奴隷の子
「横からでごめんなさい、もしよろしければその子は僕が身受けしましょう」
「なんだお前は!平民の癖に生意気な」
僕はついお節介を発揮して口をだしてしまった。獣人族のコスプレでマスクをした僕を見た貴族が怒りをぶつけてくる。
「これでどうですか?」
「は?おまえ‥‥それ」
僕がポケットから大粒の魔光石をだして掌の上に見せると明らかに動揺していた。
「良ければこれで身受けさせてもらいますが」
「う、む‥‥よし、良いだろう」
そういうと貴族は僕の掌の上に乗った魔光石を受け取り眺める。
「ほぅ、これはデカいな!見たこともない大きさだわい‥‥」
途端にニヤニヤとして機嫌が良くなってしまう。
「おいで」
僕は首輪がつながった鎖を手に取り彼女と店を出た。しばらく歩いてからマスクを外し、屈んで自己紹介をする。
「初めまして、僕はイジンだよ、君の名前は?」
「‥‥」
「困ったね‥‥」
彼女は顔を横に振る。言葉が判らないのだろうか、クリクリとした可愛らしい目で僕を見返してくるだけだ。それでも彼女を連れていくわけにも行かず、その場で首輪を外し彼女に金貨10枚程手渡す。
「悪いけど君を連れては行けないんだ、あとは自分で何とかしなさい」
「ダメ」
「え?」
なんだ話せたのか、それなら大丈夫だろう。
「ダメなの」
よく見たら彼女の口は動いて居なかった。
「もしかして、魔法で話しているのかい?」
「そうなの」
先ほど外した首輪をみたら魔封じの呪文が刻まれている。
「なるほど‥‥」
「お兄ちゃんと一緒じゃないとダメなの!」
「‥‥君の名前は?」
「ミミ」
「そうか、なら‥‥一緒においで」
そういうと彼女が差し出す手をとった。
「お腹がすいたろう?」
「うん」
2人でそばの酒場に入って食事にすることにした。酒場でテーブルを囲んで食事を摂っていると周囲から好奇の目でみられるのが判った。
「おい、あれ、なんだよ」
「うーん人族‥‥に見えて実は魔族だな」
「へええ、おまえ確かめて来いよ」
そんな会話が聞こえてくる。
「おいしいか?」
「うん」
「そうか、それは良かった」
彼女はスプーンを器用につかいおいしそうに食べている。決して育ちが悪くもないし知能が遅れている事もないのだ。そばでよく見ると服も体も汚れている、ただそれだけだ。
酒場を出てから直ぐ近くの宿に入った。魔王都の宿は何処も豪華で内装も何もかもが見たことが無いほど光っている。カウンターで前金50金を支払い部屋に案内される。
汚れた服を脱がし、風呂場に入ると壁が磨き上げられていて光を反射して裸を映し出す。
「これは、少し恥ずかしいか」
「いいの」
彼女は平然としているが逆に僕の方が恥ずかしくなってしまった。
2人で湯を浴びて体を洗い、湯舟に浸かると生き返った気分がする。そういえば僕もここのところずっと走りっぱなしでゆっくりした記憶がなかったのだ。




