大成功
盗賊を撃退したあと、馬車に寝泊まりしながら2日掛けて帝都に到着した。
早速、市場に小麦を捌きに行くと卸の商人は不信がっていた。
「いや、積み荷の小麦が確かな物なのは見ればわかるさ‥‥でも、通商票ももってないんじゃなぁ」
彼が言うには、伝票処理の際に登録業者の番号が必要だという事らしい。
「あ、そうなんだ、じゃ仕方ないな」
「え?ちょとちょと、その小麦どうするの?」
「別の町に持っていくよ」
「いやいや、ちょっとまってくれ、今上司と相談してくるから」
よそに行くと言うと彼は必死に僕を止めた。そんなに急いでいるわけでもないので待っていると、上等な服を着た恰幅のいいおじさんを連れてやってきた。
「お待たせしました」
「はい、それで買ってくれるの?」
「ふむ‥‥」
恰幅の良いおじさんは僕をしげしげを見てから言う。
「この小麦はどこから運んできたんだい?」
「ん?えっとたしか、ランズ村の農家から直接買ってきたんだよ、全部で90金分だよ」
「ほぅ?という事は‥‥盗賊はどうしたんだ?出たんだろう?」
「ぶっとばしちゃいました」
「ははは、これは愉快愉快」
「ははは」
「冗談はよしてくれ、あんた一人で盗賊団を蹴散らしたというのか?」
「そういう事ですよ」
「ふむ‥‥もしや名の知れた冒険者かな」
「いいえ、元冒険者ですが」
「ほ!なるほど!そういう事なら納得だ!その小麦全部買い取ろう!」
「あ、良かった」
僕は手間が省けて安心した。ついでに通商票も作って渡してくれる。
「どうもどうも、次も是非ご贔屓にして下さいまし」
「いや、どうもお世話になります」
結局その小麦は1000金になった。
ついでに話を聞くと、今の帝都では盗賊のせいで様々な食料物資が不足しているという。それで帝国軍の討伐隊を派遣しているのだが、素早く逃げるので中々追い詰める事ができないらしい。
軍隊が警備していれば襲ってはこないけど、経費がとても掛かるのでそれも長くは続かない。ギルドに依頼しても、請負単価の割りに相手が手ごわくて中々請け手がいないらしい。
「手ごわくはないのに」
そう呟きながら手にした大金を見て感動していた。それで欲がでて一気に儲けるチャンスだと考え、馬車を大型のものに買い替え、馬も二頭立てにした。
馬車の中の居住空間も快適なものに改造して、即席の動く宿となって大満足だ。
「最高だ!」
大喜びで周辺の村々を回って様々な食糧物資を買い込んで帝都に運び込むと又大金が手に入った。
「なんだ簡単じゃないか、なんで今までこんな事に気が付かなかったのだろう?」
暫くすると、帝都周辺の盗賊が居なくなったという情報が広まり、僕の商売もあまりうまみがなくなってしまう。頑張って大量に運んでも利益は凄く少なかった。すでに帝都での物資不足は殆ど解消しているという事のようだ。
「折角だけど、もう廃業だな」
それで手に入れた大金を帝都の銀行に預けて、馬車で旅にでた。
帝都に長居をすると昔の冒険者の顔見知りに見つかる恐れもあったので、なるべく遠くに行こうと考えて、帝都を出て北の町目指して馬車を走らせた。