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閑話 セバスチャンの嘆息



私はメイスフィールド家の執事をやらせていただいております、セバスチャン・スチュワートと申します。


私の家は代々、メイスフィールド家に仕える家柄でございます。

ただ、私の出自は少々変わっております。というのは先代の公爵様が若い頃、婚約者だった先代国王の姉君に会いに行かれた折、従者であった同じ歳の私の父がその方の双子の妹君と出会い、互いに一目惚れをして恋に落ちてしまったそうです。


王女の身でありながら、爵位をもたない一介の従者に嫁に行きたいなどと戯けた事を申すな、と当時の先々代の国王はたいそうお怒りになり妹姫を王宮に閉じ込めてしまったそうです。

妹姫様… 私の母はそれから食べ物、飲み物を一切口にせずストライキを始めたそうです。父の王もすぐに根を上げると思ったらしいですが一週間経っても変わらずどんどんやせ細っていく姫になんとか説得するも、どうしてもその従者…… 私の父との結婚が許されないならこの身は朽ち果ててもよいと宣言され、とうとう先々代の国王が折れ前代未聞の王女が公爵家の従者の元に嫁ぐことになったという事です。

その話は、身分を越えた純愛として当時、国中の女性達に支持され本や劇にまでなったとか。


そう言うわけで現公爵様 ― ルイス様と私は主従ですが、従兄弟でもあるという少々、複雑な関係となっています。

しかしながら、私は幼少の頃よりメイスフィールド家に忠誠を誓っております。父からもいつでもルイス様の盾になるようにとそれは厳しく育てられました。

ルイス様は同年代の私がいるのが嬉しかったのか友人として接することを望み、二人して幼少の頃よりいろんな遊びをしておりました。また、私とルイス様は母親が双子だったからなのか髪と目の色が違うだけで兄弟と間違えられるほど似ておりましたので、子供の頃はたまに入れ替わったりして家の者が気付くかどうかと試して遊んだりもしていました。他の者は騙されても母上方達にはすぐに見破られましたけどね。


話が長くなりました。こう、年を取りますと話が長くなるのは何でなんでしょう困ったものです。




まあ、現実逃避をしていただけなのですけど。


「旦那様。」


「……なんだ。」


「そう落ち込まれるくらいなら最初からお怒りにならなければよかったのではないでしょうか。修道院に行けはさすがに言い過ぎではなかったのかと。」


「…正直、ちょっと言い過ぎたかな~と思っている。ただ、あの時はあのバカ息子がやらかしたこととリアが大立ち回りを演じたなどと信じられずに頭に血がのぼっていたのだ、リアにもちょっと反省してもらおうと思っただけなんだよ、本気で修道院にやるつもりはなかったのだ! なのにあの優しかったリアが俺を睨みつけて言い返すなんてっ……俺はリアに嫌われたのだ。きっとそうだ『もう、お父様なんて嫌い!話しかけないで!!』とか言われたらおれは生きていけない…うっうう……。」


いい大人が、膝を抱えて泣いている姿なんて見たくないのですが、ここは執事たるもの主人の機嫌を直さなければなりません。


「そこまで反省されていらっしゃるのならば、お嬢様に昨夜は言い過ぎたと謝ればよろしいのです。」


「でも、だって……。」


まったくこの人は、仕事は冷静沈着にきっちりとこなされる優秀な方なのに、ヴィクトリアお嬢様のこととなるととたんに駄目親父になるな、正直面倒くさい。

おっと言葉が悪くなってしまいました。失礼。

さて、このままでは埒が明きません、何とかしなければ。


「旦那様っ! 旦那さまああ!! た、大変でございますっ!!」


なにやらメイドが慌てて執務室のドアを叩いております。


「どうしたのですか、騒々しい。何があったのです。」


ドアを開け、侍女を入れた。


「お嬢様が中々起きられないので、不審に思いまして部屋へ入るとお嬢様がいらっしゃいませんでしたっ、代わりに置手紙が……。」


「なっ、なんだと!? 早く見せろ!! ……………っ! りあっ……。」


受け取った手紙を旦那様にお渡しすると、読み終わった旦那様はそのまま倒れてしまった。


「メイ! すぐにベッドへお運びする、それから侍医の手配を!!」


「はっ、はい!!」


気を失っている旦那様を担ぎ上げる前に旦那様が手に持っている手紙を抜き取って読んだ。


「これは…… なんてことだっ。」


「あ、あの!! 大変です。」


今度は別の侍女が慌てたように執務室に入ってきた。


「今度はなんだっ!」


なんで、こう立て続けにいろんなことが起きるのだ。




「第一騎士団の副団長様が旦那様にお会いしたいと来ております。」




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