺……。」


「いや、謝るのは俺の方だ。お前が何でもそつなくこなしていくのをみて勝手に安心していた。お前の苦悩をわかってやれずにすまなかった。」


「兄上…。」


「だが、王位継承の件はまだ待ってもらえないか。今の状況で俺達が王位を巡って争いになるのは避けたい。大公の件もある。俺が何とかするから今は城に戻ってくれないか。」


「わかりました。私は城に戻りますが、マーガレットも連れて行きます。そして父上に彼女との結婚を申し入れます。これだけは譲れません。」


「わかった。だが、マーガレット嬢は全力で守れ。あいつらは何をしでかすかわからない連中だ。」


「わかっています。絶対に守り切ります。」


「よし。……クロウいるのだろ? 出てこい。」


いきなり目の前に全身黒の衣装…っていうか忍者の格好をした男が現れた。


「ううっ… あのいい子ちゃんだったアルフレッド坊ちゃんとアレックス様が兄弟喧嘩をなさるほど仲が良くなるとは生きていてよかったです。」


黒いハンカチで目頭を押さえている。涙もろい忍者さんのようだ。


「おい、止めろ恥ずかしい。」


「クロウっ、坊ちゃんは止めてくれて何度も言っているだろう!」


忍者さんは王子二人には受けが悪いらしい。


「ああ! あなたはヴィクトリア様ですね。」


「はい、私のこと知っているのですか?」


「はい、アンジュ様のお孫様でらっしゃいますから。」


「え? お祖母様を知っているのですか?」


「もちろんでございます。私達、『影』の組織を作ったのはアンジュ様とエマ様なのですから。」


「はあ? それは俺も初耳なのだが。」


「まあ、話したことないので知らないのも無理はないかと。」


「はぁ~、まあいい。それより、この屋敷から二人を城に戻したいのだができるか?」


「もう、手筈を整えています。馬車を用意しましたのですぐにこちらに来ます。」


「よし、後はこの二人の護衛を頼んだぞ。」


「御意。」





しばらくすると馬車が来てアルフレッド様とマーガレット様が一緒に馬車に乗り込んだ。


「ヴィクトリア様、この度は助けて下さってありがとうございます。」


「いえいえ、大したことはしておりませんわ。とにかく、すべての事が終わりましたらお茶でもしましょう。」


「はい!」


そうして、アレクと二人で屋敷から出ていく馬車を見送った。




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